Q&A著作権の売買)

著作権を他人に売ることはできますか、また、他人の著作権を買い取ることはできますか?

どちらも可能です(できます)。
「著作権」というのは、例えば、あなたが持っている自動車をあなたが自由に他人に売ること(法律的に言いますと、あなたが所有している自動車の所有権を他人に移転(譲渡)すること)ができるように、原則として、何の制約もなしに、自由に他人に売ることができます(法61条1項参照)。もちろん、他人の著作権を買い取ることもできます。
ただ、著作権には、無体物(手に取ることができないもの)である著作物(法2条1項1号)を対象とするという特質(属性)があるため、著作権の売買には、自動車(手で触れることができるもの、すなわち有体物)の売買とは違った側面がありますので、注意が必要です。
「絵画」と「ゲームソフト」の売買を例に、解説します。
あなたがある画家Aが描いた「絵画」(原画)を非常に気に入ったので、本人から直接、又は画商を通して、その「絵画」を購入することにしました。ここであなたが支払った代金は、通常、その「絵画」の「所有権」(絵画の有体物の面を支配できる財産権)を手に入れるための対価であって、その「絵画」の「著作権」(絵画の無体物の面を支配できる財産権)まで買取るための対価であったとは言えません。したがって、あなたがその「絵画」(原画)を後に誰かに売りたいと考えた場合、画家Aの承諾がなくても、自由にそうすることができます。しかし、あなたがその「絵画」を複製してレプリカを作成し、これを他人を売ることを考えた場合に、もしそのような行為を画家A(著作権者)の承諾なく行えば、その画家Aの著作権(複製権・譲渡権)を侵害することになります。あなたは、その「絵画」の「著作権」までは買い取っていないからです。
「ゲームソフト」についても、事情は同じです。あたなが正規のルートで新作のゲームソフトを入手した(買った)場合、後にそのゲームに飽きたので、そのソフトを友達や中古ソフトの買取り業者へ転売しようが、捨ててしまおうが、それは所有者である(所有権を持っている)あなたの自由です。しかし、その「ゲームソフト」を無断で複製して、インターネットで入手可能な状態にすれば、そのような行為は、その「ゲームソフト」の著作権者(通常は、そのソフトの製作会社か販売会社)の著作権(複製権・公衆送信権)を侵害することになります。
以上のように、著作物が表現されている物(無体物+有体物)の売買においては、その所有権(有体物)の売買なのか、それともその著作権(無体物)の売買なのか、それともその両方の売買なのかが問題となる場合がありますので、この点には、十分に注意をしてください。

著作権はその「一部」の売買も可能だと聞きましたが、どういうことなのか教えてください。

著作権は、その「全部」又は「一部」を譲渡(売買等)することができます(法61条1項)。
「著作権」とひとことで言っても、実はその中にはいくつか権利が含まれています。逆の言い方をすれば、「著作権」とは、そのいくつかの権利が束ね合わされたもの(「著作権は権利の束」)と表現することができます。そして、著作権を束ねている(構成している)1つ1つの権利を「支分権」(著作権から枝分かれした権利)と呼んでいます。
さて、以上のように、「著作権」は、いくつかの「支分権」から構成されています。具体的に言いますと、「複製権」・「上演権」・「演奏権」・「上映権」・「公衆送信権」・「公の伝達権」・「口述権」・「展示権」・「頒布権」・「譲渡権」・「貸与権」・「翻案権」・「二次的著作物の利用に関する原著作者の権利」が、それぞれ「支分権」です。
著作権ビジネスの現場では、ある著作権を一括ですべて(全部)を他人に売ってしまう場合もありますが、そのビジネスの具体的な状況に応じて、臨機応変に、著作権の「一部」だけを売り渡すという場面も多くあります。著作権取引の現場では、「著作権の一部譲渡(売買)」は、非常に重要な手法になっています。
ただ、「一部」を売り渡すと言っても、1つの著作権をどこまで細分化して売買できるかという問題があります。一応、以下のように考えてください(実務上の通説です)。
① 支分権ごとの売買
著作権は、上述しました各種の「支分権」をそれぞれ分離して個別的に売買することができます。
一個の支分権をさらに分割して売買することも、そのような分割が実務上も別個の権利として区別されており、かつ、社会的にそのような取り扱いをする必要性が高いものについては、一般的に可能である、とするのが通説です。例えば、「公衆送信権」を「放送権」・「有線放送権」・「自動公衆送信権」に三分割し、さらには、「放送権」を「ラジオ放送権」と「テレビ放送権」に分割して売買することもできます。「翻訳権」をある特定の国語への翻訳(英語版・独語版・仏語版など)に限定して売買することも可能です。
② 地域限定の売買
著作権は、地域的・場所的な限定を付して売買することができます。例えば、演奏権を日本国内のみ又はアメリカ国内のみに限定して売買することが可能です。もっとも、1つの国を更に細分化すること(例えば、利用地域を「東京都」に限定した売買)については認められないと解されます。
③ 期間限定の売買
著作権は、時間的な限定を付して売買することができます。例えば、「3年間」という限定を付して売買することが可能です。この場合、3年の期間が経過すれば、当該著作権は売主(もとの著作権者)に復帰することになります。

ゲームのシナリオライターをしている者です。今度自分の作品のいくつかの著作権を売ろうと考えているのですが、著作権の売買契約は書面で交わさなければいけないのですか?

「書面で交わさなければいけない」ということはありません。つまり、著作権の売買契約は、「著作権売買契約書」といった書面がなくても、当事者の意思表示(「売りましょう」-「買いましょう」)の合致があれば、有効に成立します。
著作権は「譲渡」が可能です(法61条1項)。著作権の譲渡(「売買」も「譲渡」の一種です)は、土地建物に対する所有権やその他の物権の譲渡の場合と同様に、当事者の意思表示のみによって効力が生じるため(民法176条)、わが国の一般原則としては、「書面」(契約書)の作成は、契約成立の要件ではありません。しかし、著作権の対象である著作物が手に取ることができない無体物であるという特質から、著作権取引を巡るトラブルのうち、契約書が作成されていないことに起因するものが圧倒的に多いのが実情です。著作権の売買が行われても、その契約の中身についての当事者の意思が書面で確認できないことから、後日、契約の解釈について問題となることが多々あります。そのため、紛争の未然防止の観点から、契約の書面化(契約書の作成)を強くお勧めします。
なお、契約書を作成することの効果としては、一般的に、次のような点を挙げることができます:
 後に紛争が生じ、その争いが裁判所や仲裁機関に持ち込まれた場合に、確実な証拠として使える。
 書面化の過程で自分の意思が文字化・文書化されるため、当事者の意思が確認されると同時に明確化され、より適切な判断、より慎重な判断が促される。
 当事者間で同一の契約書が取り交わされるため、交付を受けた買い手が第三者に対し自らが著作権者であることを実質的に公示できる(ただし、この効果については、文化庁への著作権の移転登録(法77条1号)を利用した方が確実に得られます)。

原稿や写真のネガなどのいわゆる「買取り」は、著作権の譲渡とみなされますか?

原則として「著作権の譲渡」とはみなされないと考えます。
小説家や写真家等に原稿の執筆や写真撮影等を依頼する場合、単なる「口約束」だけで済ませるか、契約書を作成するにしても、「買取り料」その他若干の事項だけを記載した極めて簡単な書面を取り交わすだけで済ますケースをしばしば目にします。このようなケースで、買取りの際に支払われる「買取り料」は、一般的には(著作権を譲渡する旨の当事者間の明示的な意思表示がなければ)、有体物(設問では、原稿・写真のネガ)の所有権移転の対価及び当該著作物(小説・写真)に対する(妥当な範囲での)利用許諾の対価(ロイヤリティー)であると解されることが多いと思います。
(注)著作権(無体物)の譲渡とその著作権が化体している作品(有体物)の譲渡とは区別して考えなければなりません。
もっとも、その「買取り料」の金額が、取引の慣行や社会通念に照らして、所有権移転の対価を含む単なるロイヤリティーの支払いとしてはあまりに高額である等の特別な事情が認められる場合には、当事者間に当該著作権を譲渡するという明示的な意思表示がなくても、著作権譲渡の対価と評価される場合もあると思われます(これを「黙示の譲渡」といいます)。とは言っても、ひとたび当事者間で争いが起こると、そのような評価が最終的に下されるのは、通常裁判所においてのことです。したがって、将来的な紛争を未然に回避して訴訟リスクを軽減させるためにも、「買取り」の際の著作権の帰属関係を契約書のなかで明確かつ詳細に定めておくことが賢明です。



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