出版権の内容(条文解説)

出版権の内容は、著作権法80条に規定されています。
以下、同条の内容を順に解説していきます。

≪法80条1項≫

「出版権者は、設定行為で定めるところにより、その出版権の目的である著作物について、次に掲げる権利の全部又は一部を専有する。
(1号)
頒布の目的をもって、原作のまま印刷その他の機械的又は化学的方法により文書又は図画として複製する権利(原作のまま前条第1項に規定する方式により記録媒体に記録された電磁的記録として複製する権利を含む。)
(2号)
原作のまま前条第1項に規定する方式により記録媒体に記録された当該著作物の複製物を用いて公衆送信を行う権利

「出版権」とは、その目的である著作物に係る複製又は公衆送信を排他独占的に利用できる権利のことです。「専有」(1項柱書)とは、まさに、出版権が、著作権(著作財産権)同様、排他独占的権利であることを表しています。
なお、今日では、紙媒体による出版に加えて、CD-ROM等による出版やインターネット送信による電子出版も広く普及しているため、平成26年法改正において、出版権の内容として、紙媒体による出版についての複製権に加え、CD-ROM等による出版についての複製権やインターネット送信による電子出版についての公衆送信権についても規定されました。

出版権の具体的な内容は、それぞれ「設定行為で定めるところ」によります。
出版権は、通例、複製権等保有者と著作物を出版行為又は公衆送信行為することを引き受ける者との間の「出版権設定契約」(「(独占的)出版許諾契約」とは異なります。)によって、当事者間の出版権の具体的な内容が取り決められることになります。出版権は設定行為で定められた範囲内で著作物を出版等する「排他独占的権利」ですから、出版権者は、当該出版権の内容と抵触する第三者の無断出版等に対して自らの有する出版権に基づいて発行差止めや損害賠償を請求することができます(当該出版権の内容と抵触する複製権等保有者の出版行為に対しても発行差止めや損害賠償の請求をすることが可能です)。また、設定された出版権の範囲内で複製権又は公衆送信権は制限を受けることになるため、複製権等保有者は、他に出版等を希望する者に対し、当該出版権の内容と抵触する出版権を設定することも、出版等の許諾を与えることもできません。複製権等保有者自ら抵触する内容の出版行為をすることもできません。なお、出版権が設定されている場合で第三者による無断出版等が行われているときは、当該無断出版等に対して、出版権者はもちろん、複製権等保有者も自らの複製権又は公衆送信権に基づいて当該出版等の差止めや損害賠償を請求することができるものと解されます。

出版権者は、設定行為で定めるところにより、その出版権の目的である著作物について、次に掲げる①又は②の権利の全部又は一部を専有する、とされています(1項)。
① 頒布の目的をもって、原作のまま印刷その他の機械的又は化学的方法により文書又は図画として複製する権利(原作のまま電子計算機を用いてその映像面に文書又は図画として表示されるようにする方式により記録媒体に記録された電磁的記録として複製する権利を含む。)…以下、「1号出版権」といいます。
② 原作のまま電子計算機を用いてその映像面に文書又は図画として表示されるようにする方式により記録媒体に記録された複製物を用いて公衆送信を行う権利…以下、「2号出版権」といいます。

出版権者は、1号出版権又は2号出版権について、その「全部又は一部」を専有するものとされていますが、ここで、「全部又は一部」とは、基本的には、1号出版権と2号出版権の両方を専有する場合、1号出版権のみを専有する場合、2号出版権のみを専有する場合を想定しています。しかし、さらに進んで、1号出版権又は2号出版権の各一部を専有する余地も認められると解されます。例えば、1号出版権権について、紙媒体による出版についての権利のみを専有する場合やCD-ROM等による出版についての権利のみを専有する場合のように、「利用態様としての区別が明確であり、権利の一部のみを専有することによって実務的・理論的な混乱が生じるおそれがない場合」には権利の一部のみを専有することが可能であると考えられています(もっとも、個別具体的な事案においてどこまでそのような権利の一部専有が可能かという点については、終局的には、裁判所において判断されることになります)。
(注)出版権の一部のみを専有することとした場合、当該出版権が及ばない形態の海賊版が流通した場合に出版権者が自ら効果的な海賊版対策を行うことができないため、より効果的な海賊版対策を講ずる観点からは、一般的には、当初から広範な利用を可能とする「全部」の出版権(1号出版権+2号出版権)を設定することが有効であると考えられています。

≪1号出版権≫

「頒布の目的をもって、原作のまま印刷その他の機械的又は化学的方法により文書又は図画として複製する権利」とは、従前の出版権の内容と同様であり、紙媒体による出版(複製)についての権利を想定しています。一方、かっこ書で規定している権利は、CD-ROM等による出版(複製)についての権利であり、紙媒体による権利と同様に、「頒布の目的をもって」複製する権利として規定されています。
「頒布の目的をもって」とは、有償・無償を問わず、著作物の複製物を公衆に譲渡し、又は貸与することを目的として、という意味です(法2条1項19号参照)。出版権の設定を受けた者(出版権者)は、設定行為で定められた範囲内で、著作物を単に「複製」するだけでなく、その複製物(印刷物・CD-ROM等)を公衆に譲渡する権利(一連の出版行為を可能ならしめる権利)を有することが当然に予定されています。
「原作のまま」とは、著作物をそのまま再現複製することをいい、翻訳による出版や翻案による出版など、二次的著作物として複製することを含めない趣旨です。したがって、出版権者が当該出版権の目的である著作物を翻訳・翻案等した二次的著作物についても出版等を希望する場合には、著作権者(翻案権者)と別段の契約をしておく必要があります。

≪2号出版権≫

平成26法改正において、出版権の内容として、著作物を記録したHDD等の記録媒体に記録された当該著作物の複製物を用いて公衆送信を行う権利が新たに規定されました。これにより、2号出版権の設定を受けた出版権者は、公衆送信を行う権利を専有し、ネット上での出版物の違法利用(無断送信)を自ら差し止めることができるようになりました。
「原作のまま」と規定しているのは、紙媒体等による出版の場合と同様に、翻訳や翻案して公衆送信することは認めない趣旨です。
(注)例えば、漫画等で絵の部分には翻案がされておらず、台詞部分のみが翻訳されているような海賊版については、少なくとも絵の部分について出版権侵害が成立しうるものと解されます。
「前条第1項に規定する方式」とは、「電子計算機を用いてその映像面に文書又は図画として表示されるようにする方式」をいい、「公衆送信」とは、「放送又は有線放送を除き、自動公衆送信の場合にあっては送信可能化を含む」ものを意味します(79条1項かっこ書参照)。
なお、電子出版においては、通常、著作物を公衆送信目的で複製し、公衆送信を行うという一連の行為が行われますが、2号出版権の内容として複製権は規定されていません。これは、公衆送信権を専有すれば、通常の場合、有効な海賊版対策に支障はないものと考えられるからでする。この点について、2号出版権のみを専有する出版権者が、違法配信目的で複製を行ったがいまだ配信(送信可能化を含む。)を行っていない者に対して対応することができるかが一応問題となりますが、万一そのような海賊版を発見した場合には、出版権者は、そのような公衆送信目的の複製に対しては、公衆送信権の侵害予防のための差止請求(112条1項)で対応できると解されるため、2号出版権において公衆送信目的の複製権が含まれないとしても、海賊版対策に支障はないと考えられます。

≪法80条2項≫

「出版権の存続期間中に当該著作物の著作者が死亡したとき、又は、設定行為に別段の定めがある場合を除き、出版権の設定後最初の出版行為又は公衆送信行為(第83条第2項及び第84条第3項において「出版行為等」という。)があった日から3年を経過したときは、複製権等保有者は、前項の規定にかかわらず、当該著作物について、全集その他の編集物(その著作者の著作物のみを編集したものに限る。)に収録して複製し、又は公衆送信を行うことができる。

出版権が設定されると、その範囲内で複製権又は公衆送信権は制限を受けるため、複製権等保有者(複製権者又は公衆送信権者)といえども、当該出版権の目的となっている著作物をその著作者の全集などに出版権者に無断で収録することは許されないのが原則です。しかし、「出版権の存続期間中に当該著作物の著作者が死亡したとき」は、複製権等保有者は、当該出版権の目的となっているその著作物を「全集その他の編集物(その著作者の著作物のみを編集したものに限る。)」に収録して複製又は公衆送信することができるとされています。また、設定行為に別段の定めがある場合を除いて、出版権の設定後「最初の出版行為等があった日から3年を経過したとき」にも、複製権等保有者は、同様の行為をすることができます。

≪法80条3項≫

「出版権者は、複製権等保有者の承諾を得た場合に限り、他人に対し、その出版権の目的である著作物の複製又は公衆送信を許諾することができる。」

出版権者が第三者に複製を許諾することができるか否かについて、平成26年改正前3項では、「出版権者は、他人に対し、その出版権の目的である著作物の複製を許諾することができない。」と規定していましたが、一方で、解釈上、複製権者の承諾があれば、出版権者のかかる許諾行為を無効と解すべきではないとする有力な見解がありました。この点、平成26年法改正では、出版権者は、複製権等保有者の承諾を得た場合に限り、第三者に対して複製又は公衆送信を許諾することができることを明確にしました。

≪法80条4

「第63条第2項、第3項及び第5項の規定は、前項の場合について準用する。この場合において、同条第3項中「著作権者」とあるのは「第79条第1項の複製権等保有者及び出版権者」と、同条第5項中「第23条第1項」とあるのは「第80条第1項(第2号に係る部分に限る。)」と読み替えるものとする。」

平成26年改正後3項において定める出版権者から第三者への複製又は公衆送信の許諾は、現行法63条1項の著作物の利用の許諾と基本的に同様の性質のものであることから、出版権者から第三者への複製又は公衆送信の許諾について所定の準用と読替え規定が設けられました。
① 著作物の利用(複製又は公衆送信)の許諾を得た者は、その許諾に係る利用方法及び条件の範囲内において、その許諾に係る著作物を利用(複製又は公衆送信)することができる(準用63条2項)。
② 許諾に係る著作物を利用(複製又は公衆送信)する権利は、複製権等保有者及び出版権者の承諾を得ない限り、譲渡することができない(読替え準用63条3項)。
③ 著作物の送信可能化について著作物の利用の許諾を得た者が、その許諾に係る利用方法及び条件(送信可能化の回数又は送信可能化に用いる自動公衆送信装置に係るものを除く。)の範囲内において反復して又は他の自動公衆送信装置を用いて行う当該著作物の送信可能化については、「第80条第1項(第2号に係る部分に限る。)」の規定は、適用しない(読替え準用63条5項)。



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