30条の自由利用(条文解説)

著作権法30条は、私的使用目的に係る自由複製とその例外(1項)、及びいわゆる私的録音録画補償金制度(2項)について規定しています。

著作権の制限規定(法30条~50条)全般について

「著作権」と一言でいっても、そのなかには、著作物の利用態様に応じて「複製権」(法21条)をはじめとしてさまざまな権利が含まれています(「著作権は権利の束」)。そして、この著作権は、他人の無断利用行為を排除して、著作権者だけが他人に著作物の利用行為の許諾を与える権限を独占する、文字通り「排他独占的権利」です。そのため、著作権者の許諾(同意)を得ることなしに無断で著作物を利用する行為(著作権に抵触する利用行為)を行うと、その行為は当該著作権を侵害する行為となり、その行為に対しては、著作権者は、差止請求や損害賠償請求といった法的措置を行使することが可能になります。これが原則です。
しかし、一方で、いつどのような場面でも、著作権者に以上のような強大な排他独占的行使を認めるだけで、著作物の一般大衆による自由な利用がすべて制限されるならば、「文化的所産」である著作物の「公正な利用」を図ることはできず(法1条参照)、結局のところ、著作権というものは、文化的に豊かな社会を実現するにはかえって障害になりかねないのではないか、といった疑問や懸念が提起されることになります。つまり、社会全体を文化的に醸成し、社会全体を文化的に成熟したものにするためには、すなわち、著作権法がその究極的な目的に掲げる「文化の発展」(1条)に寄与するためには、著作物に対する著作権による保護と社会(一般大衆)による著作物の自由利用とのバランスを常に図らなければならないということです。
著作権法は、以上のような「保護と利用とのバランス」という見地から、著作権者の許諾を何ら要することなく(つまり、無断で)、一般大衆が著作物を自由に利用できる一定の場合についていくつかの規定を設けています。本条もその中の1つです。
ベルヌ条約には、複製権に関する制限に関し次のような規定が設けられていますが、この規定からも明らかなように、著作権の制限規定一般に関しても、その運用に当たっては、著作者(著作権者)の正当な利益(特に経済的な利益)を不当に害することのないように、厳格な法解釈が求められると解されます:

「ある特別な場合において著作物の複製を許すかどうかは、同盟国の立法に属する問題とする。ただし、そのような複製が、当該著作物の通常の利用行為と衝突するものでなく、かつ、当該著作者の正当な利益を不当に害しないことを条件とする。」(ベルヌ条約9条(2))

著作権が一般的に制限される場合であっても、その中でさらに例外があったり、自由利用に当たって著作権者に対する所定の「補償金の支払い」を条件としていたり(例えば、法33条2項)、「出所の明示義務」(48条)が課せられていたり、「目的外使用」が禁止されたり(49条)と、自由利用の見返りにいろいろな制約がありますので、これらの制約にも十分に注意してください。

30条1項について≫

著作権法30条1項は、次のように規定しています:
著作権の目的となっている著作物は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。
1号)公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器(複製の機能を有し、これに関する装置の全部又は主要な部分が自動化されている機器をいう。)を用いて複製する場合
2号)技術的保護手段の回避(第2条第1項第20号に規定する信号の除去若しくは改変(記録又は送信の方式の変換に伴う技術的な制約による除去又は改変を除く。)を行うこと又は同号に規定する特定の変換を必要とするよう変換された著作物、実演、レコード若しくは放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像の復元(著作権等を有する者の意思に基づいて行われるものを除く。)を行うことにより、当該技術的保護手段によって防止される行為を可能とし、又は当該技術的保護手段によって抑止される行為の結果に障害を生じないようにすることをいう。)により可能となり、又はその結果に障害が生じないようになった複製を、その事実を知りながら行う場合
3号)著作権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であって、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、その事実を知りながら行う場合

著作権の目的となっている著作物は、「私的使用」を目的とするときは、一定の場合を除き、その使用する者が自由に複製することができます。本規定によって自由複製が認められるのは、その使用目的が「私的使用」にある場合に限られます。ここで「私的使用」とは、「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること」をいいます。「個人的に」とは、自ら使用する場合のことであり、「これに準ずる限られた範囲内」とは、「家庭内」に準ずる、少人数で、かつ、お互いに個人的に強い結合関係のあるグループ間(例えば、極めて親密な少人数の友人間など)を想定しています。例えば、自分が使用する目的で書籍をコピーしたり、家族やごく少人数の親しい友人間などで楽しむためにテレビ番組やCD等を録画・録音したりする場合です。このような閉鎖的な範囲内での複製行為に限って、法は自由複製を認めています。したがって、会社や研究機関などの団体の内部で、従業員や研究員が業務上ないし研究上利用するために著作物を複製するような場合には、たとえそれが内部的な利用にとまるものであっても、「私的使用」には該当しないと考えられます。
本条によって自由複製ができる者は、「その使用をする者」本人に限られます。したがって、例えば、私的使用を目的としていても、自らコピーせず、コピー業者に依頼して行わせる複製まで許容するものではありません。もっとも、その複製行為が実質的に使用者本人の複製行為と同視できるような場合(例えば、親が自ら使用するために、その子どもに言いつけてコピーを取らせるような場合)まで禁止する必要はないでしょう。

以上のように私的使用を目的とし、自ら複製する場合であっても、それが「公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器を用いてする複製」に関しては、自由にこれを行うことはできません(1号)。例えば、CDレンタル店などに設置されている高速ダビング機器を用いて録音してしまうような場合です。なお、コンビニ等に設置されている「文献複写機」(専ら文書又は図画の複製に供する自動複製機器)を用いた複製については、当分の間本号の適用が除外されており(附則5条の2)、よって、私的使用を目的に自ら行うものであれば、自由に複製することができます。
私的使用を目的とし、自らする複製であっても、技術的保護手段(法2条1項20号)の回避により可能となった複製等を、その事実を知りながら行う場合には、複製権を侵害することになります(2号)。典型的な例としては、いわゆるコピープロテクションが解除されて複製できることを認識した上で録音・録画を行う場合が該当します(例えば、通信販売で購入したコピーガードキャンセラーを使って、本来複製できないはずのDVDソフトを、該当するデジタル式録画機器で、そのような事実を知りながら複製する行為が該当します)。
平成24年の法改正により、「技術的保護手段」の対象に、いわゆる暗号方式によるものが追加されました(2条1項20号)。これは、デジタル化・ネットワーク化が格段に進展している昨今の情勢にかんがみ、著作権等の技術的保護手段の対象となっている従来型の保護技術(いわゆる信号付加方式によるもの)に加え、新たに、暗号型技術についても、これを「技術的保護手段」の一つとして位置づけ、その回避を規制することとし(技術的保護手段の範囲の拡大)、もって著作権者等の経済的利益を不当に害する行為(技術的保護手段の回避行為)を規制することにしたものですすなわち、本条1項2号において、技術的保護手段の回避に係る定義に、特定の変換を必要とするよう変換された著作物等の復元を加え、これにより、私的使用の目的であっても、暗号方式による技術的保護手段の回避により可能となった複製を、その事実を知りながら行う場合には、複製権の侵害となり、民事上の責任(損害賠償責任等)が生じ得るものとされました。もっとも、当該複製行為について刑事上の責任が問われることはありません(刑事罰の対象とはなりません。法120条の2参照)。
私的使用を目的とし、自らする複製であっても、著作権を侵害する自動公衆送信(法2条1項9号の4)(国外で行われる自動公衆送信であって、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、その事実(=著作権を侵害する自動公衆送信であること)を知りながら行う場合には、複製権を侵害することになります(3号)。平成21年の法改正で追加された条項です。インターネットの普及拡大や情報処理の大容量化等を背景に、携帯電話向けの違法音楽配信サイトやファイル交換ソフト等によって違法に配信される音楽や映像作品を複製(ダウンロード)する行為が正規の配信市場を上回る膨大な規模となっているとの指摘が従来からありました。違法なインターネット配信からの音楽・映像のダウンロードの規模がますます膨大になってきていることや、違法配信そのものに対する対抗手段としての技術上の制約等から、音楽や映像等に係わる権利者団体(民間団体)だけで違法配信に対処することには限界があります。そこで、今回の改正で、以上のような実態に着目しつつ、違法なインターネット配信から音楽・映像を複製(デジタル録音録画)する行為については、私的使用目的にかかる自由複製の適用対象から外して、その行為を違法配信からの複製だと認識しながら行うものに関しては、原則通り、権利者からの複製(デジタル録音録画)の許諾を要することとしました。今回の改正により、違法配信からの複製と知りながらデジタル録音録画を行った場合には、複製権の侵害行為となりますので、当該行為に対しては一定の要件の下で民事的な請求(差止請求や損害賠償請求等)が権利者からなされる事態も想定されます。一方、刑事上の制裁に関しては、そのような行為を行ったとしても、著作権侵害罪として罰則(刑罰)を科されることはありません(法119条1項参照)。もっとも、この点については、平成24年の法改正により、「違法ダウンロードの刑事罰化」が明定されました。すなわち、「私的使用の目的をもって、有償著作物等の著作権又は著作隣接権を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、自らその事実を知りながら行って著作権又は著作隣接権を侵害した者」には、所定の刑事罰が科せられることになりました(法119条3項)。

私的使用目的にかかる自由複製が認められる場合、著作物をそのままで複製するだけでなく、それを「翻訳」・「編曲」・「変形」・「翻案」して複製することも可能です(法43条1号)。
私的使用目的で自ら適法に複製したものであっても、例えば、当該複製物を他人に販売したり、貸与したりする行為、又は複製物である録音物・録画物を再生して公衆に視聴させる行為などを著作権者に無断で行った場合には、いわゆる適法複製物の目的外使用として、複製権の侵害となる場合があります(法49条1項1号参照)。

30条2項について≫

著作権法30条2項は、次のように規定しています:
私的使用を目的として、デジタル方式の録音又は録画の機能を有する機器(放送の業務のための特別の性能その他の私的使用に通常供されない特別の性能を有するもの及び録音機能付きの電話機その他の本来の機能に附属する機能として録音又は録画の機能を有するものを除く。)であって政令で定めるものにより、当該機器によるデジタル方式の録音又は録画の用に供される記録媒体であって政令で定めるものに録音又は録画を行う者は、相当な額の補償金を著作権者に支払わなければならない。

デジタル方式の録音・録画機器を用いて、私的使用を目的として録音・録画を行う場合には、一定の要件の下で、「相当な額の補償金」を著作権者に支払わなければならないことになっています。これが、いわゆる「私的録音録画補償金制度」です。デジタル方式の録音・録画機器の性能の向上と普及に伴い、社会的な総体として、アナログに比べて劣化しにくいデジタル複製物が増大することから、著作権者の経済的利益を確保するために設けられた制度です。なお、著作権者に支払われるこの「相当な額の補償金」は、実際には、メーカーの協力をもとで、該当する「デジタル方式の録音・録画機器」の価格に上乗せされていて、これを購入する際に購入者が支払う形になっています(その後、指定管理団体を通して各権利者に分配されます。購入者が私的使用を目的とした複製(録音・録画)を行わない場合には、指定管理団体に対し、その旨を証明して補償金の返還を請求することが可能です)。



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     カネダ著作権事務所


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