違法ダウンロードの刑事罰化(条文解説)

著作権法119条3項に次の規定があります:
「第30条第1項に定める私的使用の目的をもって、有償著作物等(録音され、又は録画された著作物又は実演等(著作権又は著作隣接権の目的となっているものに限る。)であって、有償で公衆に提供され、又は提示されているもの(その提供又は提示が著作権又は著作隣接権を侵害しないものに限る。)をいう。)の著作権又は著作隣接権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であって、国内で行われたとしたならば著作権又は著作隣接権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、自らその事実を知りながら行って著作権又は著作隣接権を侵害した者は、2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。」

本規定は、いわゆる「違法ダウンロードの刑事罰化」について規定したものです。
平成24年の法改正により、「違法ダウンロードの刑事罰化」が明定されました。すなわち、「私的使用の目的をもって、有償著作物等の著作権又は著作隣接権を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、自らその事実を知りながら行って著作権又は著作隣接権を侵害した者」には、刑事罰(「2年以下の懲役」or「200万円以下の罰金」又は「併科」)が科せられることになりました。「私的使用の目的をもって、有償著作物等の著作権又は著作隣接権を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、自らその事実を知りながら行うこと」―これが、ここにいう「違法ダウンロード」の意味です。

「有償著作物等」とは、「録音され、又は録画された著作物又は実演等であって、有償で公衆に提供され、又は提示されているもの(その提供又は提示が著作権又は著作隣接権を侵害しないものに限る。)」をいいます(かっこ書)。例えば、CDとして公衆に販売されている音楽、有料でインターネット配信されている楽曲、DVDとして公衆に販売されている映画、有料でインターネット配信されている映像などが挙げられます。ドラマなどのテレビ番組については、これが「DVDに収められて公衆に販売されている」か、「オンデマンド放送のように有料でインターネット配信されている」ような場合には、「有償著作物等」に該当することになります。しかし、「単にテレビで放送されただけで、いまだ有償で提供・提示されていない番組」については、「有償」の要件を満たしていないため、ここにいう「有償著作物等」には該当しません。したがって、そのような「無償」で提示等されているテレビ番組が違法にインターネット配信されている場合に、「その事実を知りながら」ダウンロード(デジタル方式の録音・録画)をしても、刑事罰の対象にはなりません(もっとも、そのような行為は著作権等の侵害行為であり民事上の責任は生じうる、という点には留意が必要です(法30条1項3号参照))。なお、「市販の漫画本を撮影した動画」が有償で提供等されている場合に、これを「違法ダウンロード」することが刑事罰の対象になるか、という点については、漫画作品自体が録音・録画された状態で提供等されているものではないので、当該動画は「有償著作物等」に該当せず、よって、刑事罰の対象にはならないと解されます。以上に関連して、インターネット上の画像ファイルをダウンロードすることについては、そもそも「録音又は録画」(法2条1項13号・14号参照)に該当しないため、「私的使用」に止まる限り、自由に行うことができます。新設の119条3項の「違法ダウンロード」は、端的には、音楽及び映画の違法ダウンロードが想定されています。

刑事罰の対象になるのは、「有償著作物等の…デジタル方式の録音又は録画」であるため、違法に配信されている音楽や映像をただ視聴するだけの場合には、そこに「録音又は録画」が伴っていないため、刑事罰の対象にはなりません。なお、いわゆるストリーミング(ネット上で映像や音楽を受信しながら同時に再生する方式)やキャッシュの場合、再生(ダウンロード)に「複製(録音又は録画)」を伴うことがありますが、このような場合の「一時的録音・録画」は、そもそも複製権(21条)が予定する「複製」の概念に該当せず、かりに「複製」の概念に当たると解する余地がある場合でも、著作権法47条の8(電子計算機における著作物利用に伴う複製の規定が適用されるものと解され、いずれにしても、著作権等の侵害には該当せず、「著作権又は著作隣接権を侵害した」という要件を満たさないことになります。また、権利者自らが自動公衆送信している場合や権利者から許諾を得た者が自動公衆送信している場合、権利制限規定により適法に自動公衆送信が行われている場合に、当該自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の録音・録画に本項の適用はありません。そのような自動公衆送信は、「著作権又は著作隣接権を侵害する」(違法な)自動公衆送信ではないからです。さらに、例えば、友人から送信されたメールに添付されていた違法複製の音楽や映像ファイルを、それと知りつつ、ダウンロードした場合、そのようなダウンロードは、「自動公衆送信を受信して」行うものではない(友人がメールを特定人宛てに送信する行為は「自動公衆送信」(法2条1項9号の4)ではない)ため、刑事罰の対象にはならないと解されます。

有償著作物等のデジタル方式の録音・録画を、自ら「その事実を知りながら」行った場合に、刑事罰の対象になるわけですが、ここで「その事実」とは、「有償著作物等であること」及び「著作権又は著作隣接権を侵害する自動公衆送信であること」をいうものを解されます。「その事実を知らなかった」場合には、刑事罰に問われることはありません。
なお、法119条3項の罪は、親告罪とされているため、権利者からの告訴がなければ公訴を提起できないことになります(123条1項)。



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