Q&A(著作権)

著作権法では、建築物や機械などの設計図も著作物に当たると聞きましたが、機械設計図からその機械を製作すると、機械設計図の侵害になるのですか?

ならないと考えます。
著作権法は、「学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物」を保護すべき著作物のカテゴリーに含めています(法
10条1項6号)。したがって、「建築物や機械などの設計図」も、その設計図が建築学や機械工学上の技術思想を創作的に表現した学術的な性質を有するものであれば、著作権法による保護の対象になりえます。
それでは、著作物に該当する「機械設計図」を基にしてその設計図に表現されている「機械」を実際に製作する行為は、それが著作権者に無断で行われると、当該「機械設計図」の侵害行為になるのでしょうか?この点については、著作権法上、複製権(法
21条)の射程範囲が問題となります。
ところで、複製権とは「著作物を複製する権利」です。そして、著作権法には「複製」とは何かについての定義規定があり、それによれば、「複製」とは、「印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製すること」をいう、とされています(法2条1項15号)。これらから、機械設計図に基づいてそこに表現されている機械(「機械」自体は通常「著作物」(法2条1項1号)に該当しません。)を製作する行為は複製権の射程範囲に入る行為ではないと解されます(機械設計図をコピーしたり、写真撮影したりする行為が、その機械設計図に関する典型的な「複製」行為に当たります。)。
なお、この点に関し、次のような見解が存在します。すなわち、「建築の著作物」(建物自体であって、その建築図面の著作物とは区別されます。)については、「建築に関する図面に従って建築物を完成すること」を特に「複製」に含めているため(法2条1項15号(ロ))、これを「機械」と「機械設計図」の関係にも当てはめて類推適用しようとする見解です。しかしながら、この「建築の著作物」に関する「複製」の特別規定は、思想又は感情を創作的に表現したものであって学術又は美術の範囲に属するものであれば、「建築物」(10条1項5号)自体が著作物と認められるため、それと同一性のある建築物を建設した場合はその複製になる関係上、その建築に関する図面に従って建築物を完成した場合には、その図面によって表現されている建築の著作物の複製と認めることにする趣旨で設けられたものであると解されます。「機械」は、建築の著作物とは異なり、それ自体「著作物」としての保護を受けるものではない(それと同一性のある機械を製作しても著作権による保護はない。)ことを考えると、以上のような類推適用を認めようとする見解には難点があるように思います。

ホテルや旅館のロビーで館内の有線放送設備を使って市販の音楽CDを流す行為に著作権は働くのでしょうか?

働きます。この行為を続けたいのであれば、著作権者の許諾が必要になります。
著作権者は「公衆送信権」という権利を専有していますが(法
23条1項)、ここで「公衆送信」とは、「公衆によって直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信を行うこと」をいうと定義されています(法2条1項7号の2)。「館内の有線放送設備を使って市販の音楽CDを流す行為」は、一見この「公衆送信」に該当しそうですが、そうではありません。少々ややこしいのですが、「電気通信設備で、その一の部分の設置の場所が他の部分の設置の場所と同一の構内(同一の者の専有にかかる構内に限る)にあるものによる送信」が「公衆送信」から除外されているからです(同項かっこ書)。つまり、「ホテル」や「旅館」という「同一構内で同一の者が専有する施設内」での電気通信設備(有線・無線の両方を含む。)を使った送信は、「公衆送信」に該当しないということです。
では、ご質問の行為に対してどの著作権が働くことになるのか。公衆送信権は働きませんが、「演奏権」(法22条)が働くことになります。「演奏」には、著作物の演奏で録音されたものを再生することと、「著作物の演奏を電気通信設備を用いて伝達すること」を含むからです(法2条7項)。
なお、公表された著作物については、営利を目的とせず、聴衆等から料金を受けない場合には、自由にこれを公に演奏することができる場合がありますが(法38条1項参照)、「ホテルや旅館のロビー」での演奏は一般的に「営利を目的としない」ものとはいえないと解されるため、本規定の適用を主張することは難しいと考えます。

ある著名な小説家(故人)の直筆の原稿(作品自体はすでに公表されております。)が発見されました。この原稿を記念館で展示することを企画しております。この展示に関して、しかるべき権利者の方から承諾を取り付けなければならないのでしょうか。

著作権者(展示権を有する者)から「展示」に関する承諾を取り付ける必要はありません。
著作権の中に「展示権」という権利があります。この権利は、著作物を原作品により公に展示する場合に働く権利ですが、すべての著作物について認められているわけではありません。すなわち、著作権法上、展示権とは、「美術の著作物」又は「まだ発行されていない写真の著作物」をこれらの原作品により公に展示する権利を意味します(法
25条)。したがって、「言語の著作物」(法10条1項1号参照)である「直筆の原稿」は、「美術の著作物」にも、「(未発行の)写真の著作物」にも当たらないため、そこに「展示権」が及ぶことはありません。
なお、「作品自体はすでに公表されております」とのことですので、本件では、「公表権」(法18条1項)を考慮する必要はないと考えます。

ある小説の日本語訳の出版を考えています。その小説は、原典はドイツ語であり、英語訳も出版されています。英語訳からの日本語訳を考えているのですが、この場合、誰から出版の許諾を得ればよいのでしょうか?

当該小説に関する原典ドイツ語の著作権者を
[G]、その英語ヴァージョンの著作権者を[E]とします。その日本語ヴァージョンの翻訳・出版には、[G]及び[E]の両者の許諾が必要になります。
まず、英語ヴァージョンから日本語への翻訳及び出版に関してですが、当該英語ヴァージョンの著作権者[E]は、著作権法27条及び21条によって当該英語ヴァージョンについての「翻訳権」と「複製権」を専有していますので、日本語ヴァージョンの翻訳・出版に関しては、この[E]からの許諾が必要になります。さらに、そのもとになっている原典について見てみますと、その著作権者である[G]は、著作権法28条によって、その二次的著作物(本問では英語ヴァージョン)の利用に関し当該二次的著作物の著作権者が有するものと同一の権利(本問では特に「翻訳権」と「複製権」)を専有することになるため、結局のところ、当該原典の著作権者[G]からも翻訳・出版(複製)の許諾を得る必要があります。



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