障害者アートを支援している皆様へ

1948年12月、3回国連総会において採択された「世界人権宣言」(The Universal Declaration of Human Rights)の第27条に次の規定があります:
Article 27.
(1) Everyone has the right freely to participate in the cultural life of the community, to enjoy the arts and to share in scientific advancement and its benefits.
≪対訳≫
すべて人は、自由に社会の文化生活に参加し、芸術を鑑賞し、及び科学の進歩とその恩恵とにあずかる権利を有する。
(2) Everyone has the right to the protection of the moral and material interests resulting from any scientific, literary or artistic production of which he is the author.
≪対訳≫
すべて人は、その創作した科学的、文学的又は美術的作品から生ずる精神的及び物質的利益を保護される権利を有する。

さまざまな文化生活・芸術活動を通じて幸福で豊かな生活を営むこと、さらにはそのような活動を通して自身が創作した作品から生じる利益を享受することは、すべての人に認められた基本的な権利です。このことは、障害者の創作活動についても当然に言えることです。
障害者が生み出す作品の中には、既存の価値観にとらわれない芸術性を備えたものが多く、そのような作品のうちには国内外で高い評価を受けるような事例も出てきています。彼らが創作する作品(著作物)は、これまでの既存の芸術の評価軸に刺激を与えると同時に、芸術活動全体に多様性を持たせ得るという点で、「文化の発展」に寄与する可能性を大いに有していると言えるでしょう。ここに、さまざまな角度から障害者の芸術活動・創作活動を支援していく意義があります。

どのような角度から障害者の芸術活動・創作活動を支援していくかについては、いろんな方向性が考えられます。それぞれの地域で福祉サービス事業所や特別支援学校等において適切な支援を提供できる人材を育成することは重要です。障害者が生み出す優れた作品が埋もれてしまわないように、作品を適正に評価・発掘して、さらにそのような作品の存在を外に発信できる仕組み作りも大切です。美術館等において障害者が芸術作品をより鑑賞しやすくする環境づくりを進めることも重要です。障害者やその家族、障害者の創作活動を支援する福祉サービス事業所や特別支援学校等の職員、障害者アートに理解のある美術関係者や法律の専門家等のネットワークを構築して、相互の連携・協力を図ることも不可欠でしょう。
しかし、障害者の芸術活動・創作活動を支援していく中で、まずはじめに語られなければいけないことは、障害者が生み出す作品(著作物)にかかわるすべての人が、彼らが創作する作品(著作物)に対する権利を十分に認識(尊重)するということです。第一に、彼らの権利を正当に評価することこそが、すべての支援活動の前提となります。そして、もし、彼らの作品を何らかの形で利用(商業的利用)する場合には、彼らの権利を正当に評価したうえで、適切な権利処理を図ることになります。

障害者の創作活動を支援するに当たっては、障害者本人が著作権等の自らの権利をきちんと認識したうえで その権利を行使するための自らの意思を表示することに困難を伴うことがあるため、障害者が創作する作品(著作物)に対する権利保護が適切になされない場合があります。また、彼らの創作活動には福祉サービス事業所の職員等さまざまな関係者(支援者)が関わることが多いのですが、実際には、障害者の創作活動を支援する関係者の間でも、こうした障害者の作品に関する権利保護に対する認識が十分であるとはいえない状況があります。

それでは、以上のような点を踏まえたうえで、障害者の芸術活動・創作活動を適切に支援していくためには、どこから手をつけていけばよいでしょうか。
まずは、利用者(障害者)と彼らに創作の場を提供する事業所やNPOとの間で、きちんとした約束事を策定して、お互いその約束事にしたがって作品を取り扱うという仕組みを徹底することです。ここが曖昧に運用されているようでは、例えば、利用者(障害者)の作品を商業的に利用したいと考えている外部の企業等との契約関係に入る際に又は契約を締結した後で必ず問題が起こります。そのため、利用者(障害者)と彼らに創作の場を提供する事業所やNPOとの間では「作品に関する権利関係」を明確にした書面を準備しておくべきですが、その際、特に留意すべき点は、支援の現場で創作される作品の著作権と所有権の帰属の問題です。
作品の所有権については、支援の現場で創作活動を行う障害者の作品の所有権が、どのような形で(条件で)、障害者本人に帰属するのか又はその支援の場を提供している福祉サービス事業所やNPOに帰属するのかが最大の問題となります。この問題に対しては、所有権の取扱いについて、利用者(障害者)と彼らに支援の場を提供する福祉サービス事業所やNPOが個別に合意して契約書を取り交わす、あるいは事業所やNPOにおいてあらかじめ作品の権利(所有権)関係の取扱いに関する規程を定めておき、それに準拠する形で扱うということを明確にしておくといった対応を取ることが望まれます。
一方、著作権法上の権利については、福祉サービス事業所やNPOが、障害者の作品自体を公の場で展示したり、第三者に販売する場合はもとより、障害者の作品を商業的に利用して二次的な商品化を企画する場合にも、その旨の承諾書を事前に取り付けておくことが適切です。また、所有権の場合と同様に、事業所やNPOにおいてあらかじめ作品の権利(著作権・著作者人格権)関係の取扱いに関する規程を定めておき、それに準拠する形で扱うということを明確にしておくといった対応を取ることが望まれます。
さらに、事情に応じて、「成年後見制度」を活用した方が当事者・関係者にとってベターな選択となる場合もあると思われます。

障害者アートに対する国内外の評価が高まる中で、彼らの作品の商業的利用(作品自体の展示や販売、作品の二次的利用による商品化)も進んでいます。実際に、障害者の作品について、各種アートフェアに出展することで収益を確保してその収益を障害者に還元したり、障害者の作品を使用したいという企業等から著作権使用料(ロイヤリティ)の支払いを受けるといった例も見られます。これはまさに上述の世界人権宣言にある「作品から生ずる物質的利益」を享受することであり、このような商業的利用の面について適切な支援の充実が図られるならば、経済面から障害者の生活の向上と自立に資することになります。
だたし、ここで忘れてはいけないことがあります。それは、障害者の作品の商業的利用といえども、それはまさに「ビジネス」であり、そこでは、明確な権利関係に基づくさまざまな権利義務が支配するということです。
ビジネスはボランティアではありません。障害者の作品を何らかの態様で商業的に利用する際には、とりわけその家族や支援者の方には、この点をきちんと念頭に入れて行動していただきたいと思います。

障害者の芸術活動・創作活動を支援する福祉サービス事業所及びNPOに対する≪障害者アート契約書ひな型セット≫の販売について




     Kaneda Copyright Agency
     カネダ著作権事務所


      Home  メール相談  契約マネジメント  文化庁登録マネジメント  侵害対応マネジメントその他
      アメリカ著作権局登録マネジメント  著作権判例エッセンス