092】31条の自由利用(条文解説)

著作権法31条は、「図書館等における複製等」すなわち公共的な図書館等の有する一般公衆に対する奉仕機能の観点から、「図書館等」が一定要件の下で行う一定限度内での自由複製等を許容する旨を規定しています。

≪第1項≫

30条1項は、次のように規定しています:
「国立国会図書館及び図書、記録その他の資料を公衆の利用に供することを目的とする図書館その他の施設で政令で定めるもの(以下この項及び第3項において「図書館等」という。)においては、次に掲げる場合には、その営利を目的としない事業として、図書館等の図書、記録その他の資料(以下この条において「図書館資料」という。)を用いて著作物を複製することができる。
1号)図書館等の利用者の求めに応じ、その調査研究の用に供するために、公表された著作物の一部分(発行後相当期間を経過した定期刊行物に掲載された個々の著作物にあっては、その全部。第3項において同じ。)の複製物を一人につき一部提供する場合
2号)図書館資料の保存のため必要がある場合
3号)他の図書館等の求めに応じ、絶版その他これに準ずる理由により一般に入手することが困難な図書館資料(以下この条において「絶版等資料」という。)の複製物を提供する場合」

図書館等においては、下記の①~③に掲げる場合には、その営利を目的としない事業として、図書館資料を用いて著作物を複製することができます。ここで、「図書館等」とは、「国立国会図書館及び図書、記録その他の資料を公衆の利用に供することを目的とする図書館その他の施設で政令で定めるもの」をいいます。これを受けて、著作権法施行令1条の3に「図書館資料の複製が認められる図書館等」に関する規定が設けられています。国立国会図書館(その支部図書館を含むものと解されます。)の他、基本的には、司書等が置かれている公共的な図書館(自治体が設置している図書館、大学・短期大学に設置されている図書館や資料センター、国立近代美術館に設置されている図書館など)が「図書館等」に該当することになります。高校以下の学校図書館や民間企業内に設置されている図書館などは「図書館等」に当たりませんので、注意してください。
営利を目的としない事業として」の自由複製が許容されていますが、複製に要する実費(用紙代、減価償却費、人件費、電気代など)を徴収することは許されると解されます。
図書館資料」とは、「図書館等の図書、記録その他の資料」すなわち一般公衆の利用に供するために当該図書館等で保管しているすべての資料を意味します。もっとも、複製のために、他の施設から借り受けた資料や図書館等の利用者が持ち込む資料を含むものではありません。

図書館等において自由複製が許されるのは、次①~③に掲げる場合に限られます。
① 図書館等の利用者の求めに応じ、その調査研究の用に供するために、公表された著作物の一部分(発行後相当期間を経過した定期刊行物に掲載された個々の著作物にあっては、その全部)の複製物を一人につき一部提供する場合(1号)
公表(法4条参照)された著作物の「一部分」とは、「少なくとも著作物の半分を超えない」ものを意味すると解されています。多数の著作物が収録されている編集著作物(例えば、楽譜集)では、当該個々の著作物(1曲分の楽譜)の半分以下が「一部分」であると解されます。
なお、「発行後相当期間を経過した定期刊行物に掲載された個々の著作物」にあっては、その「全部」を複製することが許されます。「発行後相当期間を経過した定期刊行物」とは、通常の販売経路ではもはや入手できない状態にある定期刊行物を意味すると解されます(一般的には、少なくとも、ある定期刊行物が発行されていから次号が発行されるまでの間は当該著作物の全部を複製することはできないと解されます。)。
② 図書館資料の保存のため必要がある場合(2号)
図書館資料の現に汚れている個所を補完するため等図書館資料の適切に保存のため必要やむを得ない場合に限られるものと解されます。この場合、保存すべき図書館資料をCD-ROMやマイクロフィルム等に複製することも可能と考えられますが、ただ単に所蔵する資料をインターネットで提供するためにデータベース化するような場合を許容するものではありません(もっとも、「国立国会図書館」については2項参照)。
③ 他の図書館等の求めに応じ、絶版その他これに準ずる理由により一般に入手することが困難な図書館資料の複製物を提供する場合(3号)
上記で解説した「図書館等」相互間における複製物の提供を許容するもので、例えば、「図書館等」が民間企業内に設置されている図書館からの求めに応じて複製物を提供することはできません。
絶版その他これに準ずる理由により一般に入手することが困難な図書館資料」(これを「絶版等資料」といいます。)とは、絶版等により一般的に物理的に入手困難な図書館資料を意味し、この他に、経済的に入手困難といった理由(非常に高価な資料で予算では購入できないといった理由)で他の図書館からの求めに応じることはできません。

≪第2項≫

30条2項は、次のように規定しています:
「前項各号に掲げる場合のほか、国立国会図書館においては、図書館資料の原本を公衆の利用に供することによるその滅失、損傷若しくは汚損を避けるために当該原本に代えて公衆の利用に供するため、又は絶版等資料に係る著作物を次項の規定により自動公衆送信(送信可能化を含む。同項において同じ。)に用いるため、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。第33条の2第4項において同じ。)を作成する場合には、必要と認められる限度において、当該図書館資料に係る著作物を記録媒体に記録することができる。

「国立国会図書館」においては、第1項に規定する自由複製の他にも、自由複製が許容される場合があります。すなわち、国立国会図書館においては、図書館資料の原本を公衆の利用に供することによるその滅失、損傷又は汚損を避けるため、当該原本に代えて公衆の利用に供するための電磁的記録を作成する場合には、必要と認められる限度において、当該図書館資料に係る著作物を記録媒体に記録することができる、というものです(2項前段)。
国立国会図書館は、国立国会図書館法に基づく納本制度により、日本の官公庁出版物や民間出版物を網羅的に収集しており、資料の保存自体が大きな使命となっています。一方、その所蔵資料の中には、既に劣化や損傷が生じているものがかなりあることが以前から指摘されています。本条1項2号の規定によれば、現に傷みが激しく保存のため必要やむを得ない場合であれば、所蔵資料の電子化(複製)が可能ですが(上記参照)、既に損傷や劣化が生じている資料を電子化しても、所蔵資料を適切に保存して、将来、国民の一般利用に供するとの国立国会図書館の使命が十分に果たせない事態も想定されます。そこで、国立国会図書館においては、所蔵資料の原本の滅失等を避け、出版著作物が納本直後の良好な状態で「文化的所産」(法1条)として適切に保存されるように、所蔵資料を納本後直ちに電子化(複製)できることにしたのが第2項の規定です
さらに、平成24年の法改正により新3項が追加されたことに伴い、国立国会図書館において自由複製が許容される場面が拡大しました。すなわち、国立国会図書館においては、「絶版等資料に係る著作物を次項の規定により自動公衆送信(送信可能化を含む。同項において同じ。)に用いるため」に電磁的記録を作成する場合には、必要と認められる限度において、当該図書館資料に係る著作物を記録媒体に記録することができるようになりました。

≪第3項≫

30条3項は、次のように規定しています:
「国立国会図書館は、絶版等資料に係る著作物について、図書館等において公衆に提示することを目的とする場合には、前項の規定により記録媒体に記録された当該著作物の複製物を用いて自動公衆送信を行うことができる。この場合において、当該図書館等においては、その営利を目的としない事業として、当該図書館等の利用者の求めに応じ、その調査研究の用に供するために、自動公衆送信される当該著作物の一部分の複製物を作成し、当該複製物を一人につき一部提供することができる。」

本格的なデジタル・ネットワーク社会の到来を背景として、国立国会図書館において納本された資料をデジタル・アーカイブ化して、もって知の集積ともいえる当該デジタル資料を国民がより広くかつ積極的に活用できるようにするために、平成24年法改正により、次の行為について、著作権者の許諾なく著作物の利用を可能とする規定が整備されました(新3項)。
① 国立国会図書館による図書館等に対する絶版等資料のインターネット送信(自動公衆送信)
② 送信先図書館等による利用者の求めに応じた当該送信資料の一部複製
以上の改正においては、一方で、民間ビジネスへの圧迫を避ける必要性、より具体的には、電子書籍市場の形成・発展の阻害とならないようにする必要性があることから、無限定なインターネット送信(自動公衆送信)を許容することはしていません。すなわち、次の2点の「縛り」(限定)がかけられています。
① 国立国会図書館がインターネット送信(自動公衆送信)できる送信先は、「図書館等」(公立図書館、大学図書館等、1項の解説参照)に限られること。
② 国立国会図書館がインターネット送信(自動公衆送信)できる対象出版物(資料)は、国立国会図書館においてデジタル化された、市場における入手が困難な出版物(「絶版等資料」)に限られること。
つまり、国立国会図書館は、絶版等資料に係る著作物について、図書館等において公衆に提示することを目的とする場合には、第2項により電磁的記録媒体に記録された当該著作物の複製物を用いて自動公衆送信(2条1項9号の4)を行うことができ(3項前段)、さらに、そのような形で自動公衆送信される場合、当該図書館等においては、その営利を目的としない事業として、当該図書館等の利用者の求めに応じ、その調査研究の用に供するために、自動公衆送信される当該著作物の一部分の複製物を作成し、当該複製物を一人につき一部提供することができます(3項後段)。
上述したように、デジタル・ネットワーク化の進展の背景として、納本制度を有する国立国会図書館の電子化された所蔵資料をインターネットにより広く国民が有効活用できるようにすることが国民の情報アクセスの利便性の向上につながるとの見地から設けられた規定です。本規定により、電子化された国立国会図書館の資料のうち、絶版等の理由により一般に市場で入手することが困難な資料を地方の公共図書館や大学図書館等にインターネット送信し、利用者が閲覧できるようになるとともに、当該公共図書館等に送信された資料の一部分を利用者に対し一部複製して提供できるようになります。



     Kaneda Copyright Agency
     カネダ著作権事務所


      Home  メール相談  契約マネジメント  文化庁登録マネジメント  侵害対応マネジメントその他
      アメリカ著作権局登録マネジメント  著作権判例エッセンス