技術的保護手段(条文解説)

≪「技術的保護手段」とは≫

著作権法において「技術的保護手段」とは以下のように定義されていますが、法律の専門家でも一見したところ何を言っているのかわからないような規定振りとなっています:
「技術的保護手段 電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によって認識することができない方法(次号において「電磁的方法」という。)により、第17条第1項に規定する著作者人格権若しくは著作権又は第89条第1項に規定する実演家人格権若しくは同条第6項に規定する著作隣接権(以下この号、第30条第1項第2号及び第120条の2第1号において「著作権等」という。)を侵害する行為の防止又は抑止(著作権等を侵害する行為の結果に著しい障害を生じさせることによる当該行為の抑止をいう。第30条第1項第2号において同じ。)をする手段(著作権等を有する者の意思に基づくことなく用いられているものを除く。)であって、著作物、実演、レコード、放送又は有線放送(次号において「著作物等」という。)の利用(著作者又は実演家の同意を得ないで行ったとしたならば著作者人格権又は実演家人格権の侵害となるべき行為を含む。)に際し、これに用いられる機器が特定の反応をする信号を著作物、実演、レコード若しくは放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像とともに記録媒体に記録し、若しくは送信する方式又は当該機器が特定の変換を必要とするよう著作物、実演、レコード若しくは放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像を変換して記録媒体に記録し、若しくは送信する方式によるものをいう。」(法2条1項20号)

以上の定義規定をもう少し分解して説明すると、
著作権法において、「技術的保護手段」とは、電磁的方法により、著作権等を侵害する行為の防止又は抑止をする手段であって、著作権等を有する者の意思に基づくことなく用いられているものではなく(つまり、著作権等を有する者の意思に基づいて用いられているもので)、かつ、著作物等の利用に際し、次のいずれかの「方式」によるものを意味します。
① 著作物等の利用に用いられる機器が、特定の反応をする信号を、著作物等係る音・影像とともに記録媒体に記録ないし送信する方式によるもの
② 著作物等の利用に用いられる機器が、特定の変換を必要とするよう、著作物等係る音・影像を変換して記録媒体に記録ないし送信する方式によるもの(平成24年法改正で追加)

上記①の方式によるもの(いわゆる「信号付加方式」)の具体例としては、SCMS(Serial Copy Management System) = デジタル方式の複製を一世代のみ可能とする技術(音楽CDなどで用いられている)や、擬似シンクパルス方式 = 複製(録画)しても鑑賞に堪えない乱れた映像になるようにする技術(映画のビデオテープなどで用いられている)等が挙げられます。
平成24年の法改正により、技術的保護手段の対象に、いわゆる「暗号方式」(上記②の方式によるもの)が追加されました。デジタル化・ネットワーク化が格段に進展し、多くの家庭にDVD録画機器やハードディスク内蔵型のテレビが普及している状況などを背景として、新たに、暗号型技術(DVDなどに用いられている技術)についても「技術的保護手段」として位置づけたものです。「暗号方式」による技術的保護手段(典型的には、コンテンツ提供事業者が映画などのコンテンツを暗号化することにより、特定機器での視聴や複製をコントロールする技術)の具体例としては、現在DVDに用いられているCSS(Content Scramble System)や、Blu-rayに用いられているAACS(Advanced Access Content System)などが挙げられます。

≪技術的保護手段の回避と刑事罰≫

技術的保護手段の回避装置又は技術的保護手段の回避プログラムの公衆への譲渡行為など「技術的保護手段の回避」にかかわる所定の行為に対しては、これを犯罪行為として、刑事罰を科すことを明定されています(法120条の2・1号及び2号)。すなわち、次のいずれかに該当する者は、「3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」ものとされています:
1号)技術的保護手段の回避を行うことをその機能とする装置(当該装置の部品一式であって容易に組み立てることができるものを含む。)若しくは技術的保護手段の回避を行うことをその機能とするプログラムの複製物を公衆に譲渡し、若しくは貸与し、公衆への譲渡若しくは貸与の目的をもって製造し、輸入し、若しくは所持し、若しくは公衆の使用に供し、又は当該プログラムを公衆送信し、若しくは送信可能化する行為(当該装置又は当該プログラムが当該機能以外の機能を併せて有する場合にあっては、著作権等を侵害する行為を技術的保護手段の回避により可能とする用途に供するために行うものに限る。)をした者」
2号)「業として公衆からの求めに応じて技術的保護手段の回避を行った者」

(注1)上記1号及び2号にいう「技術的保護手段の回避」とは、「2条第1項第20号に規定する信号の除去若しくは改変(記録又は送信の方式の変換に伴う技術的な制約による除去又は改変を除く。)を行うこと又は同号に規定する特定の変換を必要とするよう変換された著作物、実演、レコード若しくは放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像の復元(著作権等を有する者の意思に基づいて行われるものを除く。)を行うことにより、当該技術的保護手段によって防止される行為を可能とし、又は当該技術的保護手段によって抑止される行為の結果に障害を生じないようにすること」を意味します(法30条1項2号かっこ書参照)。
(注2)上記1号及び2号の罪はいずれも「非親告罪」です(公訴を提起するために権利者からの告訴は必要ありません)(123条1項参照)。

技術的保護手段の回避装置又は技術的保護手段の回避プログラムの公衆への譲渡行為等(1号)については、平成24年の法改正により、従来型のいわゆる信号付加方式による保護手段の回避装置・プログラムによる当該信号の除去・改変(例えば、コピー制御信号の除去等により本来できないはずのVHSの複製を可能にする行為)の他に、いわゆる暗号付加方式による保護手段の回避装置・プログラムによる当該暗号の解除(例えば、暗号化の解除により本来できないはずのDVDの複製を可能にする行為)が、新たな規制対象として追加されました。デジタル化・ネットワーク化が格段に進展し、多くの家庭にDVDの録画機器やハードディスク内蔵型のテレビが普及している昨今の情勢にかんがみ、DVDのコピーガード機能を外してコピーすることを放置すると権利者の経済的利益を不当に害することになるため、規制対象(技術的保護手段の範囲)の拡大を図ったものです。

技術的保護手段に係る規制に関しては、まず、回避装置・プログラムの公衆への譲渡行為等が刑事罰の対象となります(1号)。本号で規制対象となる「公衆への譲渡若しくは貸与の目的をもって(する)製造」には、自ら公衆に譲渡又は貸与する目的で行う生産(自主生産)や、他者をして公衆への譲渡又は貸与される目的でする生産(受注生産)などが含まれると解されます。また、本号はおよそ技術的保護手段の回避以外に実用的な用途(機能)を持たない装置・プログラムを規制対象にするもので、一般的なパソコンのようないわゆる汎用機器の公衆への譲渡等を規制するものではありません(かっこ書参照)。

技術的保護手段に係る規制に関しては、さらに、公衆からの求めに応じてする業として」(反復して)の回避行為が刑事罰の対象となります(2号)。回避により可能となった複製を、私的目的で、その事実を知りながら行う場合(30条1項2号参照)、著作権等の侵害として、民事上の責任を問われる可能性がありますが、刑事罰の対象とはなりません。

≪技術的保護手段の回避と私的使用≫

著作権の目的となっている著作物は、「私的使用」(=個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること)を目的とするときは、その使用する者が複製することができるのが原則ですが、「技術的保護手段の回避」との関係では次のような複製行為は許されません(法30条1項2号):
「技術的保護手段の回避により可能となり、又はその結果に障害が生じないようになった複製を、その事実を知りながら行う場合」
上記の典型的な例としては、いわゆるコピープロテクションが解除されて複製できることを認識した上で録音・録画を行う場合が該当します(例えば、通信販売で購入したコピーガードキャンセラーを使って、本来複製できないはずのDVDソフトを、該当するデジタル式録画機器で、そのような事実を知りながら複製する行為が該当します)。
詳しくは「30条の自由利用(条文解説)」を参照してください。



     Kaneda Copyright Agency
     カネダ著作権事務所


      Home  メール相談  契約マネジメント  文化庁登録マネジメント  侵害対応マネジメントその他
      アメリカ著作権局登録マネジメント  著作権判例エッセンス