実演家の権利(3)(条文解説)

≪送信可能化権≫

著作権法92条の2は、次のように規定しています:
1 実演家は、その実演を送信可能化する権利を専有する。
2 前項の規定は、次に掲げる実演については、適用しない。
91条第1項に規定する権利を有する者の許諾を得て録画されている実演
91条第2項の実演で同項の録音物以外の物に録音され、又は録画されているもの

本条は、実演家が、その実演を「送信可能化」することに関して、一定の場合を除いて、「送信可能化権」という排他独占的権利を有することを規定したものです。「送信可能化権」は、実演家の財産的利益を保護するために創設された「著作隣接権」の1つです(法89条1項6項)。

「送信可能化」とは、いわばインタラクティブ送信(自動公衆送信)の前段階の状態のことで、実際に自動公衆送信があったかどうかを問わず、また、複製(法2項1項15号参照)行為があったかどうかを問わず、サーバーとの関係で一定の行為をすることにより著作物を自動公衆送信し得る状態に置くことを意味します。「送信可能化」については、送信用コンピュータであるところのいわゆるサーバー(著作権法は、これを「自動公衆送信装置」と呼んでいます。)に入力されている情報が公衆からのから求めに応じて自動的に送信される点に着目して、サーバーとの関係においてその利用態様を規定しています。具体的には、次のような行為によって「送信可能化」が起こります(2条1項9号の5・イロ):
(イ) ネットワーク(電気通信回線)に接続されている状態にあるサーバー(自動公衆送信装置)に情報を記録・入力等(いわゆるアップロード)する行為。
(ロ) 情報が記録され又は入力された状態にある、ネットワークに接続されていないサーバーをネットワークに接続する行為。
なお、送信可能化に続く「送信行為」(自動公衆送信)には、実演家の権利は認められていません。そのため、実際の送信行為の回数に応じた使用料の支払いといったシステムを実演家が希望する場合には、送信可能化を許諾する際の契約においてその旨の条項を入れておくべきでしょう。

適法に作成された録画物(2項2号の場合は録音物又は録画物)による実演の送信可能化に対しては、実演家の送信可能化権は及びません(2項)。この「適法に作成された録画物」(2項2号の場合は録音物又は録画物)には、録画権を有する者(実演家)から許諾を得て作成(録画)されたもの(1号)と、録音権・録画権を有する者(実演家)の許諾を得ずに増製することが許される映画の増製物(法91条2項)に録音・録画されているもの(2号)が含まれます。一方、実演家の許諾を得て「録音」されている実演については、送信可能化権が及ぶ点に注意してください。例えば、ある放送局が放送とインターネット放送に同じレコード(実演家の許諾を得て録音されたもの)を利用する場合、放送・有線放送する際にはあらためて実演家の許諾を得る必要はありませんが(92条2項2号)、サーバーにアップロードする際にはあらためて実演家の送信可能化権の許諾を得なければなりません。

≪譲渡権(法95条の2)≫

実演家は、その実演をその録音物又は録画物の譲渡により公衆に提供する権利を専有する、されています(法95条の2・1項)。これは実演家の「譲渡権」を明示した規定ですが、同条では、適法な譲渡により譲渡権が消尽すること(2項、3項)も併せて規定されています。

譲渡権は「公衆」に実演の録音物又は録画物を譲渡する権利ですから、「公衆」以外の者、すなわち特定少数の者(法2条5項参照)への譲渡行為は、そもそも譲渡権の射程範囲外の行為であり、そこに譲渡権が及ぶことはありません。
譲渡権は、国の内外を問わずいったん適法に譲渡された実演の録音物又は録画物について、その後さらにそれを公衆に譲渡する行為には及びません(3項各号)。これを、「譲渡権の消尽」(いわゆる‘ファースト・セール・ドクトリン;the first sale doctrine)といいます。適法な譲渡後に譲渡権の消尽を認めることは、国際的にも了解されています(WIPO実演及びレコード条約8(2)参照)。
なお、譲渡権が消尽したか否かは、実演が収録された有体物(録音物又は録画物)の1つ1つについて判断されるものであって、ある録音物又は録画物について譲渡権が消尽したからといって、いまだ適法に公衆への譲渡が行われていない別の録音物又は録画物について自動的に譲渡権が消尽するものではありません。注意してください。

≪貸与権(法95条の3第1項)/報酬請求権(同条第3項)≫

著作権法95条の3は、実演家がその実演を「商業用レコード」(2条1項7号参照)の貸与により公衆に提供することに関し、商業用レコードの最初の販売後短期間にのみ働く排他独占的権利(貸与権)を有すること、並びに、当該期間が経過した後は、貸レコード業者は当該実演に係る実演家に相当な額の報酬を支払うべき旨等を規定しています。

まず、実演家は、その実演をそれが録音されている商業用レコードの貸与により公衆に提供する権利を専有する、とされています(同条1項)。これは実演家の「貸与権」を明示したものですが、貸与権は「公衆」に商業用レコードを貸与する権利ですから、「公衆」以外の者、すなわち「特定少数」の者(2条5項参照)への貸与行為にはそもそも貸与権は働きません。
貸与権の中心的な概念である「貸与」には、いずれの名義又は方法をもってするかを問わず、貸与と同様の使用の権原を取得させる行為(つまり、実質的に貸与と同視しうる行為)を含むとしています(法2条8項)。例えば、次のような行為は、通常、「貸与」に該当するものと解されます。
(e.g.)レンタルCD商業用レコードショップ(貸レコード業者)が利用者にCDを売却し、数日後に一定の買戻し料(実質的にはレンタル料)を差し引いて買い戻す行為。
(e.g.)会員組織にしてCD商業用レコード)を共同購入したという形をとり、会員はレンタル料程度の会費を主催者であるレンタルCDショップ(貸レコード業者)に支払う行為。

上記の貸与権は、「最初に販売された日から起算して1月以上12月を超えない範囲内において政令で定める期間を経過した商業用レコード」(これを「期間経過商業用レコード」と呼んでいます)の貸与による場合には適用しないとする扱いがされています(2項)。貸与権の保護期間は、実演家に対する他の著作隣接権と同様に、その実演を行った時から50年ですが(法101条参照)、貸与権に関しては、2項の規定によって、これを実際に行使することができる期間が商業用レコードの最初の販売日から起算して12月間に限定されることになります(著作権法施行令57条の2参照)。この「12月」の起算点は、複製されているレコードのすべてが同一である商業用レコードは、これをまとめて(一括して)同じ商業レコードと捉えて、その最初の発売(販売)日であると解されます。

商業用レコードの公衆への貸与を営業として行う者(「貸レコード業者」)は、期間経過商業用レコードの貸与により実演を公衆に提供した場合には、当該実演(著作隣接権の存続期間内のものに限る。)に係る実演家に相当な額の報酬を支払わなければなりません(3項)。これが、いわゆる、実演家に認められている「期間経過商業用レコードの貸与に対する報酬請求権」です。この規定によって、最初の発売後12月を経過して貸与権が行使できなくなった後でも、著作隣接権の存続期間内に貸レコード業者が公衆に対して行った商業用レコードの貸与に対しては、当該実演に係る実演家に「相当な額の報酬」を受ける権利が認められることになります。

上記の報酬請求権は、実演家の二次使用料を受ける権利の場合(法95条5項)と同様には、「国内において実演を業とする者の相当数を構成員とする団体(その連合体を含む。)でその同意を得て文化庁長官が指定するもの」(現在この指定を受けている団体は、「(社)日本芸能実演家団体協議会」(いわゆる「芸団協」)です。)があるときは、当該団体によって「のみ」行使することができるものとされています(4項)。当該報酬の支払いを実効性のあるものとするために設けられたものと解されます。これに対し、「貸与権を有する者の許諾に係る使用料を受ける権利」については、上記の指定団体によって「行使することができる」(当該指定団体を通して権利行使するシステムを採用することも可能であるということ)と規定されています(5項)

≪その他:二次使用料請求権(法95条1項)≫

著作権法95条1項は、放送事業者及び有線放送事業者は、録音権を有する者の許諾を得て実演が録音されている「商業用レコード」を用いた放送又は有線放送を行った場合(営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金を受けずに、当該放送を受信して同時に有線放送を行った場合を除く。)には、当該実演(著作隣接権の存続期間内のものに限る。)に係る実演家に「二次使用料」を支払わなければならない、と規定しています。
上記の規定は、「商業用レコード」(法2条1項7号参照)が通常予定している範囲を著しく超えてその利用の影響が及ぶ「放送」及び「有線放送」について、実演が録音されている商業用レコードを用いた放送又は有線放送が行われた場合に、一定要件のもとで、当該実演に係る実演家に「二次使用料」を受ける権利を認めるために設けられたものです。このような権利を創設した趣旨は、「労働者としての実演家のいわゆる機械的失業に対する補償の意味があった」と解されます。平たく言えば、実演が録音されている商業用レコードが放送又は有線放送で使用されると、その分だけ当該実演を行っている実演家の生演奏の機会を奪うことになるため、その「補償」の意味合いを込めて創設された権利だということです。
非営利かつ無料で行われる有線放送による放送の同時再送信の中で実演が録音されている商業用レコードが使われても、それに対しては、有線放送事業者は二次使用料の支払い義務を負うことはありません(1項かっこ書)。

以上のような「二次使用料を受ける権利」は、「国内において実演を業とする者の相当数を構成員とする団体(その連合体を含む。)でその同意を得て文化庁長官が指定するもの」(現在この指定を受けている団体は、「(社)日本芸能実演家団体協議会」(いわゆる「芸団協」)です。)があるときは、当該団体によってのみ行使することができる、とされています(同条5項)。当該二次使用料の支払いを実効性のあるものとするために設けられたものと解されます。



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