アメリカ著作権制度の全体像(2)

米国(連邦)著作権法の優先的適用(preemption

(注)ここでは、わかりやすくするために、<preemption>を「優先的適用」と訳しましたが、これを「先占」・「専占」などと訳す専門家もいます。

ところで、連邦制を採用する米国においては、著作権の保護について、連邦法レベルでの保護と各州法(制定法及びコモンロー)レベルでの保護という二元的構造が存在するという特色があります。かかる法システムを採用する場合、両者の適用関係をどうするのか、つまり、ある著作物を保護する場合に、連邦法を優先するのか各州法を優先するのか等について明確にしておく必要があります。この点、米国著作権法(連邦制定法)は、著作権の保護に関しては、原則として、連邦法が優先的に適用される旨を明確に定めています(301条(a))。このような、連邦法と各州法との適用関係の処理は、合衆国憲法第6編第2項(最高法規性)に由来するものです。

(参考)米国(連邦)著作権法
§ 301. Preemption with respect to other laws
(a) On and after January 1, 1978, all legal or equitable rights that are equivalent to any of the exclusive rights within the general scope of copyright as specified by section 106 in works of authorship that are fixed in a tangible medium of expression and come within the subject matter of copyright as specified by sections 102 and 103, whether created before or after that date and whether published or unpublished, are governed exclusively by this title. Thereafter, no person is entitled to any such right or equivalent right in any such work under the common law or statutes of any State.
301条[他の法律に対する優先的適用]
(a) 1978年1月1日以後は、著作者が作成した著作物であって、有形的表現媒体に固定され、かつ、102条及び103条に規定された著作権の対象の範囲内にある著作物に対する、106条に規定された著作権の一般的な範囲内にある排他的権利に相当する普通法[一般法]上の又は衡平法上のすべての権利は、当該著作物が当該日の前に創作されたか後に創作されたかを問わず、また、当該著作物が発行されているか未発行であるかを問わず、本編によって排他的な規制を受ける。その後は、いかなる者も、コモンロー又は州の制定法に基づく上記著作物に対する上記の権利又はこれに相当する権利を受けることができない。

ここで、もう少し<preemption, pre-emption>という用語について解説しておきます。
今手元にある一般的な英英辞典を引いてみると、<the opportunity given to one person or group to buy goods, shares, etc.>(「ある人又はグループに与えられる、商品・株等を購入する機会」)と説明されています。もともとは、ラテン語の<praeemere>の名詞形に当たる<praeemption>が語源で、<prae>とは<in advance>(「前もって、あらかじめ」)を意味し、一方、<emere><buy>(「買う」)を意味します。したがって、<pre-emption><preemption>も同じ)は、一般的には、「(商品や株券などの)先買権・優先買取権」<the right to buy something before anybody else;the right to gain an advantage before anybody else.>という意味で使われます。
上記の意味とは別に、連邦制を採用するアメリカ合衆国では、「連邦議会がある分野に関して法律(連邦法)を制定すると、当該連邦制定法は、各州法に優先することになり、当該連邦制定法が当該分野を占有[先占]することが明らかであれば、州政府は、もはや当該分野で当該連邦制定法と抵触する立法をなし得なくなるという原則」<the rule of law that if the federal government through Congress has enacted legislation on a subject matter it shall be controlling over state laws and/or preclude the state from enacting laws on the same subject if Congress has specifically stated it has "occupied the field."; the doctrine asserting that in legislation on the same subject, federal legislation takes supremacy over state or local laws.>という意味で使われる場合があります。このような連邦制定法と各州法との法の適用関係の処理に関する原則は、前述しましたように合衆国憲法の最高法規性の要請<the doctrine coming from the Supremacy Clause of the United States Constitution.>するところです。

(参考)
U.S. Constitution, Article Ⅵ, Section 2
This Constitution, and the Laws of the United States which shall be made in Pursuance thereof… shall be the supreme Law of the Land; and the Judges in every State shall be bound thereby, any Thing in the Constitution or Laws of any State to the Contrary notwithstanding.
アメリカ合衆国憲法第6編第2項
この憲法及びこれに従って制定される合衆国の法律は、…国家の最高法規とする。各州の裁判官は、これらに反対する定めが各州の憲法又は法律にある場合でも、これらに拘束される。

知的財産権の保護区分(代表例)
連邦法による保護
…著作権、特許、商標。
各州法による保護…「未固定」の著作物、商品・サービスの出所等の不正表示(不正競争法(
unfair competition law)による保護)、トレード・シークレット(trade secret)、パブリシティ権(right of publicity)、未利用のアイディア(undeveloped idea)等。
著作権による保護は、以前は、「未発行」段階の著作物は各州法(コモンロー)により保護し、著作物の「発行」後は、連邦制定法である米国著作権法により保護するという仕組みが存在していましたが、現行著作権法(1976年法)のもとでは、発行未発行の別を問わず、連邦著作権法によって一元的に保護が図られる仕組みになっています。これを宣言している規定が、上述した米国著作権法301条(a)です。
もう少し敷衍すると…1978年1月1日以後においては、「有形的表現媒体に固定された、著作者が作成した著作物であって、102条及び103条に規定する著作権の対象の範囲内にある著作物」における「106条に規定する著作権の一般的な排他的権利に相当するあらゆる権利(衡平法上の権利を含む)」に関しては、発行されているか否かにかかわらず、連邦制定法である「本編」<this title = 米国著作権法のこと>によって「排他的に」<exclusively>に規律されることになります。すなわち、原則として、連邦法である米国著作権法の保護対象になっている著作物についての一般的な排他的権利を州法で規制することはできないということです。もっとも、連邦法である米国著作権法のいかなる規定も、例えば、米国著作権法102条又は103条の範疇に属さない対象物、有形的表現媒体に「固定されていない」著作物、一般的な排他的権利のいずれにも「相当しない」権利を侵害する活動などに対する州法における保護を無効とするものでありません(301条(b)参照)。

「コモンロー上の著作権」<common law copyright>とは?
「コモンロー上の著作権」の意義については、論者によってニュアンスの相違があります。「自然権」<a natural right>の一種として、「著作物の発行を永久的にコントロールし得る権利」<a perpetual right to control the publication of one’s work.>と捉える論者もいます。ここでは、主として、「未発行」の著作物に係る、著作者が当該著作物の最初の発行をコントロールしうる権利と限定的に解釈しておきます。このような解釈の下では、「コモンロー上の著作権」は、いわゆる「第一発行権」<the right of first publication>とほぼ同義になると解されます。
現行著作権法(1976年法)以前においては、各州におけるコモンロー上の著作権(第一発行権)の保護と、発行後の著作物に対する連邦制定法による保護という枠組みが存在していました。これは、1909年制定の連邦著作権法の下では、「発行」されているか否かが連邦制定法による保護の大きなメルクマールとされていたため、「未発行」の著作物に対する保護は、主として各州においてコモンローによって保護しようとしていたものと考えられます。しかしながら、現行著作権法(1976年法)の下では、連邦制定法による保護は、「発行」ではなく、「固定」されているか否かがメルクマールとされたため、現在では、著作権による保護は、発行未発行を問わず、原則として連邦制定法である米国著作権法による一元的な規制を受けることになります。




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