著作権の移転

≪「著作権の移転」の意味

まず、用語の意味を正確に把握することからはじめましょう。米国著作権法上「著作権の移転」という用語からして、わが国のそれとは内容を異にするからです。
ここで「著作権の移転」<a transfer of copyright ownership>とは、著作権又は著作権に含まれる排他的権利のいずれかについての「譲渡」<an assignment>、その「抵当[譲渡担保]設定」<a mortgage>、「独占的使用許諾」<an exclusive license:第三者に重ねて許諾しないことを約束するもの>その他の移転、譲渡又は担保設定(時間的又は地域的制限の如何を問わない。)をいい、「非独占的な使用許諾」<a nonexclusive license:第三者の使用との併存を認めるもの>については、これを含まないこととされています(101条)。米国著作権法の下では、「移転」の概念の中に、「独占的使用許諾」を含めている点が日本とは大きく異なりますので注意を要します。

(参考)米国著作権法上の「著作権の移転」の定義:
A “transfer of copyright ownership” is an assignment, mortgage, exclusive license, or any other conveyance, alienation, or hypothecation of a copyright or of any of the exclusive rights comprised in a copyright, whether or not it is limited in time or place of effect, but not including a nonexclusive license.
(対訳)
「著作権の移転」とは、著作権又は著作権に含まれる排他的権利のいずれかについての譲渡、その抵当[譲渡担保]設定、独占的使用許諾その他の移転、譲渡又は担保設定をいい、それが効力の点で時間的又は地域的に制限されているか否かを問わないが、非独占的な使用許諾である場合には、これを含まない。

≪著作権の移転と帰属≫

米国著作権法はその201条(著作権の帰属:Ownership of copyright)の(d)で「著作権の移転」について次のように規定しています:
(d) Transfer of Ownership. —
(1) The ownership of a copyright may be transferred in whole or in part by any means of conveyance or by operation of law, and may be bequeathed by will or pass as personal property by the applicable laws of intestate succession.
(2) Any of the exclusive rights comprised in a copyright, including any subdivision of any of the rights specified by
section 106, may be transferred as provided by clause (1) and owned separately. The owner of any particular exclusive right is entitled, to the extent of that right, to all of the protection and remedies accorded to the copyright owner by this title
.
(対訳)
(d) 著作権の移転―
(1) 著作権は、あらゆる手段による譲渡又は法の作用によって、その全部又は一部を移転することができ、さらに、遺言によって遺贈し又は無遺言相続法によって人的財産[権利]として移転することができる。
(2) 第106条に規定する細分化された諸権利を含めて、著作権に含まれるいかなる排他独占的権利も、上記第(1)項に規定するとおりに移転し、また、個別に保有することができる。特定のいかなる排他独占的権利の保有者も、当該権利の範囲内において、本編が著作権者に与えるすべての保護及び法的救済を受ける権利がある。

著作権は、その「全部」<in whole>又は「一部」<in part>を移転することができます(201条(d)(1))。この点は、わが国も同様です(著作権法61条1項参照)。
著作権の譲渡を受けた者や独占的使用許諾を受けた者は、単独で著作権の侵害訴訟を提起することができますが、非独占的使用許諾を受けたに過ぎない者は著作権侵害訴訟における当事者適格を有さないと解されます(201条(d)(2)参照)。

著作権は、その客体である著作物が表現されている「有体物」の所有権とは別個の権利です。この点、米国著作権法では、条文を設けて明確に述べています(202条)。したがって、著作物が最初に固定されたコピーやレコードを含めて、有体物(の所有権)の移転(売買等)が行われても、それだけでは、当該有体物で表現されている著作物に対する著作権が移転されたことにはなりません。また、逆に、合意がない限り、著作権の移転があったからといって、直ちに著作物が表現されている有体物に対する所有権まで無条件で移転するものではありません。
わが国でも、以上と同様に解されますが、著作権法にはそれを明示した規定はありません。最高裁の判例として確立した解釈があります(「顔真卿自書告身帳事件」参照)。

(参考)米国著作権法202条(有体物の所有権とは別個の著作権):
§ 202. Ownership of copyright as distinct from ownership of material object
Ownership of a copyright, or of any of the exclusive rights under a copyright, is distinct from ownership of any material object in which the work is embodied. Transfer of ownership of any material object, including the copy or phonorecord in which the work is first fixed, does not of itself convey any rights in the copyrighted work embodied in the object; nor, in the absence of an agreement, does transfer of ownership of a copyright or of any exclusive rights under a copyright convey property rights in any material object.
(対訳)
著作権又は著作権に基づくいかなる排他独占的権利も、その著作物が収録されている有体物の所有権とは別個のものである。その著作物が最初に固定されたコピー又はレコードを含めて、いかなる有体物の所有権の移転も、それ自体では[自動的に]、当該有体物に収録されている著作権のある著作物に対するいかなる権利をも移転するものではない。また、合意がない場合には、著作権又は著作権に基づく排他独占的権利の移転は、有体物に対する財産権を移転するものではない。

≪著作権の移転のやり方その他≫

アメリカにおいては、わが国とは異なり、「著作権の移転」に「著作権者の署名の入った書面」<an instrument in writing and signed by the copyright owner>が要求され、これがないと、当該移転は効力を生じないものとされています(204条(a))。すなわち、著作権の移転は、原則として、譲渡証書又は移転の覚書若しくは予備的合意書によって「書面化(文書化)」されており、かつ、著作権者又はその適法に授権された代理人によって「署名」されていない限り、効力を有さないものとされています。これは、詐欺的な行為の防止、将来の紛争の未然防止、当事者(特に著作権者)の慎重な行動を促すといった狙いから設けられたものです。当事者双方の署名ではなく著作権者側の署名のみを問題としている点が特徴的です(したがって、著作権者が権利の移転を受ける者に対して一方的に「差し出す」形式の「売渡証」のような書面であっても構いません)。
「非独占的な使用許諾」については、上述しましたように「著作権の移転」という範疇に入りませんので、必ずしも書面によらなくても(口頭だけでも)有効に成立する余地があります(詐欺防止法<Statute of Frauds>に抵触しない限り、ケースによっては黙示による許諾が認定される場面もありえます)。
なお、わが国において著作権の移転が有効となるためには、「署名」はもちろんのこと、そもそも「書面化(文書化)」すら要求されていません(署名や文書がなくても、著作権の移転は有効に生じ得る)。

著作権の移転(証書)は、所定の要件の下、アメリカ連邦著作権局に「登記」<recordation>することができます(205条(a))。この登記は、著作権の移転の効力発生要件ではありませんが、この登記によって(当該著作物について「登録」<registration>がなされていることが前提となります)、登記された文書で述べられている事実に関し、すべての者に対し告知したものと擬制されるという効果が発生します(同条(c))。そのため、著作権移転の登記は、著作権の「二重移転」があった場合に、その優先順位を決定する際の重要な資料になります。すなわち、著作権の二重移転があった場合には、先に移転登記を行った者が優先することになります(205条(d)参照)。

1976年法(現行法)の下では、その施行日(1978年1月1日)以降に締結された権利付与の契約については、一種の法定解除権を創設しています(203条)。すなわち、著作者によって付与される権利移転及び使用許諾は、職務著作物と遺言によるものを除いて、「移転」(譲渡+譲渡担保+独占的使用許諾)のみならず、非独占的な使用許諾をも含めて、所定の要件の下で、契約上の期間に係わりなく、一定期間の経過後に、終了させることができると規定しています。この解除権(終了権)は事前の契約によっても放棄することはできないものと解されます。
(注)1978年1月1日より前(1977年12月31日まで)のものについては304条(c)(d)参照。

1978年1月1日以後のものについてみると、権利付与の終了は、原則として、当該権利付与の実施の日から35年後に始まる5年の期間の間いつでもすることができるものとされ(203条(a)(3))、その終了は、所定の終了権保有者<owners of termination interests>によって署名された書面による事前の通知を、権利付与を受けている(た)者又はその承継人に送達することによって行わなければならないものとしています(同条(a)(4))。
権利付与が終了すると、当該権利は著作者等に復帰することになります(203条(b))が、例えば、「権利付与の終了前に当該権利付与に係る権限に基づいて作成された二次的著作物は、その終了後も、当該権利付与に係る条件に従い、これを引き続き利用することができる。」といった制限を伴う場合があります。




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     カネダ著作権事務所


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