フェア・ユース(1)

フェア・ユース(Fair Use)とは

「フェア・ユース」(Fair Use*)というのは、著作権によって保護されている著作物について、ある一定の状況下で、無許諾の利用を認めることによって、表現の自由を促進する法理**を意味します。
*「公正利用」などと訳されます。
**Fair use is a legal doctrine that promotes freedom of expression by permitting the unlicensed use of copyright-protected works in certain circumstances.

もう少し具体的に言うと、「フェア・ユース(の法理)」とは、他人の著作物をその著作権者の許可を得ずに無断で利用する場合であっても、その利用の目的、著作物の性質、利用される量、著作物の潜在的市場への影響といった各要素(factors)を勘案して、それが「公正な利用」であると言える場合には、そのような利用行為は著作権の侵害とはならない、とする考え方です。これは、米国において長年の相当数の判例を通して確立してきた考え方*であり、第三者の「表現の自由」(合衆国憲法修正第1条)に配慮した考え方でもあります。「フェア・ユース(の法理)」は、米国連邦著作権法において、長い歴史を持つ極めて重要かつ本質的な側面だと一般的に捉えられています。
*Fair use is a judge-created doctrine dating back to the nineteenth century and codified in the 1976 Copyright Act.
**The doctrine of fair use is a longstanding, vital and essential aspect of U.S. copyright law.

≪Harperケース≫

「著作権」(copyright)とは、著作者の作成にかかる創作的な著作物で、有形的表現媒体に固定されたものに対して、合衆国憲法及び米国著作権法を根拠として与えられる排他独占的権利のことで、これには、次の権利が含まれています(米国著作権法106条)。
① 複製権
② 二次的著作物の創作翻案権
③ 頒布権
④ 公の実演権
⑤ 公の展示権
⑥ デジタル音声送信による公の実演権
以上のような著作権を保有する者が「著作権者」(copyright owner, owner of copyright)であり、かかる著作権者が自己の著作物の「複製」や「頒布」等の行為を排他独占的に行えることが著作権法の大原則です。
しかしながら、排他独占的権利である著作権をもって権利者を保護するのみで、著作物の一般大衆による公正な自由利用が全く担保されないのであれば、おそらく、「有用な技芸の発展を促進する」(To promote the Progress of useful Arts―アメリカ合衆国憲法第1編第8項―ことは到底望めないでしょう。
フェア・ユースに関する連邦最高裁判所の代表的なケースであるHarperケース(
HARPER & ROW v. NATION ENTERPRISES)には、次のような判示部分があります。

『(アメリカ合衆国憲法第1編第8項における)この制限された(範囲での排他的権利の)付与[許与]は、重要な公共的目的が達成されうるための1つの手段である。それは、著作者及び発明者に特別な報償(special reward)を与えることによって彼らの創作活動が動機づけられること、並びに、(著作者及び発明者による)その限られた期間での排他独占的な支配が満了した後の、一般公衆による彼らの才能の成果物(著作物・発明)へのアクセスを可能にすることを意図している。』
(原文)
This limited grant is a means by which an important public purpose may be achieved. It is intended to motivate the creative activity of authors and inventors by the provision of a special reward, and to allow the public access to the products of their genius after the limited period of exclusive control has expired.

『著作権によって創設される独占性は、このように、一般公衆の利益に資するために、個々の著作者に与えられている。』
(原文)
The monopoly created by copyright thus rewards the individual author in order to benefit the public.

『著作権によって保護されている著作物の道理にかなった利用に対する当該著作者の同意は、科学[学術]及び有用な技芸の発展を促進させようとする憲法上のポリシーにおいて必要な付随的なことがら[付帯条件・義務]として、裁判所によって常に暗に示されてきた。というのは、もしそのような(道理にかなった)利用を禁止すれば、後に続く作者が先行著作物を基にしてよりすぐれたものを作り出そうする試み[努力]を抑制することになり、そうすると、(憲法が)達成しようとするまさにその目的をくじくことになるからである。
(原文)
The author's consent to a reasonable use of his copyrighted works had always been implied by the courts as a necessary incident of the constitutional policy of promoting the progress of science and the useful arts, since a prohibition of such use would inhibit subsequent writers from attempting to improve upon prior works and thus … frustrate the very ends sought to be attained.

わが国を含めて各国とも、著作(権)者を著作権という排他独占的権利で保護する一方で、著作物の社会による公正な自由利用を確保する方策(著作権の合理的制限)を採用することになるのですが、米国においては、いくつかある制限規定のうちで「フェア・ユースの法理」(the doctrine of fair use, the fair use doctrine)を明文化した107条の規定が最も重要であると考えられています。
前掲のHarperケースには、次のような判示部分があります
『フェアユースとは、伝統的には、「著作権者の同意を得ることなしに、著作権者以外の者が、道理にかなったやり方で、著作権によって保護されている素材を利用する権利」と定義づけられた。著作権法におけるフェアユースの抗弁に関する制定法上の構成は、コモンロー上の法理を成文化しようとする議会の意思を反映している。第107条は、ある特定の利用がフェア[公正]であるかどうかという点に関し、個別事案ごとの決定を要求しており、また、当該規定は、考慮すべき要素として、4つのファクター(必ずしもこの4つだけに限られない。)に注目している。このようなアプローチは、「フェアユースに関して以前から存在していた法理をあらためて述べることを意図したものであって、この法理をいささかでも変え、狭め、若しくは拡大することを狙ったものではなかった。」
(原文)
Fair use was traditionally defined as "a privilege in others than the owner of the copyright to use the copyrighted material in a reasonable manner without his consent." The statutory formulation of the defense of fair use in the Copyright Act reflects the intent of Congress to codify the common-law doctrine. Section 107 requires a case-by-case determination whether a particular use is fair, and the statute notes four nonexclusive factors to be considered. This approach was "intended to restate the pre-existing judicial doctrine of fair use, not to change, narrow, or enlarge it in any way."

≪フェア・ユースの典型例≫

‘The 1961 Report of the Register of Copyrights on the General Revision of the U.S. Copyright Law’(「合衆国著作権法一般改正に関する著作権局長の1961年報告書」)には、次のように、それまでに裁判所がfair useと認定したいくつかの具体的な行為(活動)が挙げられています:
・ 例証又は論評を目的として、批評・評論中に他の著作物の抜粋部分を引用すること。
・ 自説の例証又は明確化を目的として、自身の学術的又は技術的な著作物中に他の著作物の短い節(short passages)を引用すること。
・ パロディーにおける利用。
・ 報道において、簡潔な引用で、演説や記事を要約すること。
・ 損傷個所を取り換えるために、著作物の一部(a portion)を図書館が複製すること。
・ 授業内容を解説するために、著作物のごく一部(a small part)を教師又は生徒が複製すること。
・ 立法又は司法上の手続、又はこれらの報告書において、著作物を複製すること。
・ 報道されているイベントシーンの中にある著作物が、ニュース映画又は放送において、偶発的に又は思いがけなく複製されること。




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