フェア・ユース(2)

≪米国著作権法107条≫

「フェア・ユース(の法理)」とは、他人の著作物をその著作権者の許可を得ず無断で利用する場合であっても、その利用の目的、著作物の性質、利用される量、著作物の潜在的市場への影響といった各「要素」(factors)を勘案して、「公正な利用」(fair use)であると言える場合には、そのような利用行為は著作権の侵害とはならない、とする考え方です。このような考え方は(程度の違いこそあれ)、米国のみならず、各国著作権制度を支える根幹と1つなっているものです。そして、米国において、この法理を明文化したのが米国著作権法107条です。言うまでもなく、米国著作権法においては最も重要な規定の1つです。

≪米国著作権法107条の内容≫

まず、米国著作権法107条の全文とその対訳を紹介します:

§ 107. Limitations on exclusive rights: Fair use
(対訳)
米国著作権法107条[排他独占的権利の制限:フェア・ユース]

Notwithstanding the provisions of sections 106 and 106A, the fair use of a copyrighted work, including such use by reproduction in copies or phonorecords or by any other means specified by that section, for purposes such as criticism, comment, news reporting, teaching (including multiple copies for classroom use), scholarship, or research, is not an infringement of copyright. In determining whether the use made of a work in any particular case is a fair use the factors to be considered shall include —
(1) the purpose and character of the use, including whether such use is of a commercial nature or is for nonprofit educational purposes;
(2) the nature of the copyrighted work;
(3) the amount and substantiality of the portion used in relation to the copyrighted work as a whole; and
(4) the effect of the use upon the potential market for or value of the copyrighted work.
The fact that a work is unpublished shall not itself bar a finding of fair use if such finding is made upon consideration of all the above factors.
(対訳)
106条及び第106条Aの規定にかかわらず、例えば、批評[論評]、解説[論説]、報道、教育(教室における利用のための複数のコピー(の作成行為)を含む。)、学問、又は調査などを目的とする、著作権のある著作物のフェア・ユース[公正利用]は、コピー若しくはレコードへの複製又は第106条に明記するその他の手段による利用を含めて、著作権の侵害とはならない。特定の場合に著作物の利用がフェア・ユースになるか否かを決定する際に考慮されるべき要素には、次のものを含むものとする。
(1) 当該利用の目的及び性質(その利用が商業的性質のものであるか否か、又はその利用が非営利の教育的目的のためのものか否かを含む。)
(2) 著作権のある著作物の性質
(3) 著作権のある著作物全体との関連における、利用されている部分の量及び実質
(4) 著作権のある著作物の潜在的市場又はその価値に対する当該利用の影響
フェア・ユースの認定が上記のすべての要素を考慮してなされる場合には、著作物が未発行であるという事実は、それ自体、当該フェア・ユースの認定を妨げない。

米国著作権法107条は、その柱書において、「例えば、批評[論評]、解説[論説]、報道、教育(教室における利用のための複数のコピー(の作成行為)を含む。)、学問、又は調査などを目的とする、著作権のある著作物のフェア・ユース[公正利用]は、著作権の侵害とはならない」と明記しています。これは、ある著作物の複製等の行為がfair’(「公正な」)であると考えられるためのいくつかの利用目的―「批評[論評]」(criticism)・「解説[論説]」(comment)・「報道」(news reporting)・「教育」(teaching)・「学問」(scholarship)・「調査」(researchを例として掲げたものです。すなわち、これら(の利用目的)は、これまでの判例によって伝統的・一般的にフェア・ユースと認定されるケースが多かったものを例示的に列挙しているに過ぎないと解されます。したがって、フェア・ユースと認められるための利用目的は、上記に限定されるものではありません。

当該柱書では、利用目的の条項に続いて、「特定の場合に著作物の利用がフェア・ユースになるか否かを決定する際に考慮されるべき要素には、次のものを含むものとする」という規定を置き、ある特定の場合におけるuse’(利用)が‘fair’であるか否かを決定するに当たっては、上述した利用目的を含めて、さらに、次の4つのfactors’(要素)が考慮されなければならない旨が明記されています。

フェア・ユースを決定付ける「4つのファクター(要素)」は、次のとおりです:
① 当該利用の目的及び性質(その利用が商業的性質のものであるか否か、又はその利用が非営利の教育的目的のためのものか否かを含む。)

裁判所は、フェア・ユースを主張する当事者が著作権のある著作物をどのように(どのような態様で)利用しているかに注目します。そして、一般的に言うと、その利用が「非営利で教育的な」(nonprofit educational uses)場合又は「営利を目的としない(非商業利な)」(noncommercial uses)場合には、フェア・ユースと認定される可能性が高くなります。もっとも、「非営利で教育的な」利用や「営利を目的としない(非商業的な)」利用であれば常にフェア・ユースと認定されるものでもありません。裁判所は、さらに、「当該利用の目的及び性質」というファクターと他の(3つの)ファクターとのバランス(均衡)を考慮してフェア・ユースの認定を行います。

② 被利用著作物(著作権のある著作物)の性質

このファクターにおいては、主として、利用される著作物(被利用著作物)の創作性(表現性)の程度が考慮・分析されます。例えば、一般的には、小説、映画、音楽のような「より創作的で想像力豊かな著作物」(a more creative or imaginative work)を利用する場合よりも、技術論文や報道記事のような「事実的な著作物」(a factual work)を利用する場合の方がフェア・ユースの認定を受けやすくなるという傾向があります。また、「未発行の著作物」(an unpublished work)を利用する場合には、すでに発行されている著作物を利用する場合に比べて、フェア・ユースの認定が下されにくいという傾向があります。

③ 被利用著作物(著作権のある著作物)全体との関連における、その利用されている部分の量及び実質

このファクターの下では、裁判所は、利用される著作物(被利用著作物)の「量」(quantity)と「(実)質」(quality)に注目します。そして、一般的には、被利用著作物の素材を多く利用する方が、そうでない場合に比べて、フェア・ユースの認定が下されにくいという傾向があります。といっても、被利用著作物の全部の素材を利用する場合であって、特定の状況下においてはそれがフェア・ユースとして認定される可能性が排除させるわけではありません。逆に、ある作品の「少量」(a small amount)を利用する場合であっても、その部分が当該作品の「核」(heart)になるような重要な部分であれば、フェア・ユースと認定される可能性は低くなります。

④ 被利用著作物(著作権のある著作物)の潜在的市場又はその価値に対する当該利用の影響

このファクターの下では、裁判所は、無許諾の利用が、被利用著作物にとっての現に存在しているあるいは将来存在する市場を害するのか否か、(害するとして)その程度いかんを検討します。より具体的には、例えば、無許諾の利用にかかる商品の販売が現にオリジナルの商品(被利用著作物)を市場から排除してそれに代わるものとして市場に存在しているのか、あるいは無許諾の利用にかかる商品が将来的に市場に行き渡った場合にそれがオリジナルの商品(被利用著作物)(の市場や価値)を実質的に損なうことにならないか等が主要な検討課題となります。

以上見てきたの4つのファクターは、それぞれが個別に検討され(場合によっては、別の新たなファクターが考慮されることもありえます。)、それらの検討結果を総合的に判断して、「ケースバイケースに」(on a case-by-case basis)フェア・ユースの認否がなされることになります。つまり、フェア・ユースの認定には、あらかじめ決められた「公式」(例えば、「作品の〇〇%(〇〇行)まではフェア・ユースとして無許諾で自由に使える」といった公式)はありません。あくまで特定の事実認定から当該利用がフェア・ユースと言えるかどうかが個別具体的に検討されるのです。
なお、以上のすべての要素を考慮してフェア・ユースが認定される場合には、著作物が「未発行」(unpublished)であるという事実自体は、かかるフェア・ユースの認定を妨げる要因とはなりません。

著作権者の許諾を得ることなく自由利用が可能になるフェア・ユースと著作権侵害行為とを明確に区別することは非常に難しく(例えば、上述したように、著作権者の許諾なしに引用できる単語数や行数等があらかじめ決まっているわけではない。)、その境界線も未だ不明確な部分が多いといえます。他人の著作物を最も安全かつ確実に利用する方法は、当該著作物の著作権者から明示的な利用の許諾を受けることです。フェア・ユースによる許諾なしの自由利用を当てにすることは、ある意味では危険な行為といえるでしょう。ある著作物について権利者からの許諾を得ることができないのであれば、フェア・ユースに該当することが明らかでない限り、その利用を控えるべきです。
なお、アメリカ著作権局は、ある行為がフェア・ユースに該当するか否か等に関する決定を行うことも、それについてのアドバイスをすることもできません。107条において4つのファクターが明示され、判断基準が一応示されていますが、最終的には、個別具体的ケースについて、ケースバイケースで裁判所によってフェア・ユースの認否が行われることになるという点を最後にもう一度強調しておきます。




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