Community for Creative Non-Violence v. Reid, 490 U.S. 730(1989)
(職務著作物性が争われた代表的なケース)

CCNVケースの概要

CCNVthe Community for Creative Non-Violence)(本ケースの原告)は、ワシントンD.C.にその拠点を置き、ホームレスの撲滅運動に専心している(法人格のない)非営利団体です。CCNVは、1985年秋に、彫刻家である被告(Reid)と、ホームレスの窮状を劇的に表現するような彫像(その年ワシントンで行われるクリスマス・ページェントの展示に用いる像:タイトル"Third World America"(第三世界アメリカ))の制作について、口頭による契約(an oral agreement)を結びました(文書に署名することはありませんでした)。この際、どちらからも彫像の著作権に関する話は出ませんでした。メリーランド州ボルティモアにあるReidのスタジオで彼が彫像の制作をしている間、CCNVのメンバーが、制作の進捗状況をチェックしたり、CCNV作成にかかる彫像の台座との調整を行うために、頻繁に彼のもとを訪ねました。Reidは、彫像の輪郭や外観に関するCCNVサイドの提案や指示のほとんどを受け入れていました。完成した彫像がワシントンに運ばれた後、CCNVは、取り決められていたReidに対する制作報酬の最終的な支払い(分割払いの最後)を済ませ、その彫像を台座に乗せ、予定通り、ページェントで展示しました。当事者(CCNVReid)は、それ以前に度も、当該彫像に関する著作権(の帰属)について話し合いをしたことがありませんでした。その後、両者が当該彫像の著作権について著作権主張の登録を申請したことから、当該彫像の著作権の帰属等をめぐって、裁判問題に発展しました。

連邦地方裁判所は、当該彫像についてその職務著作物性(米国著作権法101条)を肯定し、その著作権はCCNVに帰属する(米国著作権法201(b))と認定しました。ところが、控訴裁判所においては、一転、当該彫像の職務著作物性が否定され、当該彫像の著作権はReidに帰属すると認定しました。その要点は、次の2点です:当該彫像は、エイジェンシー法(agency law)の下、独立業務請負人(an independent contractor)としてのReidの立場(地位)に照らすと、「被用者の職務の範囲内で、その被用者によって作成された」(101(1))ものではないから、職務著作物に該当しない、彫刻は、101(2)に列挙されている「特別に(制作の)注文又は委託がなされる」著作物の9つのカテゴリーのいずれでもなく、また、当事者は、当該彫像を職務著作物とする旨の文書による合意をしていなかったのであるから、101(2)の要件も満たしておらず、いずれにしても当該彫像は職務著作物に該当しない。

重要判示部分

>原告は、当該彫像が101(2)の要件を満たしていると主張しているのではない。当該彫像がその要件を満たしていないことは明白である。彫刻は、当該条項に列挙されている「特別に(制作の)注文又は委託がなされる」著作物の9つのカテゴリーのいずれにも該当せず、さらに、「第三世界アメリカ」を職務著作物とする書面による合意は一切なされていない。

Petitioners do not claim that the statue satisfies the terms of 101(2). Quite clearly, it does not. Sculpture does not fit within any of the nine categories of "specially ordered or commissioned" works enumerated in that subsection, and no written agreement between the parties establishes "Third World America" as a work for hire.

>本ケースにおいて扱い得る問題は、「第三世界アメリカ」が101(1)の下で「被用者の職務の範囲内で、その被用者によって作成される著作物」に当たるかどうかという点である。連邦著作権法は、これらの用語(「被用者」・「職務の範囲」等)について定義付けを行っていない。そのような指針(定義)がないため、これまで4つの法解釈がなされてきてきる。第1番目の考え方は、使用する者(the hiring party管理人注:本ケースにおいて、職務著作物の法理によって著作権の帰属を主張する当事者を意味する。以下同じ。が当該作成物をコントロールする権利(the right to control the product)を保持している場合には常に当該作成物(著作物)は被用者によって作成されたものとして職務著作物に該当すると解釈するもの。原告は、この見解を取っている。2番目は、第1番目の見解に非常に近いものだが、使用する者がある特定の作成物(著作物)の創作に関して実際に(現に)コントロールを及ぼしているときには、当該作成物(著作物)は101(1)の被用者によって作成されたものとして職務著作物に該当すると解する見解管理人注:原告は、この見解も一部主張した… 3番目の見解は、101(1)の「被用者」という用語は、そのコモンロー上のエイジェンシー法における意味(common-law agency law meaning)を有すると捉える解釈。最後が、被告及び多くの法廷助言人(amici curiae)が主張しているように、「被用者」という用語は「給与が支払われている、正規の」従業員のみを意味すると解する見解である管理人注:本ケースにおいてアメリカ著作権局長は法廷助言人としてこの4番目の見解を提示した

The dispositive inquiry in this case therefore is whether "Third World America" is "a work prepared by an employee within the scope of his or her employment" under 101(1). The Act does not define these terms. In the absence of such guidance, four interpretations have emerged. The first holds that a work is prepared by an employee whenever the hiring party retains the right to control the product. … Petitioners take this view. A second, and closely related, view is that a work is prepared by an employee under 101(1) when the hiring party has actually wielded control with respect to the creation of a particular work. … A third view is that the term "employee" within 101(1) carries its common-law agency law meaning. … Finally, respondent and numerous amici curiae contend that the term "employee" only refers to "formal, salaried" employees. …

>制定法を解釈する際の出発地点は、常にその文言である。連邦著作権法は、その中で「被用者」又は「職務の範囲」という用語の定義付けを一切行っていない。しかしながら、「連邦議会がコモンローの下で定着した意味を積み上げている[一般的な意味を確立させている]用語を使用する場合には、裁判所としては、当該制定法が別の意味付けをしていない限り、連邦議会は当該用語のその確立した意味を(制定法の中に)組み込むつもりであったと推察しなければならない。従来(これまで)、連邦議会が定義付けを行うことなく「被用者」という用語を使用する場合、当裁判所としては、連邦議会は、コモンロー上のエイジェンシー法理(common-law agency doctrine)によって理解されているところの伝統的[慣習的]な主人[使用者]と召使い[被用者]との関係(the conventional master-servant relationship管理人注:この関係は、いわゆるmaster-servant doctrine(respondeat superior) =被用者がその「職務の範囲内」(scope of employment)での行為により他人に与えた不法行為に対する使用者責任を念頭においている。を表現する意図であったと、われわれは結論づけている。職務著作物の規定中のどこにも、連邦議会が、「使用者と被用者との伝統的な関係」以外の別の意味を述べるために「被用者」及び「職務」ということばを使用したことを示す内容(文言)は存在しない。それどころか、エイジェンシー法における意義を組み入れようとする連邦議会の意思が、101(1)の用語の使われ方、すなわち、エイジェンー法の下で広く使用されている「職務の範囲」(scope of employment)という用語法によって示唆されている。

The starting point for our interpretation of a statute is always its language. The Act nowhere defines the terms "employee" or "scope of employment." It is, however, well established that "where Congress uses terms that have accumulated settled meaning under . . . the common law, a court must infer, unless the statute otherwise dictates, that Congress means to incorporate the established meaning of these terms." In the past, when Congress has used the term "employee" without defining it, we have concluded that Congress intended to describe the conventional master-servant relationship as understood by common-law agency doctrine. … Nothing in the text of the work for hire provisions indicates that Congress used the words "employee" and "employment" to describe anything other than "`the conventional relation of employer and employee.' … On the contrary, Congress' intent to incorporate the agency law definition is suggested by 101(1)'s use of the term, "scope of employment," a widely used term of art in agency law.

>制定法における法解釈についての過去のケースの中で、連邦議会が、「被用者」、「使用者」及び「職務の範囲」のような用語をエイジェンシー法に照らして理解されるよう意図していたと当裁判所が結論づけるとき、われわれは、これらの用語の意味を解釈するのに、ある特定の州におけるエイジェンシー法というより、コモンロー上の一般的なエイジェンシー法を論拠としてきた。このようなやり方は、「連邦制定法は、一般的に、法律を全米に一様に[画一的に]適用するよう意図されている」という事実を反映している。連邦著作権法が広い範囲で州の制定法及びコモンロー上の著作権に係る規制に先占(preemption)することによって管理人注:連邦著作権法301(a)参照、全米規模の統一された著作権法を創造するという当該制定法の明確な目的を考え合わせれば、州のエイジェンシー法を論拠とするよりは、連邦レベルでのエイジェンシー法のルールを定着させる方が、とりわけここでは適切である。それゆえ、当裁判所は、「被用者」の用語はコモンロー上の一般的なエイジェンシー法に照らして理解されるべきであるとする控訴裁判所の見解に同意する。

In past cases of statutory interpretation, when we have concluded that Congress intended terms such as "employee," "employer," and "scope of employment" to be understood in light of agency law, we have relied on the general common law of agency, rather than on the law of any particular State, to give meaning to these terms. … This practice reflects the fact that "federal statutes are generally intended to have uniform nationwide application." Establishment of a federal rule of agency, rather than reliance on state agency law, is particularly appropriate here given the Act's express objective of creating national, uniform copyright law by broadly pre-empting state statutory and common-law copyright regulation. We thus agree with the Court of Appeals that the term "employee" should be understood in light of the general common law of agency.

>要するに、われわれは、原告の主張を退けなければならない。制作を委託した作品(著作物)を、当該作品をコントロールする権利を使用する者が有していること又は当該作品を使用する者が実際にコントロールしたことを論拠に、被用者による職務著作物に変えてしまうことは、職務著作物に関する規定の文言、構成そして制定の歴史(経緯)のいずれとも一致するものではない。ある作品(著作物)が職務著作物であるか否かを決定するためには、裁判所は、まず第一に、コモンロー上の一般的なエイジェンシー法の原則を用いて、当該作品が被用者又は独立業務請負人のいずれによって作成されたかということを確かめなければならない。そして、この決定がなされた後、裁判所は、101(1)又は(2)のいずれかふさわしい規定を適用することができるのである。

In sum, we must reject petitioners' argument. Transforming a commissioned work into a work by an employee on the basis of the hiring party's right to control, or actual control of, the work is inconsistent with the language, structure, and legislative history of the work for hire provisions. To determine whether a work is for hire under the Act, a court first should ascertain, using principles of general common law of agency, whether the work was prepared by an employee or an independent contractor. After making this determination, the court can apply the appropriate subsection of 101.

>最後に、Reidによる「第三世界アメリカ」の制作に対する101条の適用について、話を移すことにする。使われる者(a hired party)がコモンロー上の一般的なエイジェンシー法の下での「被用者」に当たるか否かを決定するに際して、われわれは、作品が完成される際の態様及び手段に対して使用する者がそれらをコントローする権利を考慮する。この問題に係わるその他の要因(考慮事項)としては、次のものがある;(当該作品の完成に)必要とされる技術[技能]、器具や道具類の出所、作業場所、当事者の関係が継続した期間、使用する者が使用される者に対して追加的なプロジェクトを割り当てる権限を有しているかどうか、いつどのくらいの時間作業するかの決定に関して使われる者が持つ裁量の程度、賃金の支払い方法、アシスタントの雇用及びその者への賃金の支払いに際しての使われる者の役割、当該作品(の制作)が使用する者の通常の業務の一部といえるかどうか、使用する者が事業を行う者であるかどうか、被用者の諸手当てに関する規定、そして、使われる者の税金の取り扱い。もっとも、以上のいずれか1つが決定的な要因になるというわけではない(いずれの要因も決定的なものではない)。

We turn, finally, to an application of 101 to Reid's production of "Third World America." In determining whether a hired party is an employee under the general common law of agency, we consider the hiring party's right to control the manner and means by which the product is accomplished. Among the other factors relevant to this inquiry are the skill required; the source of the instrumentalities and tools; the location of the work; the duration of the relationship between the parties; whether the hiring party has the right to assign additional projects to the hired party; the extent of the hired party's discretion over when and how long to work; the method of payment; the hired party's role in hiring and paying assistants; whether the work is part of the regular business of the hiring party; whether the hiring party is in business; the provision of employee benefits; and the tax treatment of the hired party. No one of these factors is determinative.

≪管理人コメント

本ケースでは、以上のような要因に照らして具体的な状況を検討し、Reidは、CCNVの被用者ではなく、独立業務請負人であったと認定しました。そして、最終的な結論として、当該彫像は101(2)の要件も満たしていないため、職務著作物に該当せず、よって、CCNVは、職務著作物の規定を根拠としては「第三世界アメリカ」(当該彫像)の著作者でないと認定しました。しかしながら、CCNVが当該彫像についての共同著作者(a joint author)になる可能性があり、その場合にはCCNVReidが当該彫像の共有著作権者になり得ることを示唆しています(201(a)参照)。




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