[c012]著作権管理委託契約の成否が争われた事例
平成14年10月24日東京地方裁判所[平成12(ワ)22624]

【コメント】
本件乙事件における原告の主張は,①被告ピープロは,本件契約中の条項において,本件作品の著作権のうち被告ピープロが原告に譲渡した放送権を除いた部分についての利用管理を委託し,原告がこれを受託した(以下「本件管理契約」という。),②被告Aは,本件管理契約に基づく被告ピープロの債務につき連帯保証した,③しかるに,被告ピープロは,平成13年7月ころ,本件作品のうち「電人ザボーガー」及び「快傑ライオン丸」の登場人物等のキャラクターの商品化権を原告の仲介を経ないでコナミ株式会社に許諾し,これにより一般的な率による仲介料(コミッション)を得る権利を侵害した,というもので す。上記主張に基づき,原告は,被告ピープロに対して本件管理契約の債務不履行として400万円の損害賠償の支払を求めるとともに,被告Aに対して連帯保証債務として同額の支払を求めています。    これに対して,被告ピープロ及び同Aは,本件管理契約は受託条件,費用及び利用方法等の内容が定まっていないから,いまだ契約として成立していないなどと主張して,原告の請求を争っています。
原告は,昭和53年,被告ピープロ,同Aとの間で,「被告ピープロは原告に対し,本件作品の著作権のうち日本国内全域における放送権を譲渡する。」ことを主な内容とする「本件契約」を締結しましたが,その中に次の条項が含まれていました:被告ピープロは,本件作品の放送権の原告への譲渡に関連し,被告ピープロが保有する本件作品の著作権(原告に譲渡した部分を除く)の利用管理を原告に委託し,原告はこれを受諾した。受託条件,費用,利用方法は原告・被告ピープロ間で別途協議して定める(本件契約9条)。

【裁判所の判断】
5 争点7,8(本件管理契約の成否。原告の損害の内容・額)について
(1)前記「前提となる事実等」欄記載の事実によれば,本件契約の9条には,「被告ピープロは,作品の放送権の原告への譲渡に関連し,被告ピープロが保有する作品の著作権(原告に譲渡した部分を除く)の利用管理を原告に委託し,原告はこれを受託した。受託条件,費用,利用方法は原告・被告ピープロ間で別途協議して定める。」と定められている。同条項は,原告と被告ピープロが,受託条件,費用,利用方法を将来別途協議して定めることとしているものであって,これによれば,同条項は,本件作品の著作権に関して,第三者に対して利用を許諾する場合には,その都度,個別に,その対象となる権利の種類・範囲,原告の代理権等の権限の範囲,原告の報酬額,当該著作権の第三者による利用態様等を具体的に合意することを予定しているものと,解するほかはない 。また,本件契約締結後における原告の行動を見ても,原告においては,本件作品に関して,ビデオやレーザーディスク,DVDに収録してレンタルショップにおいて賃貸し,一般消費者に販売することや,登場人物のキャラクターの商品化などの利用を,第三者に対して売り込むなどの行動を一切していないが,このように原告において本件作品の著作権の管理権限を前提とする行動を一切行っていないことからは,原告においても,本件契約の締結のみでは,原告が本件作品の利用につき管理者としての義務を負担するものではないと認識していたことが認められるものである。
(2)
上記の事情によれば,本件契約は,管理委託契約の本質的要素というべき受託条件,費用,利用方法については何ら定めておらず,これらの点については,別途,個別に合意することを予定しているものであるから,本件契約の締結によって,原告と被告ピープロとの間に,本件作品の著作権全般を対象とする管理委託契約が直ちに成立したと評価することは,到底できない。すなわち,本件作品の著作権に関して,管理委託契約が成立するのは,個別の案件について,原告と被告ピープロとの間で,その対象となる権利の種類・範囲,原告の代理権等の権限の範囲,原告の報酬額,当該著作権の第三者による利用態様等につき具体的に合意が成立した時点というべきである。
本件契約9条は,将来,本件作品の著作権に関して第三者との間で利用許諾が問題となった場合に,原告以外の者に仲介・代理等を委任せずに,原告に対してこれを委任することを,双方で合意したというにとどまるものであって,契約当事者の任意の履行に期待する,いわゆる紳士条項であり,これにより契約当事者に具体的な権利義務を発生させるものではない
したがって,被告ピープロが本件作品に関して直接第三者との間で利用許諾契約を締結したからといって,原告において,直ちに,債務不履行を理由として,その主張のような相場による仲介料と同額の損害賠償を,被告ピープロに対して請求できるものではない。
(3) 原告は,本件管理契約において契約の成立に必要な確定性は存在していると主張するが,上記(2)において認定したとおり,本件管理契約においては,受託条件,費用,利用方法について定められておらず,これらについて当事者の意思を推知するための手がかりも一切認められないのであるから,原告の主張は採用できない。
原告は,これらの要素は相場に基づいて定める旨が当事者間で合意されたということを主張するが,上記認定のとおり,本件においては,契約書上,契約の本質的要素について全く定めを欠き,当事者の意思を推知するための手がかりも一切認められないものであるから,原告主張のような合意が成立していたと認定することもできない。また,原告は,合理的範囲で爾後に意思決定が期待できる要素について当事者が意思形成を後に延ばした場合であっても,契約成立を望んだ当事者の意思が明瞭なときは,一部不確定要素については爾後に決定することとし,大枠は決定したものとみなして契約は成立すると主張するが,このような法律上の主張は,独自の見解であって採用する余地がないし,加えて,本件においては,本件契約締結後に当事者間で受託条件,費用,利用方法についての協議すら行われていないものであるから,原告の主張はその前提をも欠くものである。原告は,具体的内容決定につき当事者間で合意に達しなくても裁判所が双方当事者の申立てを基礎として決定することができるとも主張するが,そのような見解は,独自のものであって,到底採用することができない。
また,原告は,本件において原告は直接的に仲介料(コミッション)の支払を請求しているわけではなく,被告ピープロが,原告が被告ピープロから得るべき手数料額を相場の範囲内で原告と協議して決定する義務を怠ったことについての債務不履行に基づく損害賠償の支払を請求しているものであると述べる。しかしながら,原告が個別の案件において本件作品の利用に関して第三者との間で交渉を行うなどの具体的行為を行っていたにもかかわらず,被告ピープロが原告を介さずに,他の者を介し,あるいは直接当該第三者との間で利用許諾契約を締結したような場合に,原告が実際に出費した費用等を信頼利益として賠償を求めることができるのは格別,本件のような事実関係の下において,被告ピープロが本件作品に関して直接第三者との間で利用許諾契約を締結したからといって,それだけで直ちに,原告において債務不履行を理由として,その主張のような相場による仲介料と同額の損害賠償を,被告ピープロに対して請求できるものではない。
(4)以上によれば,乙事件における原告の被告ピープロ及び同Aに対する請求は,理由がない。

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