[c014]譲渡契約の解除と著作権の復帰
平成18年08月31日知的財産高等裁判所[平成17(ネ)10070]

【コメント】
本件は,振動制御システム(「被控訴人製品」)を販売する被控訴人の行為が,振動制御器F3に組み込まれているソフトウェアプログラム(本件プログラム)につき控訴人が有する翻案権を侵害しているとして,控訴人が,被控訴人に対し,著作権法112条1項に基づき被控訴人製品の頒布等の差止めを求めるとともに,不法行為に基づく損害賠償及びこれに対する訴状送達の日の翌日からの年6分の割合による遅延損害金の支払を求めている事案です。

【裁判所の判断】
5 争点4(本件解除による本件プログラムの翻案権の復帰)について
(1) 控訴人は,本件解除により,本件プログラムの翻案権は控訴人に復帰した旨主張するとともに,継続的契約関係においては,契約の性質,内容,当事者の意思を考慮してある程度の修正がされるが,本件における事情を考慮すると,F3契約等が解除された効果として,遡及効を否定して現状を維持させるべき要請はほとんどないなどとして,本件解除には遡及効がある旨主張する。
(2) そこで,本件解除の解除原因が存在し,解除の意思表示が有効であるかはさておき,仮に,これらが肯定されるとしても,控訴人主張のように本件解除に遡及効があるか否かについて,まず,検討する。
(略)
そうすると,本件プログラムをめぐる契約関係において,基本的には,控訴人による本件プログラムの開発期間中は,控訴人は,合意されたところに基づき,順次,プログラムを開発して,これを被控訴人に納入する義務を負うのに対し,被控訴人は,開発に応じて,合意された開発費の支払義務を負い,順次,納入されるプログラムの著作権等の権利を取得するという継続的な関係が存在し,プログラムの納入後は,控訴人には,製品の競争力維持のために特別な協力を行う義務が存在し,被控訴人には,「歩合開発費」の支払義務が存在するという継続的な関係があることが認められる
上記継続的な関係においては,被控訴人が,順次,納入されたプログラムの権利を取得するものであるところ,その権利を基礎として,新たな法律関係が発生するものであるし,開発の受託者である控訴人も,委託者である被控訴人から指示されて被控訴人のために開発を行い,被控訴人に納入したプログラムについて,控訴人と被控訴人間の契約関係解消の場合,その開発作業の対価として受け取った金員の返還を想定しているとは考えられず,契約の性質及び当事者の合理的意思からも,本件における継続的な関係の解消は将来に向かってのみ効力を有すると解するのが相当である。92年基本契約,94年基本契約においても,契約解除の場合,開発されたソフトウェアの著作権が被控訴人に帰属する条項が有効である旨が定められている(第22条3項)。また,本件においては,歩合開発費についての条項が定められているが,歩合開発費は,控訴人の特別の協力に対して,利益の分配として支払われるものであり,控訴人が,歩合開発費の支払がないことを理由に,開発費が支払われていないということはできず,本件プログラムについて,開発段階で合意された開発費合計1億8967万6300円が被控訴人から控訴人に支払われたことにより,本件プログラムの開発費は支払われて,被控訴人は納入されたそれらの著作権等を取得し,本件解除当時は,F3契約について,F3の競争力維持のための控訴人の義務と被控訴人の歩合開発費支払の義務が残っていたと認められる。
そうすると,控訴人による本件解除は,仮に,解除原因が存在し,解除の意思表示が有効であるとしても,遡及効はなく,将来に向かって効力を生じるものであると解されるのであって,そうとすれば,控訴人は,将来の競争力維持のための協力義務を免れるものの,本件解除によって,従前の法律関係を解消されるものではなく,被控訴人に帰属した権利が,控訴人に復帰するものではないと解するのが相当である。
(略)
(4) 控訴人は,著作権について遡及効が認められなくとも,翻案権については遡及効が認められるとし,本件解除により,控訴人は,それまでに蓄積した技術を駆使して製品を開発し,自ら新たな顧客を求めて奔走することとなるのであり,そのため,控訴人に翻案権が復帰することが不可欠であるのに対し,翻案権を被控訴人に残しておかないことの不都合はなく,また,歩合開発費の支払を免れる被控訴人との対比において,控訴人が市場競争力維持の貢献の義務を免除されることは,全く均衡を失している旨主張する。
しかし,控訴人のそれまでに蓄積した技術を駆使すれば,本件プログラムの翻案に当たらない,振動制御器のためのプログラムを開発することは格別困難なものではないはずである。一方,被控訴人が翻案権を有するか否かは,被控訴人にとって重要であるから,翻案権を控訴人に残しておかなければならない合理的な理由があるとは到底いえないし,歩合開発費と市場競争力維持の貢献の義務との関係が控訴人主張のように認められるものでないことも上記のとおりであり,控訴人主張は,失当である。
(5) 以上によれば,本件解除によって,本件プログラムの翻案権が控訴人に復帰したとする控訴人の主張は採用することができない。

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