[c019]印税の算定基準が問題となった事例
平成19年05月30日東京地方裁判所[平成18(ワ)4398]≫

【コメント】
本件は,被告が出版した登山ガイドの案内文や写真の著作者である原告らが,執筆契約に基づいて,未払の印税の支払を求めるとともに,英語版の登山ガイドを出版した被告の行為が一部の原告の翻訳権を侵害すると主張して民法709条に基づく損害賠償を求めたのに対し,被告が,執筆契約の成立を争うとともに,予備的に,一部の登山ガイドについて,原告らの誤記により印刷した登山ガイドを廃棄しなければならなかったとして,原告らに対する執筆契約の債務不履行に基づく損害賠償請求権をもって相殺の主張をした事案です。
本件で問題となった登山ガイドの完成までの工程の最終段階は,「被告が(最終稿の)内容を確認し,印刷を発注する」→「印刷された紙面は蛇腹折りにした状態で被告の倉庫に保管し,注文に応じて,被告の工場でさらに三つ折りにし,ケースを組み立てて,ケースに収納し,商品として完成し,出荷する」というものでした。

【裁判所の判断】
(1) 争点1(執筆契約の成否及び内容)について
ア 執筆契約の成立
前記1(1)に認定のとおり,原告らと被告は,各原告が各ガイドマップの執筆等を約し,被告が本件企画書面に記載された「本体価格×制作部数×6%」の計算式で算定される印税を支払うことを約したものである。
イ 制作部数の意味
(ア) 各当事者の主張
原告らは,「制作部数」は「印刷部数」と同視すべきであると主張し,被告は,「制作部数」と「印刷部数」は異なり,飽くまで「制作部数」を基準とすべきである旨主張する
(略)
(ウ) 制作部数の意味
前記1(2)に認定の事実に,弁論の全趣旨によれば,本件企画書面における「制作部数」とは,製本を完了していつでも出荷できる状態にある部数を意味し,出版者が書店に配布をしたものだけでなく,出版者の倉庫にあっていつでも注文に応じられる状態にあるものを含んでいること,より具体的には,印刷後蛇腹折りにした状態で倉庫で保管していたものは制作部数に含まれないが,更に三つ折りにし,それをケースに入れたものは制作部数に含まれることが認められる。
(略)
ウ 被告が制作した部数
(ア) 制作部数の認定
a 前記1(2)オに説示したとおり,2000部印刷された版については,すべて制作され,3000部又はそれを超えて印刷された版については,2000部は制作されたものと認められるが,それを超えて制作されたことの立証はない。
b ただし,上記を超えて被告が任意に支払ったものは,被告が制作を認めて支払ったものと認められるから,その支払分を返還したり,他の版の支払に振り替える必要はない。
(イ) 具体的認定
上記算定方法により印税を算定すると,未払印税額は下記のとおりとなる。
(略)
エ まとめ
よって,被告は,各原告に対し,上記金額及びそれらに対する訴状送達日の翌日である平成18年3月18日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払義務がある。

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