[e017]国際裁判管轄

我が国に住所等を有しない被告に対し提起された不法行為に基づく損害賠償請求訴訟につき,民訴法の不法行為地の裁判籍の規定(民訴法5条9号【注:現3条の3・8号に相当】,本件については旧民訴法15条)に依拠して我が国の裁判所の国際裁判管轄を肯定するためには,原則として,被告が我が国においてした行為により原告の法益について損害が生じたとの客観的事実関係が証明されれば足りると解するのが相当である。けだし,この事実関係が存在するなら,通常,被告を本案につき応訴させることに合理的な理由があり,国際社会における裁判機能の分配の観点からみても,我が国の裁判権の行使を正当とするに十分な法的関連があるということができるからである。
本件請求
①【注:本件警告書が日本に送付されたことにより上告人の業務が妨害されたことを理由とする不法行為に基づく損害賠償】については,被上告人が本件警告書を我が国内において宛先各社に到達させたことにより上告人の業務が妨害されたとの客観的事実関係は明らかである。よって,本件請求①について,我が国の裁判所の国際裁判管轄を肯定すべきである。
平成13年6月8日最高裁判所第二小法廷[平成12(オ)929]

本件請求②【注:被上告人が日本において本件著作物についての著作権を有しないことの確認】は,請求の目的たる財産が我が国に存在するから,我が国の民訴法の規定する財産所在地の裁判籍(民訴法5条4号【注:現3条の3・3号に相当】,旧民訴法8条)が我が国内にあることは明らかである。
ところで,著作権は,ベルヌ条約により,同盟国において相互に保護されるものであるから,仮に,被上告人が本件著作物につきタイ王国における著作権を上告人と共有しているとすれば,日本においても,被上告人のタイ王国における共有著作権が保護されることになる。被上告人がタイ訴訟において本件著作物についてタイ王国における著作権を共有していると主張している事実は,本件請求
②の紛争としての成熟性,ひいては確認の利益を基礎づけるのに十分であり,本件請求②の確認の利益を否定した原判決には,法令の解釈適用を誤った違法がある。
よって,本件請求②については,我が国の裁判所に国際裁判管轄があることを肯定すべきである。
平成13年6月8日最高裁判所第二小法廷[平成12(オ)929]

本件請求③ないし⑥は,いずれも本件請求①及び②と併合されている。
ある管轄原因により我が国の裁判所の国際裁判管轄が肯定される請求の当事者間における他の請求につき,民訴法の併合請求の裁判籍の規定(民訴法7条本文【注:現3条の6に相当】,旧民訴法21条)に依拠して我が国の裁判所の国際裁判管轄を肯定するためには,両請求間に密接な関係が認められることを要すると解するのが相当である。けだし,同一当事者間のある請求について我が国の裁判所の国際裁判管轄が肯定されるとしても,これと密接な関係のない請求を併合することは,国際社会における裁判機能の合理的な分配の観点からみて相当ではなく,また,これにより裁判が複雑長期化するおそれがあるからである。
これを本件についてみると,本件請求
③ないし⑥は,いずれも本件著作物の著作権の帰属ないしその独占的利用権の有無をめぐる紛争として,本件請求①及び②と実質的に争点を同じくし,密接な関係があるということができる。よって,本件請求③ないし⑥についても,我が国の裁判所に国際裁判管轄があることを肯定すべきである。
平成13年6月8日最高裁判所第二小法廷[平成12(オ)929]

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