[e031]著作権(広義)侵害総論

著作権侵害行為は、既存の著作物を利用してある作品を作出する場合に成立するが、その利用の態様としては、①既存の著作物と全く同一の作品を作出した場合、②既存の著作物に修正増減を加えているが、その修正増減について創作性が認められない場合、③既存の著作物の修正増減に創作性が認められるが、原著作物の表現形式の本質的な特徴が失われるに至っていない場合、④既存の著作物の修正増減に創作性が認められ、かつ、原著作物の表現形式の本質的な特徴が失われてしまっている場合が存在する。そして、著作権(著作財産権)との関係からいえば右①②の場合は著作権中の複製権(著作権法21条)の侵害であり、右③の場合は著作権中の改作利用権(同法27条)の侵害であり、右④の場合には、全く別個独立の著作物を作出するものであって、著作権侵害を構成しない。また、著作者人格権との関係からいえば、右②③の場合が同一性保持権の侵害であり(最高裁判所昭和55年3月28日判決参照)、右④の場合は著作財産権の場合と同様、侵害にあたらない。したがって、著作権ないし著作者人格権に対する侵害の有無は、原作品における表現形式上の本質的な特徴自体を直接感得することができるか否かにより決められなければならない。
平成7年10月19日京都地方裁判所[平成6(ワ)2364]

特定の著作物と他の著作物との間で著作権又は著作者人格権(著作権等)の侵害の有無を判断しようとする場合,表現それ自体ではない部分又は表現上の創作性がない部分において同一性を有するにすぎないときには,複製又は翻案には該当しないのであるから,著作権等を侵害されたと主張する者は,自らの著作権等が侵害されたとする表現部分を特定した上で,まず,その表現部分が創作性を有していることを明らかにしなければならない。
平成27年9月10日知的財産高等裁判所[平成27(ネ)10009]≫

言語の著作物の複製ないし翻案は,当該著作物の一部についても成立し得るというべきである。しかし,そもそも複製ないし翻案は「著作物」を基に行われるものであるから(著作権法21条,27条),複製ないし翻案されたと主張される当該部分が,その部分だけで独立して,著作権法2条1項1号にいう著作物であると認められることが必要となるのは,当然というべきである。
平成13年09月27日東京高等裁判所[平成13(ネ)542]

そもそも,ある作品等の一部につき,複製等がされたとして著作権侵害を主張する場合においては,当該作品等の全体が上記の意味における著作物に該当するのみでは足りず,侵害を主張する部分自体が思想又は感情を表現したものに当たり,かつ,当該部分のみから,作成者の個性が表現として感得できるものであることを要するものと解するべきであるから,原告書籍においても,その全体が著作物に該当するのみでは足りず,侵害を主張する部分(原告書籍マーカー部分)について,著作物に該当することを主張すべきものと解される。
平成24年09月28日東京地方裁判所[平成23(ワ)1434]

本件において,原告が著作権侵害と主張する行為は,本件図面の毀棄行為であるところ,仮に本件図面に著作物性が認められたとしても,著作物が固定された有形物である本件図面の毀棄行為は,その著作物についての著作権を侵害することにはならないから,原告の主張はそれ自体失当である。
平成19年12月12日東京地方裁判所[平成19(ワ)17959]

著作権の支分権の中には使用権は含まれていないから、プログラムの著作物の使用は、著作権法113条2項に該当する場合以外は著作権侵害とはならない(。)
平成15年12月18日大阪地方裁判所[平成14(ワ)8277]

被告スチールの行為は,適法に複製された本件プログラムの複製物を本件装置において使用しているにすぎないものであるところ,その行為は,著作権法第二章第三節第三款「著作権に含まれる権利の種類」(21条ないし28条)に規定されている権利のいずれを侵害するものでもないし,複製が適法である以上,著作権法113条2項の場合にも該当しない。
平成21年02月26日大阪地方裁判所[平成17(ワ)2641]≫

複製権を内容とする著作財産権と公表権、氏名表示権及び同一性保持権を内容とする著作者人格権とは、それぞれ保護法益を異にし、また、著作財産権には譲渡性及び相続性が認められ、保護期間が定められているが(旧著作権法2条ないし10条、23条等)、著作者人格権には譲渡性及び相続性がなく、保護期間の定めがないなど、両者は、法的保護の態様を異にしている。したがつて、当該著作物に対する同一の行為により著作財産権と著作者人格権とが侵害された場合であつても、著作財産権侵害による精神的損害と著作者人格権侵害による精神的損害とは両立しうるものであつて、両者の賠償を訴訟上併せて請求するときは、訴訟物を異にする二個の請求が併合されているものであるから、被侵害利益の相違に従い著作財産権侵害に基づく慰謝料額と著作者人格権侵害に基づく慰謝料額とをそれぞれ特定して請求すべきである。
昭和61年5月30日最高裁判所第二小法廷[昭和58(オ)516]

そもそも、「著作者人格権」というのは、著作権法が18条の公表権、19条の氏名表示権と20条の同一性保持権の三権を指称する単なる定義用語にすぎないものであり(同法17条)、その用語から直ちに、同一性保持権が生命権、名誉権等と同じく講学上いわれる人格権であるとして、それに基づく差止請求権を非財産権上の請求であると結論づけることはできないが、同一性保持権は、著作者がその思想又は感情を創作的に表現した著作物をその意に反して改変を受けない権利であるから、その権利は、名誉権あるいは思想・表現の自由権等に類する人格権であるということができる
そして、人格権は人格的属性をその対象とし、第三者の侵害からこれを保護することを内容とするものであって、経済的利益を受けることを直接の内容とする権利ではない。したがって、人格権に基づく差止請求によって原告が直接得る利益は、第三者による侵害から人格を保護し得た利益であり、特別の事情の認められない限り、これによって直接経済的利益を受けるということはできない。
(中略)原告の本訴請求が理由ありとされるときは、被告プログラムの記憶媒体の製造、頒布は、本件著作物の同一性保持権を侵害すると同時に原告の有する著作財産権の侵害を生ずる可能性があるといえるが、著作財産権と著作者人格権とは、それぞれ保護法益を異にし、かつ、法的保護の態様を異にするものであって、訴訟物を異にするから、著作財産権をも侵害することを理由に、著作者人格権に基づく本訴差止請求をもって原告が直接経済的利益を得ることを目的とする請求ということはできない。
平成5年12月07日東京高等裁判所[平成5(ラ)989]

著作権侵害につき不法行為に基づく損害賠償請求権が成立するためには,行為者に自己の行為が他人の著作権を侵害するものであることにつき故意又は過失があれば足り,また,故意又は過失が認められるためには対象となる著作物が他人の著作物であることを認識し又は認識し得れば十分であって,著作権の帰属に関する行為者の認識の有無,行為者が著作権侵害の意図を有していたか否か,さらには対象となる著作物に対して行為者が芸術的若しくは商業的価値を認めていたか否かは不法行為が成立するための要件ではない。
平成23年10月31日知的財産高等裁判所[平成23(ネ)10020]

著作権判例エッセンス トップ 


     Kaneda Copyright Agency
     カネダ著作権事務所


      Home  メール相談  契約マネジメント  文化庁登録マネジメント  侵害対応マネジメントその他 
      アメリカ著作権局登録マネジメント