[e036]適法引用の要件

【引用の意義(最高裁判例)】

法【注:旧著作権法】301項第2【注:現32条1項に相当】は、すでに発行された他人の著作物を正当の範囲内において自由に自己の著作物中に節録引用することを容認しているが、ここにいう引用とは、紹介、参照、論評その他の目的で自己の著作物中に他人の著作物の原則として一部を採録することをいうと解するのが相当であるから、右引用にあたるというためには、引用を含む著作物の表現形式上、引用して利用する側の著作物と、引用されて利用される側の著作物とを明瞭に区別して認識することができ、かつ、右両著作物の間に前者が主、後者が従の関係があると認められる場合でなければならないというべきであり、更に、法【注:旧著作権法】183項【注:現50条に相当】の規定によれば、引用される側の著作物の著作者人格権を侵害するような態様でする引用は許されないことが明らかである。
昭和55年3月28日最高裁判所第三小法廷[昭和51(オ)923]

【公表性】

著作権法32条1項は,「公表された著作物は,引用して利用することができる。」と規定しているところ,本件写真が公表されたものであることについての主張立証はないから,本件写真は「公表された著作物」であるとは認められない。したがって,著作権法32条1項の適用により本件写真の本件書籍への掲載が適法となることはない。
平成19年05月31日知的財産高等裁判所[平成19(ネ)10003等]

原告文書2は東京行政書士会における苦情申告手続において提出された苦情申告書であり,原告文書3は,東京弁護士に対する懲戒請求に関し,東京弁護士会綱紀委員会宛てに提出された答弁書であるところ,いずれの手続も,担当委員会内における非公開での審理が予定されているものであるから,このような手続において提出された原告文書2及び3について,「発行」(著作権法3条1項)されたものと認めるに足りる程度の複製物の作成及び頒布(公衆の要求を満たすことができる相当程度の部数の複製物の作成及び頒布)がされたものとは認められない。また,上記のとおり各手続が非公開とされていることに照らし,原告文書2及び3が,原告又はその許諾を得た者によって公衆送信等の方法で公衆に提示されたものとも認められない。そうすると,原告文書2及び3は,いずれも「公表」(同法4条1項)されたものと認めることができず,「公表された著作物」(同法32条1項)に当たらないから,被告Y2の行為が同法32条所定の引用に当たるものとは認められない。
平成25年06月28日東京地方裁判所[平成24(ワ)13494]≫

【明瞭区別性】

同条【注:著作権法32条1項】の趣旨に照らせば、引用が同条に定める要件に合致するというためには、少くとも引用を含む著作物の表現形式上、引用して利用する側の著作物と引用されて利用される側の著作物とを明瞭に区別して認識することができること、右両著作物の内容が前者が主、後者が従の関係にあると認められることを要すると解すべきであり、他人の著作物を自己の著作物としてもしくは自己の著作物と誤解されてしまう体裁で自らの著作物中に取り込むことは、適法な引用ということはできない(。)
昭和61年04月28日東京地方裁判所[昭和58(ワ)13780]

著作権法32条1項がこのように規定している以上,これを根拠に,公表された著作物の全部又は一部を著作権者の許諾を得ることなく自己の著作物に含ませて利用するためには,当該利用が,①引用に当たること,②公正な慣行に合致するものであること,③報道,批評,研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行われるものであること,の3要件を満たすことが必要であると解するのが相当である。
「引用」に当たるというためには,引用して利用する側の著作物(以下「引用著作物」という。)と引用して利用される側の著作物(以下「被引用著作物」という。)とが,明瞭に区別されていなければならないことは,事柄の性質上,当然である。被引用著作物が引用著作物と明瞭に区別されておらず,著作物に接した一般人において,引用著作物中にその著作者以外の者の著作に係る部分があることが判明しないような採録方法が採られている場合には,そもそも,同条にいう「引用」の要件を満たさないというべきである。
平成14年04月11日東京高等裁判所[平成13(ネ)3677]≫

【公正な慣行】

引用に際しては,上記のとおり,引用部分を,括弧でくくるなどして,引用著作物と明瞭に区別することに加え,引用部分が被引用著作物に由来することを明示するため,引用著作物中に,引用部分の出所を明示するという慣行があることは,当裁判所に顕著な事実である。そして,このような慣行が,著作権法32条1項にいう「公正な」という評価に値するものであることは,著作権法の目的に照らして,明らかというべきである。
ここにいう,出所を明示したというためには,少なくとも,出典を記載することが必要であり,特に,被引用著作物が翻訳の著作物である場合,これに加えて,著作者名を合わせて表示することが必要な場合が多いということができるであろう(著作権法48条1項,2項参照)。
平成14年04月11日東京高等裁判所[平成13(ネ)3677]≫

控訴人Aは,本件書籍に原告翻訳部分を掲載するに当たり,原告翻訳部分を括弧で区分することによって,他の部分と明瞭に区別して引用であることを明らかにはしたものの,原告翻訳部分を本件翻訳台本から複製したものであることも,翻訳者が被控訴人であることも明示しなかったのであるから,このような採録方法は,前認定の公正な慣行に合致するものということはできないというべきである。
この点につき,控訴人らは,罰則上,著作権侵害の罪とは別に出所明示義務違反の罪が設けられていることを根拠として,著作権法
48条1項の出所明示義務は,同法32条1項により適法な引用と認められる場合に課される法律上の義務ではあるものの,この義務に反し出所明示を怠った場合であっても,著作権侵害が成立するわけではない,と主張する。
しかしながら,控訴人らの上記主張は,出所を明示しない引用が適法な引用と認められる場合(出所を明示することが著作権法32条1項にいう公正な慣行に当たると認められるには至っていないことを,当然の前提とする。)には当てはまっても,出所を明示することが公正な慣行と認められるに至っている場合には,当てはまらないというべきである。出所を明示しないで引用することは,それ自体では,著作権(複製権)侵害を構成するものではない。この限りでは,控訴人らの主張は正当である。しかし,そのことは,出所を明示することが公正な慣行と認められるに至ったとき,公正な慣行に反する,という媒介項を通じて,著作権(複製権)侵害を構成することを否定すべき根拠になるものではない。出所を明示しないという同じ行為であっても,単に法がそれを義務付けているにすぎない段階と,社会において,現に公正な慣行と認められるに至っている段階とで,法的評価を異にすることになっても,何ら差し支えないはずである。そして,出所を明示する慣行が現に存在するに至っているとき,出所明示を励行させようとして設けられた著作権法48条1項の存在のゆえに,これを公正な慣行とすることが妨げられるとすれば,それは一種の背理というべきである。
控訴人らの上記主張は,採用することができない。
(略)
以上述べたところによれば,本件書籍への原告翻訳部分の採録は,出所の明示を怠った点において公正な慣行に合致せず,著作権法
32条1項の適法な引用には当たらないというべきであるから,複製権を侵害するものというべきである。
平成14年04月11日東京高等裁判所[平成13(ネ)3677]≫

【正当な範囲内】

公表された著作物は,公正な慣行に合致し,報道,批評,研究その他の引用の目的上正当な範囲内で引用して利用することができると規定されているところ(同法32条1項),他人の著作物を引用して利用することが許されるためには,引用して利用する方法や態様が公正な慣行に合致したものであり,かつ,引用の目的との関係で正当な範囲内,すなわち,社会通念に照らして合理的な範囲内のものであることが必要であり,著作権法の上記目的をも念頭に置くと,引用としての利用に当たるか否かの判断においては,他人の著作物を利用する側の利用の目的のほか,その方法や態様,利用される著作物の種類や性質,当該著作物の著作権者に及ぼす影響の有無・程度などが総合考慮されなければならない。
平成22年10月13日知的財産高等裁判所[平成22(ネ)10052]

他人の著作物を引用して利用することが許されるためには,引用して利用する方法や態様が,報道,批評,研究等の引用するための各目的との関係で,社会通念に照らして合理的な範囲内のものであり,かつ,引用して利用することが公正な慣行に合致することが必要である。
平成25年12月20日東京地方裁判所[平成24(ワ)268]

著作権判例エッセンス トップ 


     Kaneda Copyright Agency
     カネダ著作権事務所


      Home  メール相談  契約マネジメント  文化庁登録マネジメント  侵害対応マネジメントその他 
      アメリカ著作権局登録マネジメント