[e037]著作権の侵害性

【依拠性】

旧著作権法の定めるところによれば、著作者は、その著作物を複製する権利を専有し、第三者が著作権者に無断でその著作物を複製するときは、偽作者として著作権侵害の責に任じなければならないとされているが、ここにいう著作物の複製とは、既存の著作物に依拠し、その内容及び形式を覚知させるに足りるものを再製することをいうと解すべきであるから、既存の著作物と同一性のある作品が作成されても、それが既存の著作物に依拠して再製されたものでないときは、その複製をしたことにはあたらず、著作権侵害の問題を生ずる余地はないところ、既存の著作物に接する機会がなく、従つて、その存在、内容を知らなかつた者は、これを知らなかつたことにつき過失があると否とにかかわらず、既存の著作物に依拠した作品を再製するに由ないものであるから、既存の著作物と同一性のある作品を作成しても、これにより著作権侵害の責に任じなければならないものではない。
昭和53年9月7日最高裁判所第一小法廷[昭和50(オ)324]

そもそも著作権侵害とは既存の著作物に依拠し、これと同一性或いは類似性のある作品を著作権者に無断で複製することによつて生ずるもので、仮に第三者が当該著作物と同一性のあるものを作成したとしても、その著作物の存在を知らず、これに依拠することなしに作成したとするならば、知らないことに過失があつたとしても著作権侵害とはならないものと解すべきである(昭和53年9月7日最高裁第一小法廷判決)。従つて、依拠した結果同一性或は類似性のあるものを作成すると侵害行為となるが、たとえ依拠した場合でも換骨奪胎して同一性或は類似性のないものを作成したとすれば、侵害行為は該当しない。
そうだとすると、著作権侵害を判断するに当つては、先ず既存の著作物に依拠したか否かの点が前提となり、依拠した場合に同一性或は類似性を判断することになる。但し、第三者が既存の著作物と同一或は類似のものを作成した場合、それは依拠したことを推認する資料となりうるのであつて、それが酷似すればする程その度合は強くなるといえる。
昭和59年02月10日東京地方裁判所八王子支部[昭和56(ワ)1486]

何より、甲曲と乙曲の旋律の上記のような顕著な類似性、とりわけ、全128音中92音(約72%)で両曲は同じ高さの音が使われているという他に類例を見ない高い一致率、楽曲全体の3分の1以上に当たる22音にわたって、ほとんど同一の旋律が続く部分が存在すること、乙曲は反復二部形式を採用しているものの、その前半部分と後半部分に見られる基本的な旋律の構成は、甲曲の起承転結の構成と酷似していること、他方、甲曲程度の比較的短い楽曲であっても、その旋律の組立てにはそれ相応の多様な創作性の余地が残されていると解されることは前示のとおりであり、以上のような顕著な類似性が、偶然の一致によって生じたものと考えることは著しく不自然かつ不合理といわざるを得ない。そうすると、このような両者の旋律の類似性は、甲曲に後れる乙曲の依拠性を強く推認させるものといわざるを得ない。
平成14年09月06日東京高等裁判所[平成12(ネ)1516]

対象となる作品が原著作物に依拠して作成されたものであるか否かは、当該作品の制作者につき判断されるべき事項であるから、対象となる作品が共同制作にかかるものである場合には、共同制作者のそれぞれにつき依拠の要件を充足しているか否かを判断する必要があるが、共同制作者の全員が原著作物に接していなければならないというものでは必ずしもなく、自らは原著作物に接する機会がない場合であっても、当該作品を制作するについて他の共同制作者が原著作物に接していて、これに依拠していることを知っているような場合には、原著作物に接する機会のない者についても、同様に依拠の要件を充足しているものと認めるのが相当である。
平成8年04月16日東京高等裁判所[平成5(ネ)3610]≫

既存の著作物の表現内容を認識し,それを自己の作品に利用する意思を有しながら,既存の著作物と同一性のある作品を作成した場合は,既存の著作物に依拠したものとして複製権侵害が成立するというべきであり,この理は,翻案権侵害についても同様である。
平成17年05月17日東京地方裁判所[平成15(ワ)12551]

まず,被告らが原告各イラストに依拠したものであるか否かについて検討する。ここでいう「依拠」とは,ある者が他人の著作物に現実にアクセスし,これを参考にして別の著作物を作成することをいう。
ところで,原告著書に描かれている原告各イラストは極めて多数にのぼり,被告各イラストがそれぞれ原告各イラストのうちどのイラストに依拠して作成されたものであるかを個別に特定して主張立証することは著しく困難である。他方,原告著書のように,同一のコンセプトに基づき,かつ同一の特徴を有する人物をひとつのキャラクターとして多様に表現する場合,後から描かれるイラストは,先に描かれたイラストに依拠しながら,その本質的な表現上の特徴を直接感得できるようなイラスト(すなわち,同一のキャラクターを表現していると認められるイラスト)を新たに創作するものと解される。したがって,後から描かれるイラストは,先に描かれたイラストを原著作物とする二次的著作物と見られる場合が多いと考えられる。二次的著作物の著作権は,二次的著作物において新たに付与された創作的部分のみについて生じ,原著作物と共通しその実質を同じくする部分には生じない(前掲最高裁平成9年7月17日第一小法廷判決)から,第三者が二次的著作物に依拠してその内容及び形式を覚知させるに足りるものを再製したとしても,その再製した部分が二次的著作物において新たに付与された創作的部分ではなく,原著作物と共通しその実質を同じくする部分にすぎない場合には二次的著作物の著作権を侵害したものとはいえない。しかし,二次的著作物に依拠したとしても,これにより原著作物の内容及び形式を覚知させるに足りるものを再製したとすれば,二次的著作物を介して原著作物に依拠したものということができ,原著作物の著作権を侵害することになる。また,一話完結の連載漫画などとは異なり,原告著書のように1冊の著書に多数のキャラクターがイラストとして描かれている場合に,どのイラストをもって原著作物とし,どのイラストをもって二次的著作物とするかを判然と区別することは困難である。以上の点を考慮すると,本件において,原告としては個々の被告各イラストについて,原告各イラストのうち被告らが実際に依拠したイラストを厳密に特定し,これを立証するまでの必要はなく,原告各イラストのうちのいずれかのイラストに依拠し,そのイラストの内容及び形式を覚知させるに足りるものを再製し又はそのイラストの表現上の本質的な特徴を直接感得することができる別の著作物を創作したことを主張立証することをもって,原告各イラストの著作権侵害の主張立証としては足りるというべきである。
平成21年03月26日大阪地方裁判所[平成19(ワ)7877]

本件映画は,上記のとおり,本件漫画と登場人物,ストーリー展開が同じであり,台詞も本件漫画と多くの部分が同じであることなどに照らすと,被告は,本件漫画を読んだ上で,本件映画を製作・監督したと認めるのが相当であるから,本件映画は本件漫画に依拠して製作されたと認められる。
平成25年11月22日 東京地方裁判所[平成25(ワ)13598]

被控訴人書籍漢方薬便覧部分の薬剤の選択及び配列は,控訴人書籍のそれの複製に当たるといわざるを得ないところ,①被控訴人書籍漢方薬便覧部分における「処方名」(合計149)の配列は,原則として50音順としているが,例外的に50音順を崩して配列した箇所が4箇所あり,その配列及び最後に生薬である「ヨクイニンエキス」を配列している点に至るまで,控訴人書籍漢方薬便覧部分と完全に同一であること,②控訴人書籍が被控訴人書籍より先に発行され,これに接する機会があったこと,③「今日の治療薬」が先駆的な書籍であったことからすると,同種の書籍を発行するに当たって,これを参考にしなかったとはいい難いこと等に照らすと,被控訴人は,控訴人書籍漢方薬便覧部分に依拠して被控訴人書籍を発行したものと推認される。
この点に関し,被控訴人は,依拠していないと主張する。しかしながら,上記のとおり控訴人書籍と完全に同一である理由について,何ら合理的な説明をしておらず,到底採用することはできない。
平成25年04月18日知的財産高等裁判所[平成24(ネ)10076]

【具体的表現の利用】

著作権侵害の成否とは、要するに、思想そのものではなく、思想(それ自体独創性のあるものであると否とを必ずしも問わない。)についての創作性ある具体的表現が無断で利用されているかどうかということであ(る。)
昭和53年06月21日東京地方裁判所[昭和52(ワ)598]≫

被告計画書が原告企画書の著作権を侵害したか否かを判断するにあたり,著作物性のない部分について,これを比較することは無意味であるから,一個の著作物においても,その著作物における創作的な表現部分について,これが複製されたかどうかを判断することが必要であ(る。)
平成13年06月21日大阪高等裁判所[平成12(ネ)3128≫

控訴人が控訴人作品の「本質的特徴」と主張するものは、結局のところ具体的表現をする際に使用する手法ないし技法にすぎないものというべきである。そして、右のような手法ないし技法は、それ自体では、思想又は感情を表現したものということはできないから、著作権によって保護される対象とはならない。
平成12年01月18日東京高等裁判所[平成11(ネ)4444]

論文に同一の自然科学上の知見が記載されているとしても、自然科学上の知見それ自体は表現ではないから、同じ知見が記載されていることをもって著作権の侵害とすることはできない。
平成16年11月04日大阪地方裁判所[平成15(ワ)6252]

仮に,原告の主張するように,原告著作物に記載されている野球の打撃理論等を被告が公式戦等の試合において実践したとしても,当該行為は著作権法にいう著作者の権利を侵害するものではない。けだし,著作物とは,「思想又は感情を創作的に表現したもの」(著作権法2条1項1号参照)であり,著作権法は,著作者の思想又は感情の創作的な表現を保護するものであって,具体的な表現を離れた単なる思想又はアイデア自体は,著作権法上の保護の対象とはされていないからである(最高裁平成13年6月28日第一小法廷判決参照)。そして,本件において,原告が著作権侵害として主張する内容は,単に,被告が原告著作物に記載された内容を参考にして競技をしたというにとどまるものであって,原告著作物の具体的な表現を利用したものとはいえない。
平成15年03月06日東京地方裁判所[平成14(ワ)26691]

【本質的特徴の直接感得性】

自己の著作物を創作するにあたり、他人の著作物を素材として利用することは勿論許されないことではないが、右他人の許諾なくして利用をすることが許されるのは、他人の著作物における表現形式上の本質的な特徴をそれ自体として直接感得させないような態様においてこれを利用する場合に限られるのであ(る。)
昭和55年3月28日最高裁判所第三小法廷[昭和51(オ)923]

被告書籍のうち対照表左欄記載の各記述部分が、原告著作物一の同右欄記載の記述部分の複製に当たるというためには、被告らが原告著作物一に接し、これに依拠して同左欄記載の各記述部分を執筆したことのほかに、右各記述部分が原告著作物一の対応部分と著作物としての同一性、すなわち著作物の本質的特徴を感得しうる程度の同一性を有することを要するというべきである。(中略)
原告著作物一と被告書籍の右各記述部分が同一性を有するかどうかは、原告著作物一と被告書籍の著作物としての態様、叙述内容、叙述形式等を参酌のうえ、原告著作物一と被告書籍の各記述部分の表現形式を対比して、被告書籍における記述部分から、原告著作物一における記述部分の本質的特徴を感得しうるか否かによって決すべきである。
平成13年01月23日東京地方裁判所[平成11(ワ)13552]≫

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