[e039]キャッチフレーズの著作物性

控訴人は,創作性の問題の本質は長さの点になく,創作者の何らかの個性が現れていれば足りるし,短い表現であっても,選択の幅が狭いとはいえない以上,控訴人キャッチフレーズ2【注:「ある日突然,英語が口から飛び出した!」】について,著作物性が肯定されるべきである,控訴人キャッチフレーズ2は,五七調の利用や人物を主語としない表現という意味で,需要者に強く印象を与えるものであり,従業員が試行錯誤して完成させた,他の英会話教材の宣伝文句にはない,独自のものである旨主張する。
しかしながら,許容される表現の長さによって,個性の表れと評価できる部分の分量は異なるし,選択できる表現の幅もまた異なることは自明である。特に,広告におけるキャッチフレーズのように,商品や業務等を的確に宣伝することが大前提となる上,紙面,画面の制約等から簡潔な表現が求められ,必然的に字数制限を伴う場合は,そのような大前提や制限がない場合と比較すると,一般的に,個性の表れと評価できる部分の分量は少なくなるし,その表現の幅は小さなものとならざるを得ない。さらに,その具体的な字数制限が,控訴人キャッチフレーズ2のように,20字前後であれば,その表現の幅はかなり小さなものとなる。そして,アイデアや事実を保護する必要性がないことからすると,他の表現の選択肢が残されているからといって,常に創作性が肯定されるべきではない。すなわち,キャッチフレーズのような宣伝広告文言の著作物性の判断においては,個性の有無を問題にするとしても,他の表現の選択肢がそれほど多くなく,個性が表れる余地が小さい場合には,創作性が否定される場合があるというべきである。
本件において,控訴人商品は,リスニングを中心にすえた英会話教材中,集中して聞き入るという方法ではなく,聞き流す方法を採用した教材であり,控訴人キャッチフレーズ2は,控訴人商品を英会話教材として利用した場合に,自然に流暢に英語を話すことができるようになるという効果があることを謳ったものであるが,その使用方法や効果自体は,事実であるし,消費者に印象を与えるための五七調風の語調の利用や,商品を主語とした表現の採用自体は,アイデアにすぎない。また,劇的に学習効果が現れる印象を与えるための「ある日突然」という語句の組合せの利用や,ダイナミックな印象を与えるための「飛び出した」という語句の利用に関しても,上記アイデアを表現する上で一定の副詞や動詞を使用することは不可欠であるから,他の表現の選択肢はそれほど多くないといわざるを得ない。現に,同様のアイデアを表現する上で,控訴人自身が過去に採用したキャッチフレーズにおいて,「・・・英語が口から飛び出す!」,「ある日突然,・・・(英語が話せてびっくりした!)」,「ある日突然,・・・(自然と英語が口をついて出てくる!)」,「ある日突然,英語が口から飛び出して」,「・・・突然,英語が口から飛び出す」という控訴人キャッチフレーズ2と共通する部分が存在する。また,キャッチフレーズではないが,控訴人キャッチフレーズ2の公表後に発表された英会話の上達方法に関するウェブサイトにおいて,無意識に自然と流暢に英語を話せるようになるという劇的な効果を説明するために,「ある日突然に,・・・口から飛び出る」,「ある日突然,・・・英語のフレーズが口から飛び出してきます。」,「ある日突然「するっと英語が話せる」ようになった」といった語句が使用され,控訴人キャッチフレーズ2と同じ副詞や動詞が選択されているのであって,これらは,控訴人商品と同様の学習効果を表現する上で,他の表現の選択肢が限られていることをうかがわせるものである。このような意味において,控訴人キャッチフレーズ2における語句の選択は,ありふれたものということができる。
したがって,控訴人キャッチフレーズ2に著作物性が認められないとした原判決の判断に,誤りはないというべきである。
平成27年11月10日知的財産高等裁判所[平成27(ネ)10049]

イ 原告キャッチフレーズ1は,「音楽を聞くように英語を聞き流すだけ/英語がどんどん好きになる」というものであり,17文字の第1文と12文字の第2文からなるものであるが,いずれもありふれた言葉の組合せであり,それぞれの文章を単独で見ても,2文の組合せとしてみても,平凡かつありふれた表現というほかなく,作成者の思想・感情を創作的に表現したものとは認められない。
ウ 原告キャッチフレーズ2は,「ある日突然,英語が口から飛び出した!」というもの,原告キャッチフレーズ3は,「ある日突然,英語が口から飛び出した」というものであるが,17文字(原告キャッチフレーズ3)あるいはそれに感嘆符を加えた18文字(原告キャッチフレーズ2)のごく短い文章であり,表現としても平凡かつありふれた表現というべきであって,作成者の思想・感情を創作的に表現したものとは認められない。
平成27年3月20日東京地方裁判所 [平成26(ワ)21237]

キャッチコピー「漢方のふるさと中国四千年の歴史が生んだ,あの迷奇がついに日本上陸」及び推奨文「友人からの紹介で朝晩使ってみたら,肌がいつもしっとりして気持ち良く保湿性の良さに驚きました。」については,いずれも極く短く,平凡かつありふれた表現からなる文章であって,これらの文章について,創作性を肯定することはできない。
平成13年09月28日東京地方裁判所[平成11(ワ)8085]

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