[e052]写真の著作物性

本件写真のように原作品がどのようなものかを紹介するための写真において、撮影対象が平面的な作品である場合には、正面から撮影する以外に撮影位置を選択する余地がない上、右認定のような技術的な配慮も、原画をできるだけ忠実に再現するためにされるものであって、独自に何かを付け加えるというものではないから、そのような写真は、「思想又は感情を創作的に表現したもの」(著作権法2条1項1号)ということはできない。
平成10年11月30日東京地方裁判所[昭和63(ワ)1372]≫

ア 写真は,被写体の選択・組合せ・配置,構図・カメラアングルの設定,シャッターチャンスの捕捉,被写体と光線との関係(順光,逆光,斜光等),陰影の付け方,色彩の配合,部分の強調・省略,背景等の諸要素を総合してなる一つの表現である。
このような表現は,レンズの選択,露光の調節,シャッタースピードや被写界深度の設定,照明等の撮影技法を駆使した成果として得られることもあれば,オートフォーカスカメラやデジタルカメラの機械的作用を利用した結果として得られることもある。また,構図やシャッターチャンスのように人為的操作により決定されることの多い要素についても,偶然にシャッターチャンスを捉えた場合のように,撮影者の意図を離れて偶然の結果に左右されることもある。
そして,ある写真が,どのような撮影技法を用いて得られたものであるのかを,その写真自体から知ることは困難であることが多く,写真から知り得るのは,結果として得られた表現の内容である。撮影に当たってどのような技法が用いられたのかにかかわらず,静物や風景を撮影した写真でも,その構図,光線,背景等には何らかの独自性が表れることが多く,結果として得られた写真の表現自体に独自性が表れ,創作性の存在を肯定し得る場合があるというべきである。
もっとも,創作性の存在が肯定される場合でも,その写真における表現の独自性がどの程度のものであるかによって,創作性の程度に高度なものから微少なものまで大きな差異があることはいうまでもないから,著作物の保護の範囲,仕方等は,そうした差異に大きく依存するものというべきである。したがって,創作性が微少な場合には,当該写真をそのままコピーして利用したような場合にほぼ限定して複製権侵害を肯定するにとどめるべきものである。
イ 以上のような観点から,本件各写真の著作物性について検討する。
(ア) 本件各写真は,本件ホームページで商品を広告販売するために撮影され たものであり,その内容は,次のとおりである
本件写真1は,固形据え置きタイプの商品を,大小サイズ1個ずつ横に並べ,ラベルが若干内向きとなるように配置して,正面斜め上から撮影したものである。光線は右斜め上から照射され,左下方向に短い影が形成されている。背景は,薄いブルーとなっている。
本件写真2は,霧吹きタイプの商品を,水平に寝かせた状態で横に2個並べ,画面の上下方向に対して若干斜めになるように配置して,真上から撮影したものである。光線は右側から照射され,左側に影が形成されている。背景は,オフホワイトとなっている。
以上から,本件各写真には,被写体の組合せ・配置,構図・カメラアングル,光線・陰影,背景等にそれなりの独自性が表れているということができる。
(略)
(ウ) 確かに,本件各写真は,ホームページで商品を紹介するための手段として撮影されたものであり,同じタイプの商品を撮影した他の写真と比べて,殊更に商品の高級感を醸し出す等の特異な印象を与えるものではなく,むしろ商品を紹介する写真として平凡な印象を与えるものであるとの見方もあり得る。しかし,本件各写真については,前記認定のとおり,被写体の組合せ・配置,構図・カメラアングル,光線・陰影,背景等にそれなりの独自性が表れているのであるから,創作性の存在を肯定することができ,著作物性はあるものというべきである。他方,上記判示から明らかなように,その創作性の程度は極めて低いものであって,著作物性を肯定し得る限界事例に近いものといわざるを得ない。
平成18年03月29日知的財産高等裁判所[平成17(ネ)10094]≫

本件各写真は,被控訴人が,本件スカイダイビングに参加していた当時,自らもスカイダイビングの体勢をとり,頭部ヘルメット上に固定したカメラを手元で遠隔操作して,同じくスカイダイビング中の他の参加者等を空中で撮影した写真であって,その際,被控訴人は,事前に,地上の光量と上空の光量との違い,撮影すべき写真の構図及びシャッターチャンス,順光・逆光の選択等その撮影効果を検討,想定し,カメラの露出をセットするなどの準備をした上,スカイダイビング中において,自己及び撮影依頼者の安全に注意し,あらかじめ検討,想定した被写体との距離及び位置関係を保てるよう自己の位置を調整し,最も効果的な構図でシャッターを切る工夫をして撮影したものである。そうすると,本件各写真は,被控訴人において,上記諸要素を考慮して撮影効果を工夫し,自ら構図を決定し,シャッターチャンスをとらえて撮影した写真であるから,被控訴人の思想又は感情を一定の映像によって創作的に表現したものとして著作物性を有するというべきである。
平成15年02月26日東京高等裁判所(平成14(ネ)3296)

著作権法は、著作物について、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と定義しているところ、ここで要求される表現の創作性については、著作者の個性が表現の中に何らかの形で現れていれば足りると解すべきである。
これを写真についてみると、単なるカメラの機械的な作用のみに依存することなく、被写体の選定、写真の構図、光量の調整等に工夫を凝らし、撮影者の個性が写真に現れている場合には、写真の著作物(同法
10条1項8号)として著作権法上の保護の対象になるものというべきである。
平成7年03月28日大阪地方裁判所[平成4(ワ)1958]

一般に写真撮影は機械的作用に依存する部分が多く、精神的操作の余地が少ないものと認められ、この点において他の著作物と趣を異にすることは否定できない。しかしながら、写真の撮影についても、主題の決定、被写体・構図・カメラアングル・光量・シャッターチャンス等の選択について創作性が現れる余地があり、このような創作性が認められる限り、写真の著作物性が肯定されるものと解するのが相当である。
平成7年02月21日青森地方裁判所[平成4(ワ)344]

本件写真は、控訴人が、我国古代史の研究ないし解明に役立つと考えて、被写体を選定し、その撮影方法についても工夫を凝らして、古代史学に関する資料を他にさきがけて明確にしておく目的で撮影したものであり、控訴人の著作物として保護されるべきものであることは疑いを容れないところであって、控訴人がいわゆる学者や職業的写真家ではなく、写真に関しては素人であることは右判断の妨げとなるものではない。
平成9年01月30日仙台高等裁判所[平成7(ネ)207]≫

写真が,著作権法10条1項8号の「写真の著作物」として著作権法の保護の対象となるためには,それが対象物の単なる機械的複製ではなく,写真の被写体の選定,写真の構図,光量の調節,シャッター速度などの工夫によって,撮影者の思想又は感情を創作的に表現したものと認められることを要すると解される(。)
平成13年10月11日東京地方裁判所[平成12(ワ)2772]

写真は、誰でもカメラで撮影すれば、現像、焼付等の処理を経ることにより被写体を写し取った写真が出来上がるものであるから、カメラという機械に依存するところが大きく、撮影者の創作性が発揮される部分が小さい。しかし、写真がカメラの機械的作用に依存するところが大きいとしても、被写体の選定、露光の調節、構図の設定、シャッターチャンスの捉え方、その他の撮影方法において、撮影者の個性が現れた創作的表現が認められれば、著作物として保護されるものというべきである(著作権法10条1項8号)。
平成14年11月14日大阪地方裁判所[平成13(ワ)8552]

前記のとおり,①本件写真1は,原告代表者が,リフレクティックス社の工場内の天井,左側壁面及び前方奥の壁面を主な被写体として,これらを写真全体の3分の2程度に大きく取り入れた構図とし,低いアングルから工場内全体を撮影したものであること,②原告代表者は,上記工場内の天井及び壁面にリフレクティックス製品が使用されている状況並びに同工場内にエアコンが設置されていない状況などを表現するために,上記構図及びアングルを選択したことに照らすならば,本件写真1は,被写体の構図及びアングルの選択において,撮影者である原告代表者の創作性が認められ,原告代表者の思想又は感情を創作的に表現したものと認められるから,著作物(著作権法2条1項1号)に当たるものと認められる。
これに対し,被告Aは,本件写真1が与える印象は極めて平凡で,写真だけを見ても,その被写体が何であるのか理解し難く,また,本件写真1は,工場内において撮影者がカメラのシャッターを押せば,工場内のどの地点であろうとも,ほとんどの写真が本件写真1のアングル,画面配置になったと思われる程度の平凡なアングル,画面配置にすぎず,アングル,画面配置の点において独自性は認められないなどとして,本件写真1には,著作物性は認められない旨主張する。
しかし,前記のとおり,本件写真1は,リフレクティックス社の工場内の天井,左側壁面及び前方奥の壁面を主な被写体として,これらを写真全体の3分の2程度に大きく取り入れた構図とし,低いアングルから工場内全体を撮影した写真であって,構図及びアングルの選択において創作性が認められ,被告Aがいうように工場内のどの地点でカメラのシャッターを押しても本件写真1の構図及びアングルになるものではないから,被告Aの上記主張は採用することができない。
平成20年06月26日東京地方裁判所[平成19(ワ)17832]

「写真の著作物」は,著作権法10条1項8号に列挙された著作物であるところ,同法は,写真の著作物につき特別の定義規定を置いていないが,「写真の著作物」には写真の製作方法に類似した方法を用いて表現される著作物を含むものとし(同法2条4項),その著作者は発行されていない写真の著作物を原作品により公に展示する権利を専有することとし(同法25条),公表や展示の同意に関する特別の規定(同法4条4項,18条2項2号,45条1項)を設けるなど,写真の著作物に特有の,特に美術の著作物に類する規定を置いている。その一方で,写真の著作物の創作性を表現する方法である「写真」については,有形的再生である複製の方法として規定している(同法2条1項15号)ことからも明らかなとおり,写真それ自体が被写体に何らの創作性を加えない場合もあり得ることを同法は予定しているものである。
写真は,被写体の選択・組合せ・配置,構図・カメラアングルの設定,シャッターチャンスの捕捉,被写体と光線との関係(順光,逆光,斜光等),陰影の付け方,色彩の配合,部分の強調・省略,背景等の諸要素を総合してなる一つの表現である。こうした写真の表現方法のうち,レンズの選択,露光の調節,シャッタースピードや被写界深度の設定,照明等の撮影技法を駆使した成果として得られることもあれば,オートフォーカスカメラやデジタルカメラの機械的作用を利用した結果として得られることもある。また,このうちの構図やシャッターチャンスのように人為的操作により決定されることの多い要素についても,偶然にシャッターチャンスを捉えた場合のように,撮影者の意図を離れて偶然の結果に左右されることもある。その写真について,どのような撮影技法を用いて得られたものであるのかを写真自体から知ることは困難な場合もあり,写真から知り得るのは結果として得られた表現の内容ではあるものの,静物や風景を撮影した写真であっても,その構図,光線,背景等,上記諸要素の設定や取捨選択等に何らかの個性が表れることが多く,結果として得られた写真の表現にこうした独自性が表れているのであれば,そこに写真の著作物の創作性を肯定することができるというべきである。
平成27年12月9日東京地方裁判所[平成27(ワ)14747]

ところで写真が著作物として認められ得るのは,被写体の選択,シャッターチャンス,シャッタースピードの設定,アングル,ライティング,構図・トリミング,レンズの選択等により,写真の中に撮影者の思想又は感情が表現されているからであり,したがって写真は,原則として,その撮影者が著作者であり,著作権者となるというべきことになる。
これにより本件について見ると,本件写真①は,舞のポーズをとった舞妓を,やや斜め左前の位置で,舞妓をごく僅かに見上げる高さから撮影したものであるが,舞を踊るポーズを取る舞妓の表情及び全身を捉える撮影位置,撮影アングル,構図を選択したのは撮影者の原告であり,本件写真①は,このことにより撮影者である原告の思想又は感情が創作的に表現されているといえるから,これによりその著作物性が肯定され得る。
 平成28年7月19日大阪地方裁判所[平成26(ワ)10559]

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