[e053]「特掲」(法61条2項)の程度

著作権法61条2項は,「著作権を譲渡する契約において,第27条又は第28条に規定する権利が譲渡の目的として特掲されていないときは,これらの権利は,譲渡した者に留保されたものと推定する。」と規定するところ,これは,著作権の譲渡契約がなされた場合に直ちに著作権全部の譲渡を意味すると解すると著作者の保護に欠けるおそれがあることから,二次的な利用権等を譲渡する場合には,これを特に掲げて明確な契約を締結することを要求したものであり,このような同項の趣旨からすれば,上記「特掲され」たというためには,譲渡の対象にこれらの権利が含まれる旨が契約書等に明記されることが必要であり,契約書に,単に「すべての著作権を譲渡する」というような包括的な記載をするだけでは足りず,譲渡対象権利として,著作権法27条や28条の権利を具体的に挙げることにより,当該権利が譲渡の対象となっていることを明記する必要があるというべきである。
平成18年12月27日東京地方裁判所[平成16(ワ)13725]

61条2項は,通常著作権を譲渡する場合,著作物を原作のままの形態において利用することは予定されていても,どのような付加価値を生み出すか予想のつかない二次的著作物の創作及び利用は,譲渡時に予定されていない利用態様であって,著作権者に明白な譲渡意思があったとはいい難いために規定されたものである。そうすると,単に「将来取得スルコトアルベキ総テノ著作権」という文言によって,法27条の権利や二次的著作物に関する法28条の権利が譲渡の目的として特掲されているものと解することはできない。この点につき,法28条の権利が結果的には法21条ないし法27条の権利を内容とするものであるとして,単なる「著作権」という文言に含まれると解釈することは,法61条2項が法28条の権利についても法27条の権利と同様に「特掲」を求めている趣旨に反する。
平成15年12月26日東京地方裁判所[平成15(ワ)8356]≫

著作権を譲渡する契約において翻案権が譲渡の目的として特掲されていないときは,翻案権は譲渡した者に留保されたものと推定されるところ(著作権法61条2項),前記において認定した本件意見書の各著作者と控訴人間の管理委託及び出版権設定契約書においては,翻案権が譲渡の目的として特掲されておらず,また証拠中の「※意見書については,著作権及び版権は,©風の谷委員会に帰属します。」との記載だけでは,翻案権が譲渡の目的として特掲されていたということはできない
平成26年05月21日知的財産高等裁判所[平成25(ネ)10082]

本件投稿規程は,「採用された論文等の著作権は,早稲田大学政治経済学会に帰属するものとする。」と定めているのであり,翻案権が譲渡の対象として特掲されているものではないことからすれば,翻案権は論文執筆者に留保されたものと推定される(著作権法61条2項)。そして,証拠によると,本件学会誌は,政治経済学の研究者による,研究論文,研究ノート(判例研究・学会展望論文も含む)・展望論文,書評の投稿を募集しているものであるから,研究者が,学術研究の成果物である上記各論文等を投稿する際において,これらの表現形式を改変する翻案権までも譲渡していると解すべき合理的理由も存しない。したがって,仮に,原告が本件学会誌に本件原著を投稿することを承諾したときに,原告が本件投稿規定の内容を認識し得る状況があったとしても,本件投稿規程において,翻案権が特掲されていない以上,本件投稿規程により,本件原著の翻案権が本件学会に譲渡されたということはできない。
平成19年01月18日東京地方裁判所[平成18(ワ)10367]≫


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