[e054]独占的利用許諾(独占的利用権)

控訴人の有する独占的利用権は著作権者の利用許諾に基づく債権的権利であるから,その後に著作権の全部又は一部の譲渡がされた場合には,我が国の著作権法上,譲受人に対抗することができないものである。そうすると,著作権の譲受人がその取得に先行する独占的利用権の存在を知っていたことのみから,譲受人の被許諾者に対する著作権の主張が権利の濫用になると解するのは相当でなく,その権利主張が権利の濫用に当たるか否かは,著作権の取得経過等に関する事情を総合的に考慮して決すべきものである。
平成26年03月27日知的財産高等裁判所[平成25(ネ)10094]

(独占的利用権の侵害について)
前記によれば,原告会社は,原告Aらから本件写真3ないし6の著作権の独占的利用権の許諾を受け,当該著作権を独占的に利用する権限(第三者に再利用許諾する権限を含む。)を有する者であることが認められる。
したがって,原告会社は,事実上,第三者との関係において本件写真3ないし6の複製物を販売することによる利益を独占的に享受し得る地位にあると評価することができるところ,このような事実状態に基づき同原告が享受する利益は,法的保護に値するものというべきである。
そして,前記によれば,本件掲載行為により,原告会社の上記利益(本件写真3ないし6の著作権の独占的利用権)が侵害されたことが認められる。
(略)
(独占的利用権の侵害による損害について)
原告会社が有する本件写真3ないし6の著作権の独占的利用権が法的保護に値するものであることは,前記のとおりであり,同原告は,被告に対して,当該独占的利用権の侵害による損害賠償請求をし得るというべきところ,同原告が,事実上,本件写真3ないし6の複製物を販売することによる利益を独占的に享受し得る地位にあり,その限りで,著作物を複製する権利を専有する著作権者と同様の立場にあることに照らせば,同原告の損害額の算定に当たり,著作権法114条3項を類推適用することができると解するのが相当である。
平成27年4月15日東京地方裁判所[平成26(ワ)24391]

本件独占的利用権は債権であって,その侵害に対する損害賠償も本来は契約当事者である被告Aⅱに対してしか請求できないところであるが,被告Aⅰは,被告Aⅱが代表者を務め,被告Aⅱと密接な関係にある者であり,本件書籍1の出版が本件独占的利用権を侵害することを認識していた者であるから,原告は,契約当事者でない被告Aⅰによる本件独占的利用権の侵害に対しても損害賠償を請求することができる。
平成27年3月25日東京地方裁判所[平成24(ワ)19125]
【コメント】本件の控訴審平成29年9月28日知的財産高等裁判所[平成27(ネ)10057等]≫も同旨:『本件独占的利用権は債権であるが,一審被告小池書院は,一審被告Y₁が代表者を務め,一審被告Y₁と密接な関係にある者であり,本件書籍1の出版が本件独占的利用権を侵害することを認識していた者であるから,一審原告は,契約当事者でない一審被告小池書院による本件独占的利用権の侵害に対しても損害賠償を請求することができる。』

本件独占的利用許諾契約の公序良俗違反性について
ア 対価の有無について
(略)
イ 本件独占的利用許諾契約の対象となる著作物は,「甲[一審被告Y₁]の著作に係る別紙著作物目録記載の各著作物並びにその原案,原作,脚本,構成を含む各著作物と今後制作される著作物」とされ(本件著作物利用契約書1条,本件公正証書1条),本件公正証書別紙の1843作品に加え,一審被告Y₁が将来制作する全ての著作物を含み,その利用形態についても限定はなく,独占的利用許諾の期間は,「本著作物に係る全ての著作物の著作権の存続期間が満了するまで」(6条)とされている。
一審被告Y₁は,本件独占的利用許諾契約は一審被告Y₁に著しく不利であり,公序良俗に反すると主張するが,前記ア認定のとおり,一審被告Y₁は,一審原告から,独占的利用権の対価として2億円の支払を受けたほか,一審原告の取締役に就任してその経営に参画し,一審原告の株式も保有していたのであるから,本件独占的利用許諾契約の締結後も自らの著作物を管理,活用して様々な事業展開を行い,そこから得た収益から取締役としての報酬などを得ることができる地位にあったということができる。それに加えて,上記のとおり,平成22年2月9日以降は,著作物の利用のたびに使用料の支払を受けることができ,また,契約を継続しがたい重大な背信行為を行った場合などの一定の事由が発生したときには,本件独占的利用許諾契約を解除することができる(本件著作物利用契約書7条,本件公正証書7条)のであるから,本件独占的利用許諾契約は,その対象に同契約後に制作される著作物を含み,その期間が長期にわたるとしても,公序良俗に反して無効であるということはできない。また,本件独占的利用許諾契約は,一審被告Y₁に労務の提供を強制するものではないから,これが人身拘束的であるとか,奴隷契約的な内容であるとかいうこともできない。
平成29年9月28日知的財産高等裁判所[平成27(ネ)10057等]
【コメント】参考までに本件の原審平成27年3月25日東京地方裁判所[平成24(ワ)19125]≫における同論点にかかる判示部分も掲載します:
本件独占的利用許諾契約の公序良俗違反性について
ア 対価の有無について
(略)
イ 本件独占的利用許諾契約の対象となる著作物は,「甲[被告Aⅱ]の著作に係る別紙著作物目録記載の各著作物並びにその原案,原作,脚本,構成を含む各著作物と今後制作される著作物」とされ(本件著作物利用契約書1条,本件公正証書1条),本件公正証書別紙の1843作品に加え,被告Aⅱが将来制作する全ての著作物を含み,その対象著作物の範囲は極めて広範である。
被告Aⅱは,その「本著作物」の全部について,複製,翻案,公衆送信等,ほぼあらゆる形態の利用について原告に独占的利用権を許諾し,他社に利用させることができなくなるという制約を被る。
独占的利用許諾の期間は,「本著作物に係る全ての著作物の著作権の存続期間が満了するまで」(6条),すなわち,著作者である被告Aⅱの死後50年にわたるもので(著作権法51条2項),極めて長期間である。
一般に,専属実演家契約などにおいては,当該専属契約期間中に制作される著作物の著作権を事前にかつ包括的に芸能事務所に帰属させることもしばしば行われており,将来制作される著作物について,事前にかつ包括的に独占的利用権を設定したとしても,そのことをもって直ちに対象著作物の特定性に欠けるとか,公序良俗に違反するとかいうことはできない。
また,著作物の利用形態がほぼ全ての態様にわたっており,利用期間が極めて長期であるという点も,そのことは著作権譲渡契約においても同様であるから,直ちに公序良俗に違反するとはいえない。
しかし,専属実演家契約において上記のような事前かつ包括的な著作権譲渡が許容されているのは,同契約が更新があるとしても有期の契約であり,同契約の終了とともに(将来に向かって)効力を失うこと,同契約継続中は,芸能事務所から実演家に実演家報酬が支払われていること等の事情によるものと解される(東京高裁平成5年6月30日判決,東京地裁平成13年7月18日判決,東京地裁平成15年3月28日判決,東京地裁平成25年3月8日判決等参照)。
これに対して,本件独占的利用許諾契約は,被告Aⅱの死後50年まで存続するもので,当事者からの解除は一定の事由が発生したときに限られており(本件著作物利用契約書7条,本件公正証書7条),当事者が契約の拘束力から離脱する道は閉ざされている。
また,原告は,本件独占的利用許諾契約を締結した後の平成22年2月9日に本件基本合意を,同年7月1日には本件印税合意を,それぞれ締結し,本件印税合意以降に原告が収受した印税の2割(被告Aⅱが将来制作する著作物については6割)を被告Aⅱに配分することを合意しているが,それ以前には,原告が印税を受領したとしても,被告Aⅱに対する配分義務を有しない旨主張している。
そうすると,本件著作物利用契約書により本件独占的利用許諾契約が締結された平成20年1月25日頃以降,平成22年6月30日までの約2年半の間は,被告Aⅱは,いくら著作物を創作しても,それを他社に利用させて印税を得ることができず,自己の著作物から利益を得る可能性を閉ざされていたものである。
前記のとおり,本件著作物利用契約書は,被告Aⅱが将来制作する著作物についても原告に独占的利用権を設定するものであり,被告Aⅱはかかる将来の著作物を含めて合意したものではあるが,被告Aⅱの署名により真正に成立したものと認められる,旧公正証書添付の2007年(平成19年)6月11日付け契約書(以下「旧著作物利用契約書」という。)においては,原告に独占的利用権を設定する「本著作物」は「甲の著作に係る別紙著作物目録記載の各著作物(原注:以下「本著作物」という)」と,被告Aⅱが将来制作する著作物を含まない定義になっていたのであり,旧著作物利用契約書の作成から,本件著作物利用契約書,本件公正証書の作成に至るまでの間に,「本著作物」の定義が拡大され,将来の著作物を包含することになった点や,旧著作物利用契約書や旧公正証書では3年間(更新拒絶がない限り,その後は1年ごとの自動更新)とされていた契約期間(旧公正証書6条,旧著作物利用契約書5条)が,被告Aⅱの死後50年まで大幅に延長された点について,原告から被告Aⅱに十分な説明がなされた形跡はない。
これらの事情を総合考慮すると,本件独占的利用許諾契約のうち,「今後制作される著作物」を除いた部分については公序良俗に違反するとはいえないが,「今後制作される著作物」につき,原告が印税配分義務を負わずに独占的利用権を取得することを内容とする部分については,公序良俗に違反し無効であると認めるのが相当である。
もっとも,本件独占的利用許諾契約締結後に創作された著作物であっても,原告と被告Aⅱとの間の本件印税合意により,原告が受領した印税の6割が被告Aⅱに支払われるものについては,上記のように被告Aⅱが自己の著作物から利益を受ける可能性を閉ざされるものではないので,公序良俗に違反するとまではいえない。
本件独占的利用許諾契約は,被告Aⅱに労務の提供を強制するものではないから,当事者の任意解約権が排除されているとしても,これが人身拘束的であるとか,奴隷契約的な内容であるとかいうことはできない。

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