[e055]氏名表示権の侵害事例(1)

(証拠等)を総合すれば、原告設計図は、昭和457月から同年10月までの間に、原告の業務に従事する設計担当者が、その職務上、その感覚と技術を駆使して独自に製作したことが認められる。したがつて、原告設計図は、著作権により保護される著作物であり、原告は、その著作者であり、著作権者であるというべきである。
(略)
右認定の事実によれば、被告設計図は、原告設計図とは全く同一ではなく、一部の修正はあるが、著作物の同一性を変ずるものとは認められないから、被告小俣組は、被告設計図の作成に際し、原告設計図に依拠し、これを複製したものと認めるのが相当である。
次に、被告小俣組が右のように被告設計図を作成したうえ、昭和
451020日、その従業員である[]を被告ABSの代理人として右設計図を添付して建築確認申請手続をし、その際右設計図の作成者欄に原告の氏名表示をせず、被告小俣組設計部[]の表示をしたことは前記二項に認定したとおりである。
そうすると、被告小俣組が原告に無断で原告設計図の複製物たる被告設計図に原告の氏名表示をすることなく、かえつて被告小俣組もしくは
[] がその著作者であるかの如き表示をしたことは、原告が原告設計図について有する著作者人格権(氏名表示権)を侵害したものといわざるをえない。また、すでに判示したところによれば、被告ABSは、前述のとおり建築確認申請手続を被告小俣組に依頼したうえ、同被告による右侵害行為を容認し、又は少なくとも、右申請行為が適正に行なわれるよう監視、監督すべき義務を怠り、被告小俣組による右侵害行為を制止しえなかつたのであるから、被告小俣組と共同して、原告の右著作者人格権を侵害したものというべきである。さらに、すでに判示したところからすれば、被告らは、原告設計図について、原告が著作権を有することを知り、又は少なくとも取引上必要な注意を怠らなければ、これを知ることができたものであるから、原告の右著作者人格権の侵害について、故意又は過失があつたものと認定するのが相当である。したがつて、被告らは、右侵害行為により、原告が受けた損害を賠償すべき義務を負うものというべきである。
昭和52年01月28日東京地方裁判所[昭和48(ワ)4501]

もともと執筆者の氏名の具体的な掲記の方法については、被告Aの裁量に委ねられていたことは前記のとおりであるところ、同被告が、訴外Bを通じ、被告会社に対し、単に、本書の扉や目次に執筆者名を掲記することを指示するに止め、各文末にまでこれを挿入することの指示をしなかつたとすれば、それは当然裁量の範囲内の指示ということができるから、原告は、F項文末に原告の氏名が掲記されていないことにつき、なんら被告Aの責任を追及しえないというべきである。しかし、本件では、事情は異なり、被告Aは、訴外Bを通じ、執筆者全員の氏名を、扉や目次に掲記するばかりでなく、各分担執筆にかかる文末にまでも挿入するように被告会社に指示していることは前記のとおりである。そうだとすれば、特定人の文末における氏名の脱漏は、氏名を掲記されたその他の者との間に差別を生ぜしめたという意味において、結果としては、その特定人の人格権を侵害する行為となるのである。
従つて以上によれば、被告Aは、本書出版のための確定原稿を被告会社に交付するに当り、本書各編の各項目ごとの分担執筆者の氏名をその文末及び目次部分に掲記して、各分担執筆者の著作人格権を侵害しないよう注意すべき義務があるのにこれを怠り、漫然とこれを訴外Bにまかせきりにした過失により、本書F項文末及び目次同項部分に原告氏名の掲記を脱漏し、その結果原告の著作人格権を侵害したものというべきである。
昭和54年02月19日千葉地方裁判所[昭和45(ワ)637]

被告著述の「心理療法入門」の「Dの症例」(94頁から116頁)のうち94頁から114頁の2行目までの部分は、原告の著作物である「Y子の症例」の全部引用というべきものであるに拘らず、その引用であることの明示を欠き、次いで同被告著述の「遊戯療法の世界」の中には、右「Y子の症例」の引用著作物である「心理療法入門」中の「Dの症例」の引用部分において、依然として右「Dの症例」が「Y子の症例」の引用であることが示されず、かえつてそれが被告の著作物であるものとして引用されたものであり、同被告の右両著述は、前者はそれ自体で、後者は前者と相俟つて、原告がその著作物「Y子の症例」につき有する氏名表示権(著作権法19条)を侵害したものということができる
昭和60年05月29日大阪地方裁判所[昭和58(ワ)3781]≫

被告が本件小説に関する原告の氏名表示権を侵害したかどうかについて
  右の事実によると、本件小説は本件脚本に基づいて執筆されたものであると認められるから、本件小説は、本件脚本を原著作物とする二次的著作物であると認められる。したがって、原告は、本件小説の公衆への提供に際して原著作者として氏名表示権を有する(著作権法19条後段)。
 右のとおり、河出書房新社は、本件小説の単行本の初校正ゲラ刷りの段階では、奥付に著者である「D」と原著作者である「A(原案)」を二段に併記していたが、F【注:被告の従業員】からの申入れにより、現実に出版された単行本の奥付には「著者D」とだけ表記して「A(原案)」の部分を削除し、原告の氏名は、奥付の前頁の映画の「スタッフ」の所に「脚本・監督  A」と表記されたのみであったと認められる。
右の現実に出版された単行本の奥付の記載では、原告の氏名は、映画のスタッフとして表記されたのみであって、本件小説の原著作者として表記されたとは認められない。これに対し、河出書房新社が作成した本件小説の単行本の初校正ゲラ刷りの段階では、原告の氏名が、本件小説の原著作者として表記されていたものと認められる。        そうすると、Fは、河出書房新社に対して申入れをして、本件小説の原著作者としての原告の氏名の表記を削除させたということができるから、この行為は、本件小説に関する原告の氏名表示権を侵害する行為であるということができる。
(略)
4 右認定の事実によると、右のFの氏名表示権侵害行為は、被告の従業員が被告の事業の執行に付き行ったものと認められるから、被告は、右侵害行為によって原告が被った損害を賠償する責任があるというべきである。
平成12年04月25日東京地方裁判所(平成11(ワ)12918)≫

被告の公衆送信及び本件各地方ネットワーク局の各公衆送信においては,本件著作物【注:原告作成のインターネットホームページ上の米国デンバー市を紹介したウェブサイトで掲載されていた、原告撮影にかかる、原告の知人であるデンバー元総領事の肖像写真のこと】の一部分を著作者として原告の氏名を表示しないで放送されたものであるところ,そのうち,平成13年7月10日放送の「ニュース プラス1」及び「きょうの出来事」においては,本件ウェブページ全体の映像を映した上で,そのナレーションにおいて「A氏【注:デンバー元総領事のこと】のホームページ」と述べて,同番組を見た視聴者に対し,本件著作物の出所を明示しているかのように報道し,本件著作物につき,著作者として原告の氏名を表示しなかったにとどまらず,事実と異なる出所表示をしたものであり,氏名表示権の侵害態様は重大なものがある。
平成17年03月24日東京高等裁判所[平成16(ネ)3565]

控訴人は,控訴人書籍の表紙カバーの見開き下部に,「【カバー・本文マンモス写真提供】東京慈恵会医科大学・高次元医用画像工学研究所」と表示されていることをもって,著作者名の表示がある旨を主張する。しかし,当該表示が本件画像1の著作者である被控訴人の氏名の表示といえないことは明らかである。
平成24年04月25日知的財産高等裁判所[平成23(ネ)10089]

被告らは,被告ら共著論文1のうち105頁の引用部分ではその脚注に原告の氏名を表示し,さらに被告ら共著論文1の末尾では原告論文の筆者名,発表年,題号及び引用した文章の所在を示すURLを記載していると主張する。
確かに,前記のとおり,被告ら共著論文1の105頁の引用部分には,原告論文の著作者名として原告の氏名が表示されており,当該部分については,原告の氏名表示権が侵害されているとはいえないが,104頁においては,原告の氏名は全く表示されておらず,104頁の記述と105頁の記述は,その一部ではほぼ同一であるものの,全体としては異なる文章であるから,105頁の記述に原告の氏名が表示されているからといって,104頁の記述において原告の氏名を表示しなくてよいということはできない。また,被告ら共著論文1の末尾には,「文献」との標題の下に,原告論文を含む13の文献の著作者名や題名等が表示されているが,その体裁からすれば,これらの表示は単に被告ら共著論文1における参考文献を列挙したものであると認められ,そこでは個々の文献と本文中における引用又は参考とした箇所との繋がりは何ら明示されていないのであるから,このような表示をもって,被告ら共著論文1の104頁の記述について,原告の氏名が表示されているということはできない。
平成27年3月27日東京地方裁判所[平成26(ワ)7527]≫
【コメント】本件の控訴審平成27年10月6日 知的財産高等裁判所[平成27(ネ)10064等]≫では次のように述べています:
『被告Y2及び被告Y1は,文献で氏名が表示されていれば氏名表示権の問題は生じず,個々の文献と本文中における引用又は参考とした箇所との繋がりを明示する必要はない,原告表現2は,原告独自の思想を表現したものではないから,文献末尾に引用されていれば十分であると主張する。しかし,文献末尾に,単に著作者の氏名が表示されるだけでは,文献として著作者の著作物の内容を参考としたのか,著作物を複製等するなどして利用したのかを区別することができず,著作物について著作者としての氏名を表示したものとはいえない。一般的に,論文において,慣行として,引用箇所ごとに氏名を表示するのが一般的であるのも,かかる区別を明確にするためと解される。また,氏名表示権を規定する著作権法19条は,著作者の著作物に表現された思想が独創的であることを要件としておらず,独創性の程度によって,著作物との関連が明らかではないような氏名の表示方法が許容されると解すべき根拠はない。したがって,被告Y2及び被告Y1の主張は採用できない。』

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