[e056]法20条2項の意義と解釈(4号関係)

著作権法は、著作物は、著作者の人格の反映であることから、前述のように、著作者の意に反する著作物に対する変更、切除、改変等の行為を禁止し、著作物の同一性を保持することにより著作者の人格権の保護を図っているものである。しかしながら、他方、かかる同一性保持権を厳格に貫いた場合には当該著作物の利用上支障が生じ、かつ、著作権者においても同一性保持権に対する侵害を受忍するのが相当であると認められる場合については、同条
2項において、著作権者の意思に係らしめず、その同意を得ることなく変更、切除、改変等の行為が許容される例外的場合を規定しているところである。
これによれば、同項1号においては、用字、用語等において多くの教育的配慮が要請される教科用図書、すなわち、小学校、中学校又は高等学校その他これらに準ずる学校における教育の用に供される検定済図書等に著作物を利用する場合及び著作物を学校向けの放送番組において放送する場合又は当該放送番組用の教材に掲載する場合を、同項2号においては、主として居住という実用的目的に供される建築物の増築、改築、修繕又は模様替えの場合を、それぞれ規定しているところである。
そこで、同項3号【注:現4号】における「著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしてやむを得ないと認められる改変」の意義についてみると、同条2項の規定が同条1項に規定する同一性保持権による著作者の人格的利益保護の例外規定であり、かつ、例外として許容される前記の各改変における著作物の性質(主として前記2号の場合)、利用の目的及び態様(前記1号、2号)に照らすと、同条3号の「やむを得ないと認められる改変」に該当するというためには、利用の目的及び態様において、著作権者の同意を得ない改変を必要とする要請がこれらの法定された例外的場合と同程度に存在することが必要であると解するのが相当というべきである。
平成3年12月19日東京高等裁判所[平成2(ネ)4279]≫


右規定【注:著作権法20条2項4号】は、同一性保持権による著作者の人格的利益保護を例外的に制限する規定であり、かつ、同じく改変が許容される例外的場合として規定された同項1号ないし3号の掲げる内容との関係からすれば、同項4号の「やむを得ないと認められる改変」に該当するというためには、著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らし、著作物の改変につき、同項1号ないし3号に掲げられた例外的場合と同様に強度の必要性が存在することを要するものと解するのが相当である。
平成10年10月29日東京地方裁判所[平成7(ワ)19455]≫

上記校正の内容についてみると,本件原稿について改変されている部分は,いずれも,分担執筆に係る複数の原稿により構成されるという本件書籍の性質上,法律名の略称や仮名遣いを統一した点や,法律解説書という観点から本件原稿において不正確ないし不適切な表現を手直ししたものであって,その校正内容は,本件書籍の性質に照らせば不相当なものとはいえない。改変内容が,上記のようなものであることに加えて,被告において,本件書籍の出版を間近に控えて短時間のうちに校正を行う必要に迫られていたという事情のあることをも併せて考慮すれば,上記改変は,やむをえない改変(著作権法20条2項4号)にとどまるものというべきである。
平成16年11月12日東京地方裁判所[平成16(ワ)12686]

控訴人は、引用の場合においては、「やむを得ない」改変か否かの解釈認定は、より一層慎重な吟味が必要であり、他にとるべき方法が全くなく、真にやむにやまれぬ状況でない限り適法とすべきではないと主張する。しかし、著作権法20条2項4号においては、「やむを得ない改変」か否かについて、引用であるか、それ以外の場合であるかを特別に区別していない。そして、これを実質的に考えても、引用は、新しい文化活動をしようとする者と著作権者との調整として、著作物の利用を許した規定であって、著作物の利用が許されているという点において、著作物の利用が許されている他の場合と異なるものではない。そうである以上、「やむを得ない」改変か否かの解釈において、「やむを得ない」か否かが「引用」との関連において判断されるという当然の点は別として、他の場合と異なる基準を設けなければならない理由はないのである。控訴人の主張は、採用することができない。
(略)
原カット(イ)、(ニ)、(ホ)は醜く描写されているために名誉感情を侵害するおそれがあり、カット4、53、54においては、目隠しによって、名誉感情を侵害するおそれが低くなっていることが明らかであるから、右目隠しは、相当な方法というべきである。
平成12年04月25日東京高等裁判所[平成11(ネ)4783]≫

被告らは,本件入れ墨の写真画像について,陰影を反転させ,かつ,セピア色の単色に変更させた点は,被告Xの大腿部に施された入れ墨をそのまま使用することが相当でない点を考慮すれば,著作権法20条2項4号所定の「やむを得ない改変」に該当すると主張する。しかし,本件入れ墨を撮影した写真を書籍に掲載することがふさわしくない事情があるからといって,本件入れ墨を改変して,本件書籍に掲載することが,著作権法20条2項4号所定の「やむをえない改変」に該当するとして,その掲載が許されるものではない。被告らの主張は採用の限りでない。
平成24年01月31日知的財産高等裁判所(平成23(ネ)10052)

著作権判例エッセンス トップ 


     Kaneda Copyright Agency
     カネダ著作権事務所


      Home  メール相談  契約マネジメント  文化庁登録マネジメント  侵害対応マネジメントその他 
      アメリカ著作権局登録マネジメント