[e059]氏名表示権の侵害性

著作者人格権としての氏名表示権(著作権法19条)については,著作者が他人名義で表示することを許容する規定が設けられていないのみならず,著作者ではない者の実名等を表示した著作物の複製物を頒布する氏名表示権侵害行為については,公衆を欺くものとして刑事罰の対象となり得ることをも別途定めていること(同法121条)からすると,氏名表示権は,著作者の自由な処分にすべて委ねられているわけではなく,むしろ,著作物あるいはその複製物には,真の著作者名の表示をすることが公益上の理由からも求められているものと解すべきである。したがって,仮に一審被告と一審原告との間に本件各銅像につき一審被告名義で公表することについて本件合意が認められたとしても,そのような合意は,公の秩序を定めた前記各規定(強行規定)の趣旨に反し無効というべきである。
一審被告は,著作権法
19条が氏名表示権の行使の一内容として,明文を以て著作者の変名を表示することや著作者名を表示しないことも認めていることを理由に,真の著作者名を表示することが公益上の理由からも求められていると解することは妥当でないとも主張するが,著作権法は,真の著作者の変名表示や非表示を認めるにすぎず,真の著作者ではない者を著作者と表示することまでも許容する趣旨ではないから,一審被告の上記主張は採用することができない。
平成18年02月27日知的財産高等裁判所[平成17(ネ)10100等]≫

原告の単独の著作物である本件著作物につき,被告次郎との共同著作物であるかのような表示を付して本件出版物として出版した行為は,原告の氏名表示権を侵害したものというべきである。
平成13年09月20日東京地方裁判所[平成11(ワ)24998]

被控訴人が控訴人Aの意に反して甲曲を改変した乙曲を作曲した行為は、同控訴人の同一性保持権を侵害するものであり、さらに、同控訴人が甲曲の公衆への提供又は提示に際しその実名を著作者名として表示していることは前示のとおりであるところ、被控訴人は、乙曲を甲曲の二次的著作物でない自らの創作に係る作品として公表することにより、同控訴人の実名を原著作物の著作者名として表示することなく、これを公衆に提供又は提示させているものであるから、この被控訴人の行為は、同控訴人の氏名表示権を侵害するものである。
平成14年09月06日東京高等裁判所[平成12(ネ)1516]

被告書籍の第3章は,原告の著作物又はこれを原著作物とする二次的著作物を含むところ,(証拠)によれば,被告らは,被告書籍の発行に際し,原告の同意を得ることなく,被告書籍に原告の氏名を著作者名として表示しなかったことが認められるから,被告らは,原告の氏名表示権を侵害するものと認められる。
被告らは,被告書籍の参考文献欄等に原告の氏名を表示したと主張する。(証拠)によれば,被告書籍において,原告の氏名は,あとがき欄には協力者として,参考文献欄には参考文献である原告書籍の著者として,それぞれ表示されていることが認められるが,氏名表示権は,「著作者名として」表示し,又は表示しないこととする権利であるから(著作権法
19条1項),協力者や参考文献の著者として表示されるだけでは足りない。被告らの上記主張は,採用することができない。
平成25年03月14日東京地方裁判所[平成23(ワ)33071]

氏名表示権(著作権法19条)については,公表権(同法18条)のように,著作者の同意があれば侵害の成立を阻却することを前提とする規定(同条2項)が設けられていないこと,著作者ではない者の実名等を表示した著作物の複製物を頒布する氏名表示権侵害行為については,公衆を欺くものとして刑事罰の対象となり得ることをも別途定めていること(同法121条)からすると,氏名表示権は,著作者の自由な処分にすべて委ねられているわけではなく,むしろ,著作物あるいはその複製物には,真の著作者名を表示することが公益上の理由からも求められているものと解すべきである。
平成17年06月23日東京地方裁判所[平成15(ワ)13385]≫


著作権判例エッセンス トップ 


     Kaneda Copyright Agency
     カネダ著作権事務所


      Home  メール相談  契約マネジメント  文化庁登録マネジメント  侵害対応マネジメントその他 
      アメリカ著作権局登録マネジメント