[e060]法19条3項の意義と解釈

被告らは,本件DVDの商品価値は,撮影されている映像の資料的価値ではなく,編集作業による側面が強いことを理由として,素材となった映像を撮影したにすぎない原告の氏名を表示しなくても,原告が著作者であることを主張する利益を害するおそれがないか,又は公正な慣行に反せず,氏名表示権の侵害には当たらない(著作権法19条3項)と主張する。
しかしながら,氏名表示権は,二次的著作物の公衆への提供等に際しての原著作物の著作者名の表示についても認められること(著作権法19条1項)からすれば,仮に,本件DVDの商品価値が補助参加人による編集作業による側面が強いとしても,そのことのみをもって,本件DVDの素材である本件映像を撮影した原告の氏名を表示しないことが,原告が著作者であることを主張する利益を害しないものとは認められず,また,それが公正な慣行に反しないものであるとも認められないから,被告らの前記主張は,採用することができない。
したがって,被告が本件DVDに撮影者として原告の氏名を表示せずにこれを販売したことは,原告の本件映像についての氏名表示権を侵害すると認められる。
平成22年04月21日東京地方裁判所[平成20(ワ)36380]

著作権法は,著作者の人格的利益を保護するために,著作者人格権としての氏名表示権を認めており,同権利は,二次的著作物の公衆への提供等に際しての原著作物の著作者名の表示についても認められることに鑑みれば,仮に,本件ビデオ映像の価値や本件テレビ番組の編集方法について,被告らの主張する事実が認められるとしても,そのことのみをもって,本件ビデオ映像を撮影した原告の氏名を,同映像を素材として制作された本件テレビ番組に表示しないことが,原告が著作者であることを主張する利益を害するおそれがないものとも,公正な慣行に反しないものであるともいうことはできない。
平成24年03月22日東京地方裁判所[平成22(ワ)34705]

同項【注:著作権法19条3項】にいう「著作物の利用の目的及び態様に照らし」とは,著作物の利用の性質から著作者名表示の必要性がないか著作者名の表示が極めて不適切な場合を指すものと解される。
平成18年03月31日東京地方裁判所[平成15(ワ)29709]

氏名表示権侵害の成否につき
原告は,被告各番組において原作者として原告の氏名が表示されていないとして氏名表示権侵害を主張するところ,前記のとおり,被告各番組のエンドロールで,「参考文献X著『田沼意次主殿の税』」,「参考文献X著『開国愚直の宰相堀田正睦』」,「参考文献X著『調所笑左衛門薩摩藩経済官僚』」と表示されていたことが認められる。
上記各表示は,原告各小説と併せて「X著」と表示して,その著者が原告であることをその実名の表示をもって示しているものと認めることができる。
そして,「参考文献」との記載によって,被告各番組が原告各小説に依拠して制作されたことは明らかであるから,被告各番組は原告各小説の二次的著作物に該当すると認められるところ,上記各表示は,「その著作物を原著作物とする二次的著作物の公衆への提供又は提示に際しての原著作物の著作者名の表示」(著作権法19条1項後段)に該当するものと認められる。
仮にそうでないとしても,同条3項は,「著作者名の表示は,著作物の利用の目的及び態様に照らし著作者が創作者であることを主張する利益を害するおそれがないと認められるときは,公正な慣行に反しない限り,省略することができる」と規定するところ,そもそも,前記のとおり,本件において著作権(複製権,翻案権)侵害が認められるのは,被告各番組のうち,被告番組1については被告番組1-2-1,被告番組2については被告番組2-5-6,被告番組3については被告番組3-4-6,被告番組4については被告番組4侵害認定表現部分,被告番組5については被告番組5侵害認定表現部分に限られ,ほとんどの部分において複製権侵害,翻案権侵害のいずれも成立していないこと,そして,前記のとおり被告各番組のエンドロールにおける上記表示において,「参考文献」として原告各小説が原告の実名とともに表示されており,かかる表示態様である以上,被告各番組が原告各小説に依拠して制作されたことが十分に感得できること,この点,(証拠等)によれば,被告は,シリーズ「THE ナンバー2~歴史を動かした陰の主役たち」のテレビ番組において,被告各番組と同様に,その回の主要参考文献とした作品については,番組のエンドロールにおいて「参考文献」として当該作品のタイトルとその著者名を併記したものを字幕表示していたことが認められること,それらの諸事情を総合すると,本件においては「著作物の利用の目的及び態様に照らし著作者が創作者であることを主張する利益を害するおそれがない」(同条3項)と認めるのが相当である。
また,歴史小説を題材に制作されたテレビ番組において,番組のエンドロールにおいて題材にされた歴史小説のタイトルとその著者名を併記したものを字幕表示するという方法は,通常行われる方法であるといえるところ,被告が被告各番組において行った前記の表示態様は,上記の方法に沿って行われたものであるから,「公正な慣行に反しない」(同項)ものであると認めるのが相当である。
したがって,同項により,著作者名である原告の氏名の表示を省略することができるものというべきである。
よって,被告各番組の公衆への提供又は提示は,原告の氏名表示権を侵害するものではないと認めるのが相当である。
平成27年2月25日東京地方裁判所[平成25(ワ)15362]≫

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