[e061]著作者人格権侵害総論

著作者人格権は,有体物としての書籍(本)そのものを保護の対象としているわけではなく,その書籍に文字や写真やイラストなどをもって固定されている表現内容などが著者に無断で変更されたり,使用されたりしないよう保護しているものであるところ,本件では,有体物としての書籍(本)そのものを除籍して廃棄したもので,その書籍の表現内容などに変更を加えたりしたものではないから,原告らの著作者人格権ないしは著作者の人格権そのものを侵害したという事案ではない。
平成15年09月09日東京地方裁判所[平成14(ワ)17648]

著作者人格権について検討するに、著作権法は、第2章第3節の「第2款 著作者人格権」において、公表権(18条)、氏名表示権(19条)及び同一性保持権(20条)の規定を設けるほか、113条において、著作者の名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為(5項【注:現6項】)等が著作者人格権を侵害する行為とみなされる旨規定しているが、他に、著作者人格権を包括的に定義する規定やこの意義を解釈する指針となるべき規定を設けていない。そうすると、著作権法は、上記18条ないし20条に規定する権利及び113条により著作者人格権侵害とみなされる行為の禁止により保護されるべき権利を「著作者人格権」として規定したものというべきであって、これ以外の権利を著作者人格権に含めて解すべき根拠はない。控訴人は、著作権法が、上記のとおり公表権、氏名表示権及び同一性保持権のほか、113条において著作者人格権の侵害とみなす行為を規定していることを根拠の一つとして、著作者が自己の著作物に対して有する人格的、精神的利益の保護を受ける権利を総称して著作者人格権というべきである旨主張するが、113条は、著作者人格権の侵害とみなす行為の内容を各項所定の類型に分類して規定しており、その内容について「著作者が自己の著作物に対して有する人格的、精神的利益を侵害する行為」というような包括的な定義をしているわけではないから、113条の規定を根拠として、著作者人格権の内容を控訴人主張のような包括的権利と解することはできない。したがって、著作権法は、18条ないし20条及び113条に明文の規定を有する上記権利以外のものについては、著作者人格権としてではなく、人格権一般の問題として民法709条による不法行為法上の保護を図っているものと解するのが相当である。
平成13年08月29日東京高等裁判所[平成13(ネ)147]

科学等の著述をなすに際し、その分野の先行文献を引用するか否かは、本来該当著述者の自由にまかされているものであつて、先行文献の引用が適切にされていない場合に、引例の不適切としてその著述の内容ひいてはその著述者の学識に対する低評価等がもたらされることがありうることは格別として、著作権法上は先行文献を著述において引用(使用)していない以上当該先行文献の著作者の著作者人格権の侵害が問題となることはないことが明らかである。
したがつて、本件著作物が引用されていないことをもつて著作者人格権の侵害であるとの立論に基づく原告の本訴請求は、失当といわざるをえない。
昭和57年12月10日東京地方裁判所[昭和57(ワ)8975]

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