[e063]職務著作規定の趣旨

著作権法15条1項は,法人等において,その業務に従事する者が指揮監督下における職務の遂行として法人等の発意に基づいて著作物を作成し,これが法人等の名義で公表されるという実態があることにかんがみて,同項所定の著作物の著作者を法人等とする旨を規定したものである。
平成15年4月11日最高裁判所第二小法廷[平成13(受)216]

新著作権法は,法人等における著作物の創作の実態等から,一定の要件の下に法人等の被用者が職務上作成する著作物についてその著作者を当該法人等とする職務著作の規定(15条)を設け,前記原則の例外を規定している。すなわち,法人等において被用者が職務上作成する著作物には多種多様なものが含まれ,様々な創作態様のものがあるところ,被用者が雇用契約等に基づく指揮監督の下に作成する著作物には,作成に関与した個々の被用者の個性の表出が乏しいうえ,その中には創作行為に関与した者の特定が必ずしも容易ではなく,また,仮にその特定ができた場合であっても複数の作成関与者の創作行為の範囲や寄与の程度等を明らかにすることが困難なものが多数あり得ること,そのため,それが法人等の名義で公表されることが予定される場合には,公表により法人等が当該著作物に対する社会的な責任を負うと同時にこれに対する社会的な評価をも受けることとなるため,個々の作成関与者については当該著作物に関する人格的利益の保護を考慮することを要しないものと考えられること,法人等の経済的な負担において作成されたそれらの著作物を当該法人等が利用するに当たり,当該著作物の権利関係を集中し,明確にしなければ,その円滑な利用に支障を来す場合が少なくないものと考えられること,それゆえそのような著作物については,法人等と作成に関与した被用者との間において,当該著作物の著作権を法人等に原始的に帰属させるとするのが当事者の意思に沿うものと推測されること等の法人等における著作物の創作の実態や当該著作物の利用の便宜の必要性等を考慮し,新著作権法は,一定の要件の下に法人等が著作者となることを認めている。
平成20年07月30日知的財産高等裁判所[平成19(ネ)10082]

我が国の著作権法が職務著作の規定(著作権法15条1項)を設けた趣旨は,著作権法自体が,登録主義を採用する特許法等と異なり,創作主義を採用しているため,著作物を利用しようとする第三者にとって,法人等の内部における権利の発生及び帰属主体が判然としないこと,法人等の内部における著作活動にインセンティブを与えるために,資金を投下する法人等の使用者を保護する必要があること,従業者としても,法人等の使用者名義で公表される著作物に関してはその権利を法人等の使用者に帰属させる意思を有しているのが通常であり,その著作物に関する社会的評価も公表名義人である法人等の使用者に向けられるという実態が存することなどから,著作権及び著作者人格権のいずれについても,個別の創作者による権利行使を制限し,その権利の所在を法人等の使用者に一元化することによって,著作物の円滑な利用・流通の促進を図ったものであると理解すべきである。
平成20年06月25日東京地方裁判所[平成19(ワ)33577]

著作権法15条の趣旨は,雇用関係等にある者がその職務上作成する著作物については,使用者たる法人等が通常その作成費用を負担し,創作に係る経済的リスクを負担していること,法人等の内部で職務上作成された著作物につき社会的に評価や信頼を得,また責任を負うのは,社会の実態として,通常当該法人等であるとみられること,上記のような著作物については,著作者を当該法人等とする方が著作物の円滑な利用に資することから,著作者を使用者たる法人等とした点にあるものと解される。
平成20年09月24日那覇地方裁判所[平成19(ワ)347]

法は,旧15条及び現行15条1項を通じて,著作行為をし得るのは,自然人であるとの前提に立ちつつ,著作権取引等の便宜を考慮し,法人等において,その業務に従事する者が指揮監督下における職務の遂行として法人等の発意に基づいて著作物を作成し,これが法人等の名義で公表されるという実態があることにかんがみ,法人等を著作者と擬制し,所定の著作物の著作者を法人等とする旨規定したものであるが(最高裁平成15年4月11日第二小法廷判決参照),プログラムの著作物については,プログラムの多くが,企業などの法人において多数の従業員により組織的に作成され,その中には,本来公表を予定しないもの,無名又は作成者以外の名義で公表されるものも多いという実態があるなどプログラムの特質にかんがみ,現行15条2項において,公表名義を問うことなく,法人等が著作者となる旨定めたものと解するのが相当である。
平成18年12月26日知的財産高等裁判所[平成18(ネ)10003]

仮に,職務著作の創作の過程において,法人等が従業員に対し,何らかの不法行為又は債務不履行に当たる行為をしたとしても,当該行為が別途損害賠償請求等の対象となる可能性があることはあっても,当該行為の存在が著作権法15条2項の適用の可否に影響を及ぼすものでないことは明らかである。
平成28年10月21日東京地方裁判所[平成27(ワ)20841]/平成29年5月23日知的財産高等裁判所[平成28(ネ)10113]≫

著作権判例エッセンス トップ 


     Kaneda Copyright Agency
     カネダ著作権事務所


      Home  メール相談  契約マネジメント  文化庁登録マネジメント  侵害対応マネジメントその他 
      アメリカ著作権局登録マネジメント