[e073]図・表の著作物性

表に著作物性が認められる場合は、表の形式そのものが特別のものであったり、表を構成する項目の選択やその記載の順序などに特別の工夫が見られる場合に限られるものである。
平成12年03月08日名古屋地方裁判所[平成4(ワ)2130]≫

実験結果等のデータ自体は,事実又はアイディアであって,著作物ではない以上,そのようなデータを一般的な手法に基づき表現したのみのグラフは,多少の表現の幅はあり得るものであっても,なお,著作物としての創作性を有しないものと解すべきである。なぜなら,上記のようなグラフまでを著作物として保護することになれば,事実又はアイディアについては万人の共通財産として著作権法上の自由な利用が許されるべきであるとの趣旨に反する結果となるからである。
平成17年05月25日知的財産高等裁判所[平成17(ネ)10038]≫

原告チャートを作成するに至った技術的知見ないしアイデア自体に独自性や新規性があるとしても,その技術的知見ないしアイデア自体は,著作権法により保護されるべきものということはできず,著作権法は,その技術的知見ないしアイデアに基づいて個性的な表現方法が可能である場合に,個性的に具体的に表現されたものについてこれを保護するものであり,原告チャートについては,その技術的知見ないしアイデアそのものがそのまま表現されているものといわざるを得ない。
平成17年11月17日東京地方裁判所[平成16(ワ)19816]≫

本件図表は,各金融機関が提供する住宅ローン商品の金利情報について,全国又は各地域別の金融機関ごとに,その商品名,変動金利の数値,固定金利(1年,2年,3年,5年,7年,10年,15年,20年,25年,30年,35年の固定期間別)の数値を表示して金利を対比した表及びそれらの金利の低い順に昇降順に並べて対比した表であり,金利情報をこのような項目に分類して対比した図表及び金利の低い順に昇降順に並べて対比した表は,他に多く存在し,ありふれたものであって,思想又は感情を創作的に表現したものということはできない
平成22年12月21日東京地方裁判所[平成22(ワ)12322]

株式の値動きを図表として表現するに当たり、縦軸に価格(上方ほど金額が高くなる。)、横軸に時間(左から右向きに時間が経過する。)をとること、単位期間(日、週、月)ごとの価格の変動の幅を長方形により表すこと、価格が上昇したか下落したかによって右の長方形を色分けすること、右のようして単位期間ごとに描いた長方形を時間の経過に沿って横軸方向に並べていくことは、従前から一般に行われているありふれた表現方法であると認められるから、原告図表につき、これを原告が「創作的に表現したもの」であると認めることはできない。なお、右のような表現方法をとるに当たり、一定の日、週又は月数の終値の平均値をもとにし、さらに短期、中期及び長期の三つの指標を組み合わせて図表を作成することが原告の独自の発案によるものであるとしても、原告が創作したと主張するものは思想自体であり、これを表現ということはできないから、著作権法による保護の対象となるものでない。
平成12年03月23日東京地方裁判所[平成10(ワ)15833]

著作権法にいう著作物とは、思想又は感情を創作的に表現したものであるが、控訴人が知恵蔵の素材であると主張する柱、ノンブル、ツメの態様、分野の見出し、項目、解説本文等に使用された文字の大きさ、書体、使用された罫、約物の形状などが配置される本件レイアウト・フォーマット用紙及び控訴人が知恵蔵の素材であると主張する柱、ノンブル、ツメの態様、分野の見出し、項目、解説本文等に使用された文字の大きさ、書体、使用された罫、約物の形状は、編集著作物である知恵蔵の編集過程における紙面の割付け方針を示すものであって、それが知恵蔵の編集過程を離れて独自の創作性を有し独自の表現をもたらすものと認めるべき特段の事情のない限り、それ自体に独立して著作物性を認めることはできない。
平成11年10月28日東京高等裁判所[平成10(ネ)2983]

本件レイアウト・フォーマット用紙の作成も、控訴人の知的活動の結果であるということはいえても、それは、知恵蔵の刊行までの間の編集過程において示された編集あるいは割付け作業のアイデアが視覚化された段階のものにとどまり、そこに、選択され配列された分野別の「ニュートレンド」、「新語話題語」、「用語」等の解説記事や図表・写真を中心とする編集著作物である知恵蔵とは別に、本件レイアウト・フォーマット用紙自体に著作権法上保護されるべき独立の著作権が成立するものと認めることはできない。
平成11年10月28日東京高等裁判所[平成10(ネ)2983]

積算くん【注:建築積算アプリケーションソフトのこと】の意匠内外装積算ソフトは、著作者の意匠内外装の積算に関する知見に基づき、製作されたものであり、その表示画面は、同ソフトを使用する者が意匠内外装積算を行いやすいように配慮して、著作者が製作したものであると考えられるから、右表示画面は、著作者の知的精神活動の所産ということができる。
被告らは、積算くんが実用品ないし工業製品であるから「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」ではないと主張するが、そこに表現されている内容が、技術的、実用的なものであるとしても、その表現自体が知的、文化的精神活動の所産と評価できるものであれば、右要件は充足されるから、被告らの主張は採用することができない。
なお、原告は、積算くんの表示画面は美術の著作物であると主張するようであるが、表示画面に美的要素があることは否定できないとしても、その表示画面の表示形式、表示内容からすると、積算くんの表示画面を、あえて分類するとすれば、学術的な性質を有する図面、図表の類というべきである。
平成12年03月30日大阪地方裁判所[平成10(ワ)13577]

被告らは、積算くんの表示画面は、書式にすぎず、「思想又は感情の表現」ではないと主張するが、書式であったとしても、どのような項目をどのように表現して書式に盛り込むかという点において著作者の知的活動が介在し、場合によっては、その表現に著作者の個性が表れることもあると考えられるから、単に積算くんの表示画面が書式であることをもって、右要件を否定することはできない。
平成12年03月30日大阪地方裁判所[平成10(ワ)13577]

「天・人・地・総・外」の五格を構成する字画数によって姓名判断を行うことや姓名判断に際して,一字姓,一字名の場合に,上下に各一を加えるということ自体は,アイデアである。上記図形は,そのような姓名判断法に基づく極めて単純な図形であって,このような図形は,上記姓名判断法に基づく限り,誰が作成しても同様の表現とならざるを得ないから,表現上の創作性を有するものとして著作権法によって保護される著作物には該当しない。
平成14年11月26日東京地方裁判所[平成14(ワ)5467

本件各方位盤は,方位の吉凶を示す図であり,気学では方位を特に重要視し,人の動きによって受ける吉凶の影響を前もって知っておくことの重要性を教えているというのであるから,方位の吉凶に関係のある要素を方位盤に織り込むことはありふれた表現にすぎない。また,方位盤が方位を示すものであることからすれば,これを八角形で表すこと自体はありふれた表現であるし,上記のように方位を八分割した八角形の図に吉凶を示す事項を記載することは,本件類似書籍にも見られるところである。方位,八卦のマーク,火の場所,十二支及び九星の5つの要素を織り込んだ点についても,本件各方位盤におけるそれらの表現は,同様にありふれたものである
したがって,本件各方位盤は,原告の思想又は感情を創作的に表現したものとはいえず,素材の選択又は配列によって創作性を有するものともいえないから,著作物あるいは編集著作物とは認められない。
平成17年09月28日東京地方裁判所[平成16(ワ)4697]

本件カレンダーの万年暦と索引表の組合わせ、左右に暦年を配し、上段に各月を配し、その交点に長方形の色彩を配する万年暦の構成は、回転型式やスライド型式で既知のものとなつている万年暦の構想を、索引表と標識体の組合わせによるカレンダー方式に置き換えただけのものであつて、右既知の万年暦の思想を伝達するものとして特に学術的な創作的表現といい得るかどうかには、それが実用新案法上、新規な考案として認め得るにしても、いまだちゆうちよを覚える。
のみならず、前記本件カレンダーの構成は、本件考案が実施された結果の具体的表現形態そのものであり、本件カレンダーは結局のところ本件考案の一実施例品というべきものである。そうだとすると、左様な考案を考案それ自体として実用化した作品は、たとえその考案が学術的なものであり、新規独創性を有するにせよ、単なる実用品であつて当該思想(考案)を「創作的に表現する」著作物には該らない(右考案の内容を説明するための記述や図表は学術思想の表現として著作物性を有するが、考案の実施である作品そのものには著作物性がない)ものと解すべきである。
昭和590126日大阪地方裁判所[昭和55()2009]

折り紙作品の折り図は,当該折り紙作品の折り方を示した図面であるが,その作図自体に作成者の思想又は感情が創作的に表現されている場合には,当該折り図は,著作物に該当するものと解される。
もっとも,折り方そのものは,紙に折り筋を付けるなどして,その折り筋や折り手順に従って折っていく定型的なものであり,紙の形,折り筋を付ける箇所,折り筋に従って折る方向,折り手順は所与のものであること,折り図は,折り方を正確に分かりやすく伝達することを目的とするものであること,折り筋の表現方法としては,点線又は実線を用いて表現するのが一般的であることなどからすれば,その作図における表現の幅は,必ずしも大きいものとはいい難い。
また,折り図の著作物性を決するのは,あくまで作図における創作的表現の有無であり,折り図の対象とする折り紙作品自体の著作物性如何によって直接影響を受けるものではない。
平成23年05月20日東京地方裁判所[平成22(ワ)18968]

本件構成【注:「形の最小単位は直角三角形であり,この三角形二つの各最大辺を線対称的に合わせて四角形を構成し,この四角形五つを円環的につなげた形二つをさらにつなげた形」と表現される構成(本件構成)】自体は,そのような形の衣服を作成するという抽象的な思想又はアイデアにすぎず,上記思想又はアイデアを編み物として具現化する過程において,編み目の方向の変化,編み目の重なり,各モチーフの色の選択等によって具体的表現となるに至るものであるから,原告編み図に本件構成が表示されている点は,思想又はアイデアを表示したにとどまるものというべきであり,この点をもって,原告編み図に著作物性を認めることはできない。
平成23年12月26日東京地方裁判所[平成22(ワ)39994]

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