[e078]振付けの著作物性

「キラキラひかる」や「ピカピカひかる」の上記歌詞に合わせて両手首を回すことは,星が瞬く様子を表すものとして,誰もが思いつくようなありふれた表現であり,また,「キラキラひかるおおきなほし」と「ピカピカひかるちいさなほし」の対比として,前者では両手を高く上げて腕を大きく振り,後者では,胸の高さに挙げた両手を小さく振ることも,大小の対比として自然に思いつく,ありふれた表現であると認められる。さらに,「うたっているよ」の上記歌詞に合わせて手を順番に口の横に当て,首を左右に揺らすことも,歌っていることを示す動作として,ありふれた表現であると認められる。
そして,「たのしいうたを」の上記歌詞に合わせて,両手を胸の前で交差させて首を左右に揺らすことについては,原告書籍より前に発行されたポプラ社書籍に掲載された「キラキラぼし」において,「おそらのほしよ」との歌詞に合わせて右手と左手を順に交差させて胸に当て,体を左右に揺らす動作が記載されていることからすれば,両手を胸の前で交差させ,体を左右に揺らす動作は格別な表現ではなく,上記振付けは,ポプラ社書籍記載の上記動作と左右に揺らす部位が首であること及び対応する歌詞に違いがあるものの,特段創作性があるものとは認められない。
したがって,原告主張の上記振付けは,創作性を有する著作物であるものと認めることはできない。
以上によれば,原告主張の「キラキラぼし」の振付けは,著作物には当たらない。
平成21年08月28日東京地方裁判所[平成20(ワ)4692]≫

社交ダンスの振り付けの著作物性について
ア 社交ダンスが,原則として,基本ステップやPVのステップ等の既存のステップを自由に組み合わせて踊られるものであることは前記
(1)アのとおりであり,基本ステップやPVのステップ等の既存のステップは,ごく短いものであり,かつ,社交ダンスで一般的に用いられるごくありふれたものであるから,これらに著作物性は認められない。また,基本ステップの諸要素にアレンジを加えることも一般的に行われていることであり,前記のとおり基本ステップがごく短いものでありふれたものであるといえることに照らすと,基本ステップにアレンジを加えたとしても,アレンジの対象となった基本ステップを認識することができるようなものは,基本ステップの範ちゅうに属するありふれたものとして著作物性は認められない。
社交ダンスの振り付けにおいて,既存のステップにはない新たなステップや身体の動きを取り入れることがあることは前記(1)アのとおりであるが,このような新しいステップや身体の動きは,既存のステップと組み合わされて社交ダンスの振り付け全体を構成する一部分となる短いものにとどまるということができる。このような短い身体の動き自体に著作物性を認め,特定の者にその独占を認めることは,本来自由であるべき人の身体の動きを過度に制約することになりかねず,妥当でない。
以上によれば,社交ダンスの振り付けを構成する要素である個々のステップや身体の動き自体には,著作物性は認められないというべきである。
イ 前記
(1)アのとおり,社交ダンスの振り付けとは,基本ステップやPVのステップ等の既存のステップを組み合わせ,これに適宜アレンジを加えるなどして一つの流れのあるダンスを作り出すことである。このような既存のステップの組合せを基本とする社交ダンスの振り付けが著作物に該当するというためには,それが単なる既存のステップの組合せにとどまらない顕著な特徴を有するといった独創性を備えることが必要であると解するのが相当である。なぜなら,社交ダンスは,そもそも既存のステップを適宜自由に組み合わせて踊られることが前提とされているものであり,競技者のみならず一般の愛好家にも広く踊られていることにかんがみると,振り付けについての独創性を緩和し,組合せに何らかの特徴があれば著作物性が認められるとすると,わずかな差異を有するにすぎない無数の振り付けについて著作権が成立し,特定の者の独占が許されることになる結果,振り付けの自由度が過度に制約されることになりかねないからである。このことは,既存のステップの組合せに加えて,アレンジを加えたステップや,既存のステップにはない新たなステップや身体の動きを組み合わせた場合であっても同様であるというべきである。
平成24年02月28日東京地方裁判所[平成20(ワ)9300]
【コメント】
以上の判示の前提として、以下のような「事実認定」がされています(そのような社交ダンスの特殊性が判決に影響したものと思われます):
「社交ダンスには,様々なステップがある。社交ダンスの基本となるステップは,Imperial Society of Teachers of Dancing(以下「ISTD」という。)が発行する社交ダンスの教科書である「The Ballroom Technique」や,ISTDのラテン・アメリカン・ダンス委員会が監修する各ラテン種目の教科書などに掲載されている(以下,これらの社交ダンスの教科書(以下,単に「教科書」という。)に掲載されているステップを「基本ステップ」という。)。
また,基本ステップ以外にも,メダルテスト,競技会,デモンストレーション等で広く一般に使用されるようになったステップも数多くあり,このようなステップの一部はISTDの元会長であるDが著作した「ポピュラーバリエーション」に掲載されており(以下,ポピュラーバリエーションに掲載されているステップを「PVのステップ」という。),これに掲載されていないステップも数多くある。
社交ダンスは,原則として基本ステップやPVのステップ等の既存のステップを自由に組み合わせて踊られるものであるが,競技ダンスでは,基本ステップを構成する諸要素にアレンジを加えて踊ることは一般的に行われており,また,ある種目の基本ステップを,種目を超えて用いることも一般的に行われている。さらに,他の種類のダンスの動きを参考にするなどして,既存のステップにはない新たなステップや身体の動きを取り入れることも行われている。
社交ダンスの振り付けとは,このような既存のステップを選択して組み合わせ,これに適宜アレンジを加えるなどして一つの流れのあるダンスを作り出すことをいう。」

本件第1舞踊は,A流のために作られた創作音曲に独自の振付がされたもので,同流派を象徴する舞踊である。本件第2ないし第4舞踊は,従前伝統芸能・民俗芸能として手本となる踊りがあったりするが,それとは離れて独自性のある振付がされたもので,前記のとおり,いずれも,日本民謡舞踊大賞コンクールで受賞する等,客観的にも芸術性が高い。
したがって,本件各舞踊は,いずれも,振付者の思想,感情を創作的に表現したものであるということができ,十分に著作物たりうる創作性を認めることができる。
平成14年12月26日福岡高等裁判所[平成11(ネ)358]

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