[e079]映画の著作物性(総論)

本来的意味における映画以外のものが「映画の著作物」に該当するための要件は、次のとおりである。
(一) 映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現されていること
(二) 物に固定されていること
(三) 著作物であること
「著作物」については、更に定義規定がある(第
2条第1項第1号)から、右(三)の要件は、次のとおり言い換えることができる。
(三)′思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものであること
右のうち、(一)は表現方法の要件、(二)は存在形式の要件、(三)は内容の要件であるということができる。
昭和59年09月28日東京地方裁判所[昭和56(ワ)8371]

2条3項は、第一に、創作性につき他の一般著作物と同様のものとし、第二に、映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で「表現され」ることを求めているのであって、表現の内容たる「思想・感情」や表現物の「利用態様」における映画との類似性を求めていないというべきである(この点は、法2条4項[写真の著作物の定義]が「この法律にいう『写真の著作物』には、写真の製作方法に類似する方法を用いて表現される著作物を含む」として映画の著作物に関する法2条3項と異なり「製作方法」の類似性に着目した表現で規定して区分けされていることによっても裏付けられる。)。そして、第三に、表現が「物に固定」されることは、テレビの生放送番組のように放送と同時に消えて行く性格のものを映画の著作物として保護しないということで要件とされたのであるから、一定の内容の影像が常に一定の順序で再生される状態で固定されるというような特別の態様を要求するものでないことは明らかであり、法2条1項14号にいう「録画」の定義としての「影像を連続して物に固定」するのとは異なるというべきである。
平成13年03月29日大阪高等裁判所[平成11(ネ)3484]

【表現方法の要件】

表現方法の要件は、前記(一)のとおりであるが、そこでは、「視覚的又は視聴覚的効果」とされているから、聴覚的効果を生じさせることすなわち音声を有することは、映画の著作物の必要的要件ではなく、視覚的効果を生じさせることが必要的要件であると解される。
映画の視覚的効果は、映写される影像が動きをもつて見えるという効果であると解することができる。右の影像は、本来的意味における映画の場合は、通常スクリーン上に顕出されるが、著作権法は「上映」について「映写幕その他の物」に映写することをいうとしている(第
2条第1項第17号)から、スクリーン以外の物、例えばブラウン管上に影像が顕出されるものも、許容される。したがつて、映画の著作物の表現方法の要件としては、「影像が動きをもつて見えるという効果を生じさせること」が必須であり、これに音声を伴つても伴わなくてもよいということになる。
本来的意味における映画は、映画フイルムに固定された多数の影像をスクリーン上に非常に短い時間間隔で引続いて連続的に投影する方法により、人間の視覚における残像を利用して、影像が切れ目なく連続して変化しているように見せかけることによつて、右の「影像が動きをもつて見える効果」を生じさせるものであるから、映画以外の映画の著作物においても、物に固定された影像を非常に短い時間の単位で連続的にブラウン管上等に投影する方法により、右の効果を生じさせることが予想されているものと解することができる。
右に述べた要件は、映画から生じるところの各種の効果の中から、「視覚的効果」と「視聴覚的効果」とに着目し、そのうち特に「視覚的効果」につき、これに類似する効果を生じさせる表現方法を必須のものとしたものであるから、「映画の著作物」は本来的意味における映画から生じるその他の効果について類似しているものである必要はないものと解される。
したがつて、現在の劇場用映画は通常観賞の用に供され、物語性を有しているが、これらはいずれも「視覚的効果」とは関係がないから、観賞ではなく遊戯の用に供されるものであつても、また、物語性のない記録的映画、実用的映画などであつても、映画としての表現方法の要件を欠くことにはならない。
なお、本来的意味における映画の影像は、現在のところ、視聴者の操作により変化させることはできないが、影像を視聴者が操作により変化させうることは、「視覚的効果」というべきものではないから、この点は、表現方法の要件としては考慮する必要がないものと解される。
昭和59年09月28日東京地方裁判所[昭和56(ワ)8371]

表現方法の要件としては、前記法2条3項の規定によれば、聴覚的効果は任意的要件であり、「映画の効果に類似する視覚的効果を生じさせる方法で表現されている」ことが必要的要件であるが、映画の著作物の「上映」とは「映写幕その他の物に映写することをいう」(法2条1項17号)と規定されていることも考え合わせると、右の映画の効果に類似する視覚的効果を生じさせる方法で表現されているものとは、スクリーン、ブラウン管、液晶画面その他のディスプレイに影像が映写され、かつその影像が連続的な動きをもって見えるものをいうと解すべきである。
そして、本来的意味における映画は、映画フィルムに固定された多数の影像をスクリーン上に非常に短い間隔で引き続いて連続的に投影する方法により、人間の視覚における残像を利用して、影像が切れ目なく変化しているように見せかけることによって、影像が連続的な動きをもって見える効果を生じさせるものであるから、本来的な意味における映画以外のものでも、影像を非常に短い間隔で連続的にディスプレイ上に投影する方法により右の効果を生じさせるものであれば、右の映画の効果に類似する視覚的効果を生じさせるものということができる。
平成6年01月31日東京地方裁判所[平成4(ワ)19495]

「映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され」ているとは、右に述べた「映画」と同様の視覚的又は視聴覚的効果を生じさせるもの、すなわち、多数の静止画像を映写幕、ブラウン管、液晶画面その他の物に急速に連続して順次投影して、眼の残像現象を利用して、「映画」と類似した、動きのある影像として見せるという視覚的効果、又は右に加えて影像に音声をシンクロナイズさせるという視聴覚的効果をもって表現されている表現物をいうものと解するのが相当である。
平成11年10月07日大阪地方裁判所[平成10(ワ)6979]

「映画」とは,一般に,「長いフィルム上に連続して撮影した多数の静止画像を,映写機で急速に(1秒間15こま以上,普通は24こま)順次投影し,眼の残像現象を利用して動きのある画像として見せるもの。」(広辞苑第六版)を意味することなどに照らすならば,「映画の効果に類似する視覚的効果」とは,多数の静止画像を眼の残像現象を利用して動きのある連続影像として見せる視覚的効果をいい,また,「映画の効果に類似する視聴覚的効果」とは,連続影像と音声,背景音楽,効果音等の音との組合せによる視聴覚的効果を意味するものと解される。
平成20年12月25日東京地方裁判所[平成19(ワ)18724]

本件ゲームソフトの影像は,多数の静止画像の組合せによって表現されているにとどまり,動きのある連続影像として表現されている部分は認められないから,映画の著作物の要件のうち,「映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現されていること」の要件を充足しない。
したがって,本件ゲームソフトは,映画の著作物に該当するものとは認められない。
平成20年12月25日東京地方裁判所[平成19(ワ)18724]

【存在形式の要件】

映画の著作物は「物に固定されていること」が必要である。「物」は限定されていないから、映画のように映画フイルムに固定されていても、ビデオソフトのように磁気テープ等に固定されていてもよく、更に、他の物に固定されていてもよいと解される。
また、固定の仕方も限定されていないから、映画フイルム上に連続する可視的な写真として固定されていても、ビデオテープ等の上に影像を生ずる電気的な信号を発生できる形で磁気的に固定されていてもよく、更に、他の方法で固定されていてもよいと解される。一般に著作物においては、物に固定されていることが要件とされていないから、原稿のない講演や楽譜のない音楽のように、一過性のものでも著作物たりうるが、映画の著作物においては、テレビの生放送のように、一過性のものはこれに含まれないものとするために、物に固定されていることが要件とされているものと解される。したがつて、物に固定されているとは、著作物が、何らかの方法により物と結びつくことによつて、同一性を保ちながら存続しかつ著作物を再現することが可能である状態を指すものということができる。
昭和59年09月28日東京地方裁判所[昭和56(ワ)8371]

映画の効果に類似する視覚的効果を生じさせる方法で表現されているものは、物に固定されている必要があるが、「物」は、映画フィルムに限定されているわけではなく、また、固定の方法も映画フィルム上に可視的な写真として固定されている必要はなく、ROM、フロッピーディスク、ハードディスク等に電気的信号で取り出せる形で収納されているものも含まれると解すべきである。
平成6年01月31日東京地方裁判所[平成4(ワ)19495]

著作権法上の映画の著作物の要件としての固定性は、これを映画の著作物としての性質に関わるものと見るのは相当でなく、むしろ、単に放送用映画の生放送番組の取扱いとの関係で、これを映画の著作物に含ましめないための要件として設けられたものであると考えるべきである。そうすると、右固定性の要件は、生成と同時に消滅していく連続影像を映画の著作物から排除するために機能するものにすぎず、その存在、帰属等が明らかとなる形で何らかの媒体に固定されているものであれば、右固定性の要件を充足すると解するのが相当である。
平成11年10月07日大阪地方裁判所[平成10(ワ)6979]

同規定【注:法2条3項】によれば,物に固定されていないような表現は,視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現されているものであっても,同法において保護される「映画の著作物」には該当しないこととなると解される。
被告が同時再送信するテレビ番組は,テレビドラマのように録画用の媒体に固定され,しかる後に放送される番組もあるが,生放送番組のように媒体に固定されずに放送される番組もあることは当裁判所に顕著である。このような,媒体に固定されずに放送されるテレビ番組は上記の「映画の著作物」に該当しないものと解されるところであって,およそテレビ番組はすべて「映画の著作物」に該当することを前提とする被告の主張を採用することはできない。
平成16年05月21日東京地方裁判所[平成13(ワ)8592]≫

【その他】

著作権法は,映画の著作物について,「『映画の著作物』には,映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され,かつ,物に固定されている著作物を含むものとする。」(同法
2条3項)と規定するのみであるから,当該要件を満たす著作物を映画の著作物として定めているというべきであって,当該要件に加えて編集行為が必要であるとする解釈や,映画の著作物を劇場用映画又はこれに類するものに限定する解釈を採用することはできない
平成24年09月28日東京地方裁判所[平成23(ワ)9722]≫

ビデオゲームのソース・プログラムがその作成者の独自の学術的思想の創作的表現であり、著作権法上保護される著作物に当り、オブジエクト・プログラムは右ソース・プログラムの複製物と認められるということが、ビデオゲーム機の表示装置上に表示される影像の動的変化又はこれと音声とによつて表現されているところを映画の著作物として保護することができるか否かの判断に影響を及ぼすことはないというべきである。なるほど、例えば、シナリオ等言語の著作物に基づいて映画の著作物を創作する場合には、映画化の段階で新たな著作活動が加えられるのが通常であり、一方、ビデオゲームの作成において、言語の著作物【注:本件は「プログラムの著作物」が明定される以前の事案】としてのソース・プログラムを創作し、これをオブジエクト・プログラム化してビデオゲーム機のROM中に収納した場合、このオブジエクト・プログラムを忠実に実行すれば、表示装置上にソース・プログラムが意図したとおりの影像の動的変化が表示され、ソース・プログラムひいてはオブジエクト・プログラムの影像化のためには何ら新たな著作活動は加えられていないといいうる。しかし、言語の著作物と映画の著作物とはその外部的表現形式、存在形式の相違によつて別個の著作物性を有するものとして著作権法上規定されているのであつて、影像の動的変化又はこれと音声とによつて表現されているところそのものが著作物としての創作性を有していると評価でき、これに固定性の要件が加われば、映画の著作物と認めるに充分というべきである。したがつて、ビデオゲームのソース・プログラムに言語の著作物性を認め、これをビデオゲーム機により実行して映し出される影像の動的変化又はこれと音声とによつて表現されているところを映画の著作物と認めることは、著作物性をとらえる観点が全く別個であるということを意味するにすぎず、一箇の著作物を法的に二重に保護することにはならない。
昭和59年09月28日東京地方裁判所[昭和56(ワ)8371]

著作権判例エッセンス トップ 


     Kaneda Copyright Agency
     カネダ著作権事務所


      Home  メール相談  契約マネジメント  文化庁登録マネジメント  侵害対応マネジメントその他 
      アメリカ著作権局登録マネジメント