[e086]復原画の二次的著作物性

ア 前記前提事実のとおり,原告仏画1は,いずれも国宝又は重要文化財として指定されている仏画又は曼荼羅を原図とし,これを復原する意図で制作されたものであり,F氏が,既存の著作物である原図1ないし10に依拠し,各原図においてその制作者により付与された創作的表現を,その制作当時の状態において再現・再製するべく制作したものであると認められる。
そうすると,原告仏画1において,各原図の制作者によって付与された創作的表現ないし表現上の本質的特徴が直接感得できることは,当然に予定されているものというべきであるところ,これに加えて,原告仏画1に,各原図における上記創作的表現とは異なる,新たな創作的表現が付加されている場合,すなわち,復原過程において,原図の具体的表現に修正,変更,増減等を加えることにより,F氏の思想又は感情が創作的に表現され,これによって,原告仏画1に接する者が,原告仏画1から,各原図の表現上の本質的特徴を直接感得できると同時に,新たに別の創作的表現を感得し得ると評価することができる場合には,原告仏画1は,各原図の二次的著作物として著作物性を有するものと解される。その一方で,原告仏画1において,各原図における具体的表現に修正,変更,増減等が加えられているとしても,上記変更等が,新たな創作的表現の付与とは認められず,なお,原告仏画1から,各原図の制作者によって付与された創作的表現のみが覚知されるにとどまる場合には,原告仏画1は,各原図の複製物であるにとどまり,その二次的著作物としての著作物性を有することはないものと解される。
なお,原告仏画1の復原画としての性質上,原告仏画1において,各原図の現在の状態における具体的表現に修正等が加えられているとしても,上記修正等が,各原図の制作当時の状態として当然に推測できる範囲にとどまる場合には,上記修正に係る表現は,各原図の制作者が付与した創作的表現の範囲内のものとみるべきであり,上記修正等をもって,新たな創作性の付与があったとみることはできない。
イ 原告らは,原告仏画1の創作性に関し,F氏の復原手法が独自のものである旨主張する。しかし,原告仏画1の著作物性については,上記アでみたとおり,原告仏画1において,各原図の制作者によって付与された創作的表現とは別の創作性が,具体的表現として表れているか否かによって検討するべきであり,独自の復原手法を採用した結果として,F氏の個性が原告仏画1の具体的表現において表出していれば別論,手法の独自性から,直ちに原告仏画1の創作性が導かれるものではない。
平成24年12月26日東京地方裁判所[平成21(ワ)26053]

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