[e089]プログラムの著作物性

本件著作物は、ベーシツク言語によつて、本件パソコンに入力された命令またはプログラムを逐語的に処理して、命令を入力した者が意図した結果を出力するように、プログラムの構成、ルーチン、サブルーチンの活用、組合わせに至るまで、プログラム言語に関する高度な専門的知識を駆使して作製されており、プログラム作製者の学術的思想が表現されたものであることが明らかであり、したがつて、学術の範囲に属する著作物に当たるということができる。
昭和62年01月30日東京地方裁判所[昭和57(ワ)14001]
【コメント】
本件は、著作権法に「プログラムの著作物」が明記される以前のものです。

プログラムは,その性質上,表現する記号が制約され,言語体系が厳格であり,また,電子計算機を少しでも経済的,効率的に機能させようとすると,指令の組合せの選択が限定されるため,プログラムにおける具体的記述が相互に類似することが少なくない。仮に,プログラムの具体的記述が,誰が作成してもほぼ同一になるもの,簡単な内容をごく短い表記法によって記述したもの又は極くありふれたものである場合においても,これを著作権法上の保護の対象になるとすると,電子計算機の広範な利用等を妨げ,社会生活や経済活動に多大の支障を来す結果となる。また,著作権法は,プログラムの具体的表現を保護するものであって,機能やアイデアを保護するものではないところ,特定の機能を果たすプログラムの具体的記述が,極くありふれたものである場合に,これを保護の対象になるとすると,結果的には,機能やアイデアそのものを保護,独占させることになる。したがって,電子計算機に対する指令の組合せであるプログラムの具体的表記が,このような記述からなる場合は,作成者の個性が発揮されていないものとして,創作性がないというべきである。
平成15年01月31日東京地方裁判所[平成13(ワ)17306]≫

小説,絵画,音楽などといった従来型の典型的な著作物と異なり,プログラムの場合は,「電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したもの」(法2条1項10の2)であって,元来,コンピュータに対する指令の組合せであり,正確かつ論理的なものでなければならないとともに,プログラムの著作物に対する法による保護は,「その著作物を作成するために用いるプログラム言語,規約及び解法に及ばない。」(法10条3項柱書1文)ところから,所定のプログラム言語,規約及び解法に制約されつつ,コンピュータに対する指令をどのように表現するか,その指令の表現をどのように組み合わせ,どのような表現順序とするかなどといったところに,法によって保護されるべき作成者の個性が表れることとなる。したがって,プログラムに著作物性があるといえるためには,指令の表現自体,その指令の表現の組合せ,その表現順序からなるプログラムの全体に選択の幅が十分にあり,かつ,それがありふれた表現ではなく,作成者の個性が表れているものであることを要するものであって,プログラムの表現に選択の余地がないか,あるいは,選択の幅が著しく狭い場合には,作成者の個性の表れる余地もなくなり,著作物性を有しないことになる。そして,プログラムの指令の手順自体は,アイデアにすぎないし,プログラムにおけるアルゴリズムは,「解法」に当たり,いずれもプログラムの著作権の対象として保護されるものではない。
平成18年12月26日知的財産高等裁判所[平成18(ネ)10003]

プログラムの表現物についてみると,プログラムとは,「電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したもの」であること(著作権法2条1項10号の2)に鑑みれば,プログラムの著作物性が認められるためには,指令の表現自体,その指令の表現の組合せ及び表現順序からなるプログラムの全体に選択の幅があり,かつ,それがありふれた表現ではなく,作成者の個性が表れていることを要するものと解される。
平成26年8月27日知的財産高等裁判所[平成25(ネ)10085]

著作権法上、プログラムとは、電子計算機に対する指令の組合せであり、それにより電子計算機を作動させ一定の処理をさせるものでなければならない。そして、そのようなプログラムで創作性を有するものが、同法第10条第1項第9号の「プログラムの著作物」として、同法の保護を受けるものである。
したがって、電子ファイルとして記録媒体に電磁的に記録され、電子計算機がそれを読み取ることができるようなものであっても、右の機能を有しないものはプログラムとはならないものである。
電子計算機によるプログラム処理に当たり、あるシステムにおけるプログラムを稼動させ一定の処理をさせるためには、そのプログラムの他、それに処理情報を与えるデータが必要であるが、システムの効率上、データを本体プログラムとは別個のファイルに記録させることがよく行われる。その場合、該ファイルは、プログラムに読み取られその結果電子計算機によって処理されるものではあるが、電子計算機に対する指令の組合せを含むものではないので、著作権法上のプログラムではない。もっとも、用いられるファイルが異なれば電子計算機の処理結果が異なることになるが、それはファイルに記述されたデータの内容の違いによるものであって、それをもって、データが電子計算機に指令を与えているということができないことは当然である。それと同様、データを記述するに当たり、プログラム自身が規定した一定の記号又は文字(以下「記号等」という。)が記述されていれば、プログラムがそれを読み取ってその記号等に意味付けられた処理を行うとしても、それは、プログラムがその記号等をデータとして読み取り所定の処理を行うものにすぎず、その記号等をもって電子計算機に対する指令であるということはできない。したがって、また、そのような記号等が付されたデータをもって、著作権法上のプログラムであるということはできない。
(略)
以上の認定事実からすると、IBFファイルは、EOシステムが各アプリケーションソフトをハードディスクに組み込み処理をするに当たり、MENU・EXEプログラムに読み込まれる組込み情報(アプリケーションソフトの名称、デバイスドライバ情報等)を記載したものにすぎず、電子計算機に対する指令の組合せはなく、IBFファイル自体がプログラムとして電子計算機を機能させてアプリケーションソフトを組み込むものではない。すなわち、IBFファイルの記述内容は当該EOシステムにデータとして読み込まれるもので、単なるデータファイルにすぎないというべきである。
平成4年03月31日東京高等裁判所[平成3(ラ)142]

プログラムの表現は,所定のプログラム言語,規約及び解法による制約がある上に,その個性を表現できる範囲は,コンピュータに対する指令の表現方法,その指令の表現の組合せ及び表現順序というように,制約の多いものである。したがって,あるプログラムの著作物について,OSやプログラム言語を異なるものに変換したからといって,直ちに創作性があるということはできず,OSや言語を変換することにより,新たな創作性が付加されたか否かを判断すべきである。
平成19年07月26日大阪地方裁判所[平成16(ワ)11546]

生年月日の月と日によって決定される星座を求めるに当たり,まず月を場合分けし,その月の中にある2つの星座の境界日によって,どちらかの星座に振り分けるというのはプログラム作成過程におけるアイディア又は解法にすぎない。しかるところ,これらは著作権法による保護の対象外であり,これをそのまま表現したか,あるいはこれを平凡な選択によるありふれた表現手法で表現した場合には,実質的にはアイディア又は解法に従っただけのものとして,その表現には創作性がないものというべきである。
平成22年04月28日東京地方裁判所[平成18(ワ)24088]

プログラム言語においてはその命令数が限定され,自ら命令語を作出する余地はなく,文法においても厳密に定義されたものに機械的に従うほかないこと,そして,プログラムが機能的な表現であって,だれがその作成に当たっても効率性という方向に必然的に向かうことなどにかんがみれば,プログラムの表現には自ずと一定範囲の常識的な実用的慣用的表現というものが生じるのであり,その部分はありふれたものとして独占を許すべきではないから,プログラムの創作に当たっての表現の選択とは,上記の要請からくるありふれた表現の範囲があることを考慮して判断すべきものである。
平成22年04月28日東京地方裁判所[平成18(ワ)24088]

一般に,ある表現物について,著作物としての創作性が認められるためには,当該表現に作成者の何らかの個性が表れていることを要し,かつそれで足りるものと解されるところ,この点は,プログラム著作物の場合であっても特段異なるものではないというべきであるから,プログラムの具体的記述が,誰が作成してもほぼ同一になるもの,簡単な内容をごく短い表記法によって記述したもの又はごくありふれたものである場合には,作成者の個性が発揮されていないものとして創作性が否定されるべきであるが,これらの場合には当たらず,作成者の何らかの個性が発揮されているものといえる場合には,創作性が認められるべきである。
しかるところ,原告プログラムは,上記アのとおり,株価チャート分析のための多様な機能を実現するものであり,膨大な量のソースコードからなり,そこに含まれる関数も多数にのぼるものであって,原告プログラムを全体としてみれば,そこに含まれる指令の組合せには多様な可能性があり得るはずであるから,特段の事情がない限りは,原告プログラムにおける具体的記述をもって,誰が作成しても同一になるものであるとか,あるいは,ごくありふれたものであるなどとして,作成者の個性が発揮されていないものと断ずることは困難ということができる。
平成23年01月28日東京地方裁判所[平成20(ワ)11762]

原告プログラムは,測量業務を行うためのソフトウェアに係るプログラムであり,39個のファイルからなり,実際に使用されている35個のファイルには合計で数百個を超えるブロックが設けられ,これらのブロックの中には合計で数千行を超えるプログラムのソースコードが含まれている。そして,上記の制約の下でも,測量業務に必要な機能を抽出・分類した上で,これをどのようなファイル形式に区分し,どのように関連付けるか,どのような関数を使用するか,各ファイルにおける処理機能のうち,どの範囲でサブルーチン化し,共通処理のためのソースコードを作成するか,各ファイル内のブロック群で受け渡しされるどのデータをデータベースに構造化して格納するかなどの点については,作成者の個性の表現が発揮されているから,原告プログラムは,創作性を有するといえる
平成24年01月31日 知的財産高等裁判所[平成23(ネ)10041]

プログラムにおいて,コンピュータ(電子計算機)にどのような処理をさせ,どのような機能を持たせるかなどの工夫それ自体は,アイデアであって,著作権法による保護が及ぶことはなく,また,プログラムを著作権法上の著作物として保護するためには,プログラムの具体的記述に作成者の思想又は感情が創作的に表現され,その作成者の個性が表れていることが必要であるが,プログラムは,その性質上,プログラム言語,規約及び解法による表現の手段の制約を受け,かつ,コンピュータ(電子計算機)を効率的に機能させようとすると,指令の組合せの具体的記述における表現は事実上類似せざるを得ない面があることからすると,プログラムの作成者の個性を発揮し得る選択の幅には自ずと制約があるものといわざるを得ない。
平成24年12月18日東京地方裁判所[平成24(ワ)5771]

控訴人は,遊技台の情報を表示させるためのLED(「7セグ」)の発光パターンとして,「0,1,2,3,4,5,6,7,8,9,a,b,c,d,E,F」に,ランダムな変数である「,,-,P,r,o,n.L,A,I,t,u,U」(本件12桁の文字列)を加えたが,本件12桁の文字列は,作成者の選択の幅が十分にある中から選択配列されたものであって,その表現には全体として作成者の個性が表われているとして,本件12桁の文字列については創作性があり著作物である旨主張する。
しかし,本件12桁の文字列を含む「0,1,2,3,4,5,6,7,8,9,a,b,c,d,E,F, ,-,P,r,o,n,L,A,I,t,u,U」の文字列は,「7セグ」と呼ばれるデジタル表示板に数字や文字を表示する文字データを示すものであり,ある一つの文字を表示するためのデータを配列した表(データテーブル)の機能を有するものであって,その配列により,当該数字データ又は文字データがその順で並んでいるということを示すものであるが,このような文字列を組み込むこと自体はアイデアであると解される上,本件12桁の文字列の配列自体にも表現としての創作性があるとは認められない。
したがって,本件12桁の文字列は,プログラム著作物としての創作的な表現であるとはいえないから,控訴人の上記主張は理由がない。
控訴人は,リモコン制御の時間判定に用いる定数としての(80,100),(15,25,48)及び(12,20,24,32)は,無数に存在する定数の組合せの中から,創作者が知識と経験に基づいて設計するもので,創作者の個性が表われており,創作性が否定されるものではない旨主張する。
しかし,上記数値は,リモコン制御の時間判定を規格上の基準値よりも幅を持たせて判断するためのものであると解されるが,この数値は原告製品が採用するリモコン制御のフォーマットの仕様により制約されるものと解される。そのような制約の中において,上記数値を選択したこと自体について創作性を認めることはできない。
したがって,控訴人の上記主張は理由がない。
平成26年8月6日知的財産高等裁判所[平成26(ネ)10028]

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