[e103]法的文書の著作物性

ある法律問題についての見解や手続における留意事項自体は著作権法上保護されるべき表現とはいえず,これと同じ見解を表明することや手続における留意点を表記することが著作権法上禁止されるいわれはない(。)
≪平成27年1月30日東京地方裁判所[平成25(ワ)22400]≫

本件文書2ないし11に記載された文章は,取締役会議事録のモデル文集の文例に取締役の名称等を記入しただけのものではないものの,使用されている文言,言い回し等は,モデル文集の文例に用いられているものと同じ程度にありふれており,いずれも,日常的によく用いられる表現,ありふれた表現によって議案や質疑の内容を要約したものであると認められ,作成者の個性が表れているとは認められず,創作性があるとは認められない
また,開催日時,場所,出席者の記載等を含めた全体の態様をみても,ありふれたものにとどまっており,作成者の個性が表れているとは認められず,創作性があるとは認められない。
平成17年10月25日大阪高等裁判所[平成17(ネ)1300]

本件催告書は,被告サイトに掲載されている本件回答書の削除を,本件回答書の公表権に基づき要求するという内容のものであり,その本文は,本件第1文から本件第5文までの5つの文章【注:第1文…被告サイトに,本件回答書の本文が全文記載されているという事実を表現したもの/2文…本件回答書の文章について,原告が公表権を有しているという主張を表現したもの/3文…本件回答書を,被告サイトに掲載することにより公表したことは,本件回答書について原告が有する公表権を侵害する違法行為であるという主張を表現したもの/4文…被告に対して,被告サイトから本件回答書を削除するよう求めることを表現したもの/5文…本件催告書による原告の催告に被告が従わない場合に,法的手段に訴えることを表現したもの】から構成されている。
(略)
本件催告書の構成は,本件第
1文において,本件催告書によって中止を求める対象となる被告の行為を指摘し,本件第2文において,原告の権利内容の主張をし,本件第3文において,本件第1文で指摘した被告の行為は,本件第2文で示した原告の権利を侵害する違法な行為であることを主張し,本件第4文において,被告に対して,本件第1文で指摘した行為の中止を求め,本件第5文において,本件第4文の催告に従わない場合に,原告が法的措置を採ることを示すというものである。
被告サイトに掲載されている本件回答書の削除を,本件回答書の公表権に基づき請求するという内容の催告書を作成する場合,種々の構成が考えられるが,上記の構成を採ることは自然であり,実際,代理人催告書も,上記と同じ構成を採っており,各種の催告書の文例にも,上記の構成と同様の構成を採っているものがある。
したがって,本件催告書全体の構成に,原告の個性が現れているということはできないと解される。
これに対し,原告は,本件催告書は,法律上の論点をすべて網羅することはせず,必要な限度において論点を取捨選択し,これを理解しやすい順番に並べたものであり,この点に,創作性が認められる旨の主張をする。
確かに,本件回答書についての公表権に基づき,被告サイトから本件回答書の削除を要求する文章を作成する場合,取り上げるべき論点,記載すべき事項についての選択が可能であり,また,その記載の順序についても,種々のものが考えられるが,著作権法上,言語の著作物として保護されるのは,そのような選択に関するアイデア自体ではなく,具体的な表現であると解すべきである。したがって,素材や表現形式に選択の幅があったとしても,実際に作成された言語上の表現がありふれたものである限り,創作性は認められないと解するのが相当であるから,原告の上記主張は理由がない。
以上より,仮に,本件催告書を作成したのが原告であるとした場合は,本件催告書は,創作的な表現ということはできないというべきである。
平成21年03月30日東京地方裁判所[平成20(ワ)4874]

(ア) 前記前提事実アのとおり,原告文書1は,原告が,南洋株式会社(通知人)の代理人として,平成23年10月4日,被告Y1に宛てて送付した通知書であり,表題,日付等の記載の後に,通知人の代理人として通知を行う旨及び被告Y1の作成するブログ内に通知人に関し事実に反する内容の記事が掲載されている旨を記載し,上記記事のURLを表示し,さらに,上記記事の内容が事実に反し通知人の名誉・信用を著しく害し多大な損害が発生しているものである旨,上記記事の削除を求め,削除に応じない場合には仮処分申立てや損害賠償請求等の必要な法的措置をとらざるを得ない旨,以後問合せは通知人本人ではなく通知人代理人にされたい旨を記載したものである。
上記原告文書1の本文部分は,上記URLの表示部分を含めても17行,URLの表示部分を除けば13行からなるものである。
(イ) 原告文書1は,上記のとおり,前提となる事実関係を簡潔に摘示した上で,これに対する法的評価及び請求の内容等を短い表現で記載したものにすぎない。原告文書1の体裁,記載内容,記載順序,文章表現は,いずれも内容証明郵便による通知書として一般的にみられるものであり,ありふれたものというべきであるから,原告文書1において何らかの思想又は感情が表現されているとしても,上記思想又は感情が創作的に表現されているものとは認められない。
この点,原告は,原告文書1は,用語や言い回しを厳選し,最も適切な表現を慎重に吟味して作成されたものであり,作成者の個性が表れていると主張するが,原告の主張するような点を原告文書1から表現として感得することはできず,上記主張を採用することはできない。
(ウ) したがって,原告文書1に著作物性は認められない。
平成25年06月28日東京地方裁判所[平成24(ワ)13494]

(ア) 前記前提事実のとおり,原告文書2は,原告が東京行政書士会会長宛てに提出した平成23年10月17日付けの苦情申告書であり,A4版5ページからなる文書である。原告文書2は,表題,日付等の記載の後に,苦情の趣旨及び苦情の理由を記載し,さらに「第3 最後に」として,「申告者は,…多くの行政書士の方々が本当に真摯に依頼者のために業務に取り組まれていることをよく存じあげております。そのような中で,本件の苦情対象行政書士のごとく,行政書士法違反の非違行為を行う行政書士がごく少数でも存在することは,行政書士全体の社会的信用を貶めるものであり,適正に業務をされておられる大多数の行政書士の方々にも多大な悪影響を及ぼすものであると思います。」などと記載し,東京行政書士会に調査,対応を求める旨と,状況の改善がない場合には対象行政書士の東京都知事に対する懲戒を申し立てる所存である旨などを記載したものである。
(イ) 原告文書2は,上記のとおり,行政書士会に対する苦情申告書であり,その文書の性質上,当然に記載すべき項目(日付,申告者等の形式的記載事項や,申告すべき苦情の内容,事実関係の記載,上記事実関係の法的評価,非違行為に該当する考える理由等)を含むものであるということができる。しかし,苦情の内容,事実関係,その法的評価等に関する点については,記載すべき内容が形式的かつ一律に定まるものではなく,これらをどのような順序で,どのような表現により,どの程度記載するかについては,様々な可能性があるものというべきである。そうすると,原告文書2は,上記のとおり表現について様々な可能性がある中で,記載の順序や内容,文章表現を工夫したものということができるのであって,このような点に,作成者の個性の表出がみられるものというべきであり,思想又は感情を創作的に表現したものに当たるということができる。
(ウ) したがって,原告文書2には著作物性が認められる。
平成25年06月28日東京地方裁判所[平成24(ワ)13494]

被告らは,原告表現1は丁1文献を要約して引用したものにすぎず,創作性がないと主張する。しかし,著作権法2条1項1号所定の「創作的」に表現されたというためには,厳密な意味で独創性が発揮されたものであることは必要ではなく,作者の何らかの個性が表れたものであれば足りるというべきであるところ,証拠(略)によれば,原告表現1は,9頁にわたる丁1文献を,「再送信同意の基本原則」,「具体的な技術要件」,「再送信同意の手続き」の3部に分けて簡潔に要約したものであり,各部において丁1文献の該当項の冒頭部分を中心に抜き出してはいるものの,必ずしも冒頭部分をそのまま抜き出したものでないことが認められるから,そこには選択の範囲,記述の順序,文章の運び及び具体的な文章表現等の点において原告なりの工夫がされていると認めることができ,その限度で作者の個性が表れていると認められるのであり,表現上の創作性がないということはできない。
(略)
被告らは,原告表現2には創作性がないから,原告の氏名表示権の対象となるべき表現が存在しないと主張する。しかし,証拠(略)によれば,原告表現2のうち上記共通部分は,2003年改正後の英国著作権法6条の規定について説明するものではあるものの,単に同条の規定をそのまま引用したものではなく,「有線番組サービス」等の独自の訳語を用いながら,記述の順序,文章の運び及び具体的な文章表現等の点において原告なりの工夫をしながら,同条の改正内容を分かりやすく解説した文章であると認めることができ,その限度で作者の個性が表れていると認められるから,全体としては表現上の創作性がないということはできない。
平成27年3月27日東京地方裁判所[平成26(ワ)7527]≫
【コメント】上記に関して控訴審平成27年10月6日 知的財産高等裁判所[平成27(ネ)10064等]≫では次のように述べています:
被告らは,原告表現1及び同2の創作性は否定されるべきと主張する。しかし,接続詞の有無等,明らかに表現の本質的部分とはいえない部分を除くと,被告らが,原告表現1及び同2における創作性がない根拠として具体的に指摘するのは,原告表現1が,丁1文献の重要部分をありふれた方法で選別,要約,加工したものである,原告表現2が,英国著作権の条文の客観的な説明にすぎない,という点である。これらは,いずれも原告表現の創作性の低さを指摘するものではあるが,特定のまとまりのある文章から重要と考える部分を選別,要約,加工したり,特定の法律の条文の内容を説明したりする表示方法として,多様な選択の幅がある以上,上記の主張では,原告表現1及び同2に個性の発揮がなくありふれたものといえるほどの事情を指摘できておらず,原告表現1及び同2の創作性は否定できない。

【修理規約】

一般に,修理規約とは,修理受注者が,修理を受注するに際し,あらかじめ修理依頼者との間で取り決めておきたいと考える事項を「規約」,すなわち条文や箇条書きのような形式で文章化したものと考えられるところ,規約としての性質上,取り決める事項は,ある程度一般化,定型化されたものであって,これを表現しようとすれば,一般的な表現,定型的な表現になることが多いと解される。このため,その表現方法はおのずと限られたものとなるというべきであって,通常の規約であれば,ありふれた表現として著作物性は否定される場合が多いと考えられる。
しかしながら,規約であることから,当然に著作物性がないと断ずることは相当ではなく,その規約の表現に全体として作成者の個性が表れているような特別な場合には,当該規約全体について,これを創作的な表現と認め,著作物として保護すべき場合もあり得るものと解するのが相当というべきである。
これを本件についてみるに,原告規約文言は,疑義が生じないよう同一の事項を多面的な角度から繰り返し記述するなどしている点(例えば,腐食や損壊の場合に保証できないことがあることを重ねて規定した箇所がみられる原告規約文言4と同7,浸水の場合には有償修理となることを重ねて規定した箇所が見られる原告規約文言5の1の部分と同54,修理に当たっては時計の誤差を日差±15秒以内を基準とするが,±15秒以内にならない場合もあり,その場合も責任を負わないことについて重ねて規定した箇所がみられる原告規約文言17と同44など)において,原告の個性が表れていると認められ,その限りで特徴的な表現がされているというべきであるから,「思想又は感情を創作的に表現したもの」(著作権法2条1項1号),すなわち著作物と認めるのが相当というべきである。
平成26年7月30日東京地方裁判所[平成25(ワ)28434]

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