[e104]法112条の法意

著作権法112条1項において,著作権者等は,その権利を「侵害する者や侵害するおそれのある者」に対して,「その侵害の停止又は予防を請求することができる」と定められ,同規定は,著作権侵害が発覚した後の事後の損害賠償だけでは適切な法益の保護を図ることが困難であると認められる場合に限り,相手方が善意・無過失であっても,侵害の停止や予防を請求することができることを規定したものであり,さらに,同条1項のみでは著作権あるいは著作者人格権が保護されない場合があることにかんがみて,同条2項において,侵害行為の停止や予防を請求する際に,侵害の行為によって作成された物等の廃棄,その他侵害の停止・予防に必要な措置を講ずることができる旨定められているものである。
平成16年06月11日東京地方裁判所[平成15(ワ)11889]

著作権法112条が,著作権等を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し,その侵害の停止又は予防を請求することができると規定する趣旨は,著作権等が無体物に関する権利であり,かつ,独占的な権利行使を内容とすることから,著作権等の侵害の救済のためには,損害賠償だけでは不十分であり,侵害行為を直ちに停止させる必要があることに由来する。したがって,著作権,著作隣接権の侵害又は侵害のおそれが認められるならば,著作権者等は,差止請求権を行使できると解することが法の趣旨に沿うというべきである。
平成24年01月31日知的財産高等裁判所[平成23(ネ)10009]

著作権法112条1項は,著作者人格権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し,その侵害の停止又は予防を請求することができることを定めたものであるところ,被告光源寺による上記仏頭部のすげ替え行為は,前記のとおり,E4の意に反する改変に当たり,E4が存しているとしたならばその著作者人格権(同一性保持権)の侵害となるべき行為に該当するが,他方で,被告光源寺が仏頭部のすげ替え後の本件観音像を公衆の観覧に供していることは,上記改変後の行為であって,E4の著作者人格権(同一性保持権)の侵害となるべき行為に当たるものとは認められないから,同条項により,原告が本件観音像を公衆の観覧に供することの停止請求をすることはできないものと解される。
平成21年05月28日東京地方裁判所[平成19(ワ)23883]

原告は,著作権法112条2項に基づき,侵害の停止又は予防に必要な措置として,本件作品からの本件風景映像動画の削除を請求する。ところで,同項によれば,この請求は,独立してすることはできず,侵害の停止又は予防の請求に附帯してしなければならないが,原告は,複製,頒布の停止又は予防を請求していない。そうであるから,独立してした上記請求に係る訴えは,不適法である。
平成25年08月29日東京地方裁判所[平成24(ワ)32409]

著作権者が,その著作権を侵害するおそれのある者に対し,著作権法112条1項に基づく差止請求をするについては,不法行為である著作権侵害を理由とする損害賠償請求をするのと同様に,著作権者において,自らが著作権者である事実と,著作権侵害ないしそのおそれに係る事実を主張立証する責任があるところ,著作権者が主張立証すべき事実は,故意ないし過失及び損害額を除けば,不法行為に基づく損害賠償請求訴訟と異なるところはない。
そうすると,著作権法112条1項に基づく差止請求権は,不法行為に基づく損害賠償請求権と同様,弁護士に委任しなければ訴訟活動をすることが困難な類型に属する請求権であるということができる。そして,本件のように,著作権者が著作権法112条1項に基づく差止請求をする訴えの提起を余儀なくされ,その訴訟追行を弁護士に委任した場合には,その弁護士費用は,事案の難易その他諸般の事情を斟酌して相当と認められる額の範囲内で,著作権侵害ないしそのおそれと相当因果関係に立つ損害であると解される(最高裁昭和44年2月27日第一小法廷判決,最高裁平成24年2月24日第二小法廷判決参照。)。
平成25年10月30日東京地方裁判所[平成24(ワ)33533]

著作権判例エッセンス トップ 


     Kaneda Copyright Agency
     カネダ著作権事務所


      Home  メール相談  契約マネジメント  文化庁登録マネジメント  侵害対応マネジメントその他 
      アメリカ著作権局登録マネジメント