[e117]36条の意義と解釈

公表された著作物は、入学試験その他人の学識技能に関する試験又は検定の目的上必要と認められる限度において、当該試験又は検定の問題として複製することができるとされ(著作権法36条1項)、また、営利を目的として、該複製を行うものは、通常の使用料の額に相当する額の補償金を著作権者に支払わなければならない(同条2項)とされているところ、これらの規定は、入学試験等の人の学識技能に関する試験又は検定にあっては、それを公正に実施するために、問題の内容等の事前の漏洩を防ぐ必要性があり、その問題として著作物を利用する場合には、具体的な設問のみならず、いかなる著作物を利用するかということについても漏洩を避ける必要があることが通常であるから、試験、検定の問題としての著作物の複製について、予め著作権者の許諾を受けることは困難であり、社会的実情にも沿わないこと、及び著作物を右のような試験、検定の問題として利用したとしても、一般にその利用は著作物の通常の利用と競合しないと考えられるから、その限度で著作権を制限しても不当ではないと認められることにより、試験、検定の目的上必要と認められる限度で、著作物を試験、検定の問題として複製するについては、一律に著作権者の許諾を要しないとするとともに、その複製が、これを行う者の営利の目的による場合には、著作権者に対する補償を要するものとして、利益の均衡を図ることにした趣旨であると解される。
そして、そうであれば、同条1項によって、著作権者の許諾を要せずに、問題として著作物の複製をすることができる試験又は検定とは、公正な実施のために、試験、検定の問題として利用する著作物が何であるかということ自体を秘密にする必要性があり、その故に、該著作物の複製につき、予め著作権者の許諾を受けることが困難であるような試験、検定をいうものであって、そのような困難性のないものについては、複製につき著作権者の許諾を不要とする根拠を欠くものであり(前示の、試験等の問題として利用することが、著作物の通常の利用と競合しないという点は、同条1項の規定との関係では、試験問題の漏洩防止等、著作物の複製につき著作権者の許諾を不要としなければならない積極的な理由が存する場合に、著作権者側の利益状況から見ても、そのような著作権の制限をすることが一般的に不当であるとは言えないとの消極的な根拠となるにすぎないものであり、そのことのみで、著作物の複製に著作権者の許諾を不要とするための根拠となり得るものではない。)、同条1項にいう「試験又は検定」に当たらないものと解するのが相当である。
平成12年09月11日東京高等裁判所[平成12(ラ)134]≫

教科書に掲載されている本件各著作物が本件国語テストに利用されることは,当然のこととして予測されるものであるから,本件国語テストについて,いかなる著作物を利用するかということについての秘密性は存在せず,そうすると,そのような秘密性の故に,著作物の複製について,あらかじめ著作権者の許諾を受けることが困難であるような事情が存在するということもできない。
(略)
よって,被告らが,本件各著作物を本件国語テストに複製することは,著作権法
36条1項所定の「試験又は検定の問題」としての複製に当たるものではない。
平成15年03月28日東京地方裁判所[平成11(ワ)13691]

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