[e121]複製の主体

放送番組等の複製物を取得することを可能にするサービスにおいて,サービスを提供する者(以下「サービス提供者」という。)が,その管理,支配下において,テレビアンテナで受信した放送を複製の機能を有する機器(以下「複製機器」という。)に入力していて,当該複製機器に録画の指示がされると放送番組等の複製が自動的に行われる場合には,その録画の指示を当該サービスの利用者がするものであっても,サービス提供者はその複製の主体であると解するのが相当である。すなわち,複製の主体の判断に当たっては,複製の対象,方法,複製への関与の内容,程度等の諸要素を考慮して,誰が当該著作物の複製をしているといえるかを判断するのが相当であるところ,上記の場合,サービス提供者は,単に複製を容易にするための環境等を整備しているにとどまらず,その管理,支配下において,放送を受信して複製機器に対して放送番組等に係る情報を入力するという,複製機器を用いた放送番組等の複製の実現における枢要な行為をしており,複製時におけるサービス提供者の上記各行為がなければ,当該サービスの利用者が録画の指示をしても,放送番組等の複製をすることはおよそ不可能なのであり,サービス提供者を複製の主体というに十分であるからである。
平成23年1月20日最高裁判所第一小法廷[平成21(受)788]

「著作者は,その著作物を複製する権利を専有する。」(著作権法21条)ところ,「複製」とは,著作物を「印刷,写真,複写,録音,録画その他の方法により有形的に再製すること」である(同法2条1項15号)。そして,複製行為の主体とは,複製の意思をもって自ら複製行為を行う者をいうと解される。
本件サービスは,前記で認定したとおり、①利用者が控訴人ドライバレッジに書籍の電子ファイル化を申し込む,②利用者は,控訴人ドライバレッジに書籍を送付する,③控訴人ドライバレッジは,書籍をスキャンしやすいように裁断する,④控訴人ドライバレッジは,裁断した書籍を控訴人ドライバレッジが管理するスキャナーで読み込み電子ファイル化する,⑤完成した電子ファイルを利用者がインターネットにより電子ファイルのままダウンロードするか又はDVD等の媒体に記録されたものとして受領するという一連の経過をたどるものであるが,このうち上記④の、裁断した書籍をスキャナーで読み込み電子ファイル化する行為が,本件サービスにおいて著作物である書籍について有形的再製をする行為,すなわち「複製」行為に当たることは明らかであって,この行為は,本件サービスを運営する控訴人ドライバレッジのみが専ら業務として行っており,利用者は同行為には全く関与していない。
そして,控訴人ドライバレッジは,独立した事業者として,営利を目的として本件サービスの内容を自ら決定し,スキャン複製に必要な機器及び事務所を準備・確保した上で,インターネットで宣伝広告を行うことにより不特定多数の一般顧客である利用者を誘引し,その管理・支配の下で,利用者から送付された書籍を裁断し,スキャナで読み込んで電子ファイルを作成することにより書籍を複製し,当該電子ファイルの検品を行って利用者に納品し,利用者から対価を得る本件サービスを行っている。
そうすると,控訴人ドライバレッジは,利用者と対等な契約主体であり,営利を目的とする独立した事業主体として,本件サービスにおける複製行為を行っているのであるから,本件サービスにおける複製行為の主体であると認めるのが相当である。
平成26年10月22日知的財産高等裁判所[平成25(ネ)10089]≫

一般に,ある行為の直接的な行為主体でない者であっても,その者が,当該行為の直接的な行為主体を「自己の手足として利用してその行為を行わせている」と評価し得る程度に,その行為を管理・支配しているという関係が認められる場合には,その直接的な行為主体でない者を当該行為の実質的な行為主体であると法的に評価し,当該行為についての責任を負担させることがあり得るということができる。
しかし,既に前記
(1)及(3)びで説示したとおり,利用者は,控訴人ドライバレッジが用意した本件サービスの内容に従って本件サービスを申し込み,書籍を調達し,電子ファイル化を注文して書籍を送付しているのであり,控訴人ドライバレッジは,利用者からの上記申込みを事業者として承諾した上でスキャン等の複製を行っており,利用者は,控訴人ドライバレッジの行うスキャン等の複製に関する作業に関与することは一切ない。
そうすると,利用者が控訴人ドライバレッジを自己の手足として利用して書籍の電子ファイル化を行わせていると評価し得る程度に,利用者が控訴人ドライバレッジによる複製行為を管理・支配しているとの関係が認められないことは明らかであって,控訴人ドライバレッジが利用者の「補助者」ないし「手足」ということはできない。
平成26年10月22日知的財産高等裁判所[平成25(ネ)10089]≫

有形的再製を実現するために,複数の段階からなる一連の行為が行われる場合があり,そのような場合には,有形的結果の発生に関与した複数の者のうち,誰を複製の主体とみるかという問題が生じる。
この問題については,複製の実現における枢要な行為をした者は誰かという見地から検討するのが相当であり,枢要な行為及びその主体については,個々の事案において,複製の対象,方法,複製物への関与の内容,程度等の諸要素を考慮して判断するのが相当である(最高裁平成
23年1月20日第一小法廷判決参照)。
平成25年09月30日東京地方裁判所[平成24(ワ)33525]≫

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