[e140]その他個別事例にみる編集著作物性

【英単語集】

「要語集」は、3000前後の標準的なアメリカ語の単語、熟語、慣用句を使用頻度に従って選び出した上、これらを見出し語としてアルフアベツト順に配列し、各見出し語に続けて、その日本語訳を付し、その大部分のものについて、見出し語を用いた慣用句、文例及びこれらの日本語訳を付し、場合により、見出し語の発音記号、見出し語の各日本語訳に対応する英語による言換え、語法の簡単な説明等をした「註」、「注意」等をも付したアメリカ語に関する英和辞典の一種であること、並びに右の文例は、昭和21年ころから昭和29年ころまでの間にわたり、ニユーズ・ウイーク、タイム、リーダーズ・ダイジエスト、ニユーヨーク・タイムズ等の雑誌、新聞やわが国の大学入試問題等に掲載された文章の中から、原告自身が適切であると考えたものを選択したものであることが認められる。
右の認定の事実と前記の事実によれば、「要語集」は、原告がアメリカ語を素材にしてその選択と配列に創意をこらして創作した一個の編集著作物と認めることができる。
原告は、「要語集」に掲げられたアメリカ語の新しい語法及び文例について著作権及び著作者人格権を有する旨主張するけれども、アメリカ語の新しい語法を示すものとして原告が集録した単語、熟語、慣用句は言語それ自体を表記したに過ぎないものであつて、原告の思想又は感情の表現ではないことが明らかであるし、文例も原告が創作したものではないこと前記認定のとおりであるから、原告の右主張は失当である。
なお、単語、熟語、慣用句、文例等の日本語訳及び見出し語の英語による言換えは、原告の知的活動の結果表現されたものであると考えられるが、いずれも、日常的によく用いられている単語、熟語、慣用句又は短文の英語を日本訳又は他の英語に置き換えたものであつて、長い文章の翻訳と異なり、英語の語意を正しく理解する能力を有する者であれば、誰が行つても同様のものになると認められるから、原告のみの創作的表現ということはできない。
昭和59年05月14日東京地方裁判所[昭和50(ワ)480]≫

【新聞】

被控訴人新聞の紙面は、報道記事、社説・論評が主要な部分を占め、その他に各種相場表、広告等によって構成されているところ、被控訴人の従業員である編集担当者は、そのもとに集められた多数の記事等の中から、被控訴人新聞の一定の編集方針に従い、またニュース性を考慮して、情報として提供すべきものを取捨選択し、その上で各記事等の重要度や性格・内容等を分析し、分類して紙面に配列しているものであって、被控訴人新聞のこのような紙面構成は、編集担当者の精神的活動の成果の所産であり、また被控訴人新聞の個性を形成するものであるから、特定の日付けの紙面全体は、素材の選択及び配列に創作性のある編集著作物と認めるのが相当であ(る。)
平成6年10月27日東京高等裁判所[平成5(ネ)3528]≫

【職業別電話帳】

タウンページの職業分類は、検索の利便性の観点から、個々の職業を分類し、これらを階層的に積み重ねることによって、全職業を網羅するように編集されたものであり、原告独自の工夫が施されたものであって、これに類するものが存するとは認められないから、そのような職業分類体系によって電話番号情報を職業別に分類したタウンページは、素材の配列によって創作性を有する編集著作物であるということができる。
平成12年03月17日東京地方裁判所[平成8(ワ)9325]≫

【音楽アルバム】

「アルバム」は、複数の曲が一定の数だけ集められ、特定の順序で配列されて収録されたものであるが、これは、アルバム製作者が、一定のコンセプト、イメージ等に基づいて、複数の曲の中から、収録する一定数の曲を選択し、その配列の順序を決定した上で製作するものであって、編集著作物となりうるものである。
平成7年02月22日東京地方裁判所[平成6(ワ)6280]

【ビジネスソフトの表示画面】

一般にビジネスソフトウェアにおいては,ディスプレイ上に表れる表示画面は,常に一定ではなく,利用者がクリックやキー操作を通じてコンピュータに対する指令を入力することにより,異なる表示画面に転換する。このような一定の画面から他の画面への転換が,特定の思想に基づいて秩序付けられている場合において,当該表示画面の選択と配列,すなわち牽連関係の対象となる表示画面の選択と当該表示画面相互間における牽連関係に創作性が存在する場合には,そのような表示画面の選択と組合せ(配列)自体も,著作物として著作権法による保護の対象となり得るものと解される。
この場合,個々の表示画面自体に著作物性が認められるかどうかにかかわらず,表示画面の選択又は組合せ(配列)に創作性が認められれば,著作物性を認めることができるというべきである。そして,編集物における素材の選択・配列の創作性が著作者により
1個のまとまりのある編集物として表現されている集合体を対象として判断されることに照らせば(著作権法12条1項),このような表示画面の選択と相互間の組合せ(配列)は,牽連関係にある表示画面全部を基準として,選択・配列の創作性の有無を検討すべきものである。
平成14年09月05日東京地方裁判所[平成13(ワ)16440]

【工事関連リスト】

既存の素材であっても、一定の方針あるいは目的のもとに、これを分類、選択、配列する行為に創作性があれば、これを編集著作物として著作権の保護が与えられるところ、右JAMICシステムのうち、控訴人らが著作権を有すると主張する工事別分類項目表及び工事分類項目別メーカーリストは、いずれも建築・資材設備に関するカタログの分類、保管、検索を容易にするという目的のもとに作成されたものであり、工事別分類項目表においては、前記認定のとおり、工事項目を通常の建築用語を用いて、大項目、中項目、小項目とカタログの分類、保管、検索が容易であるように順次分類配置したものであって、工事項目の分類、選択、配列に創意と工夫が存するものと認められ、また、工事分類項目別メーカーリストにおいては、工事別分類項目表に従い、これと関連付けてカタログの検索が容易であるようにメーカー名を分類、配置したものであって、その分類、選択、配列にも創意と工夫が存するものと認められるから、著作権法12条に規定する編集著作物に当たるものである。
平成7年10月17日東京高等裁判所[平成5(ネ)2747]
【コメント】
本件で問題となった「JAMICシステム」とは、「建築設計業務、施工業務の実施に必要な建材・設備資材のカタログ情報を整備して業者に提供することを目的とするシステムであって、建材・設備資材等のメーカーのカタログを収集し、別途に建築工事について分類項目表を作成し、他に50音別メーカーリスト、工事分類項目別メーカーリスト等を作成し、右カタログを右分類項目表に従って分類し、専用のボックスに整理保管し、随時資料の差替えを行っていくという建築資材専用のファイリングシステム」のことで、その中の「工事別分類項目表」がJAMICシステムの中核をなすものです。

【アイコン一覧表】

各種情報誌において,アイコンは,誌面に記載された情報を,キーワードやロゴなどを用いて簡潔に表示したものであり,少ないスペースに多くの情報を掲載し,読者による情報相互間の比較が容易にできるよう,一般的に広く用いられ,その場合,読者にアイコンの意味が理解できるよう,使用されるアイコンを整理し,これに簡潔な説明を付したアイコン一覧表を作成して掲載することは,当裁判所に顕著である。そして,控訴人情報誌及び被控訴人情報誌のように,広告主から出稿されたスクール・講座情報を掲載した情報誌において,控訴人通学アイコン一覧表上段「スクール便利ポイント」の説明,同中段「特長アイコン」の説明及び同下段「○得情報アイコン」の説明は,読者が当然に関心を持つ点であり,その内容である,①「スクール便利ポイント」の「駅前」,「シャワー完備」,「駐車場有り」など,②「特長アイコン」の「予約制」,「土日OK」,「初心者対象」など,③「○得情報アイコン」の「給付制度対象」,「分割分納」などは,いずれも上記関心を持つ点に係る必要な情報であると認められるから,これら各情報に係るアイコン71種類を選択したことに,創作性があるとは認められない。また,これら各情報を,①同一覧表上段「スクール便利ポイント」の説明に関する「スクール便利ポイント」(23種類),②同中段「特長アイコン」の説明に関する「特長アイコン」及び③同下段「○得情報アイコン」の説明)に関する「○得情報アイコン」の三つに分類した点も,スクール・講座情報のうち,①には主としてスクール情報に関するアイコンを,②には主として講座情報に関するアイコンを,③には支払情報に関するアイコンを分類したにすぎないと認められ,その分類,配列に創作性があるということはできない。
したがって,控訴人通学アイコン一覧表は,アイコンの選択,配列に創作性があるということはできないから,編集著作物に該当するということはできない。
平成17年03月29日東京高等裁判所[平成16(ネ)2327]

【間取図作成ソフト】

原告は,原告ソフトのパーツの選択について編集著作権が存する旨主張しているが(パーツの配列については,和室,洋室,DK・LDKなどの各種類ごとに,そのサイズの順に並べられているにすぎないから,少なくともその配列に創作性を認めることはできない。),住宅の間取図を簡便に作成するためのものという間取図作成ソフトの性質上,そのパーツは,一般的な住宅において通常用いられる種類,サイズ,形状のものに自ずと限られることになり,例えば和室,洋室,DK・LDKを例にとってみると,その形状には縦横の長短はあるが,四角形を基本とするものに限られている上,畳の数によって
3畳,4畳半,6畳,7畳半などと選択できるサイズは限定され,しかも,通常の住宅を想定していることから18畳程度を上限とするものであって,その選択の幅はかなり限定されたものとなっている。原告ソフトにおいて選択されたパーツの個数についてみても,その総数は150点を超える程度であるが,和室,洋室などの種類ごとに見れば,それぞれ3点ないし13点程度であってその数は決して多いものではない。
(略)
そうすると,原告ソフトや他社ソフトにおいて用意されているパーツは,いずれも一般的な住宅において通常用いられる種類,サイズ,形状のものが選択されており,その選択状況に違いがあっても,それは,当該ソフト自体の機能の違いから生じているにすぎず,また,その選択の仕方自体が原告ソフトに特有の個性を表現するまでに至っているとは認められない。
したがって,原告ソフトにおけるパーツの選択は,ごく実用的な観点からなされるものであって,編集者の思想又感情に基づく創作的行為としては評価し難い性質のものである上,間取図作成ソフトの分野においてありふれたものではないと認められる程度の,原告ソフトに特有の個性を帯有するものとは認められないから,原告ソフトは創作性を有する編集著作物に当たるとはいえない。
平成19年06月28日名古屋地方裁判所[平成18(ワ)3944]

【住宅ローン金利比較表】

原告は,本件図表は,素材である「全国の金融機関の住宅ローン金利」の選択又は配列によって創作性を有する「編集著作物」(著作権法
12条1項)である旨主張する。
そこで検討するに,本件図表は,各金融機関が提供する住宅ローン商品の金利情報について,全国又は各地域別の金融機関ごとに,その商品名,変動金利の数値,固定金利(1年,2年,3年,5年,7年,10年,15年,20年,25年,30年,35年の固定期間別)の数値を表示して金利を対比した表及びそれらの金利の低い順に昇降順に並べて対比した表であり,全国の金融機関の全てを対象に,その提供する全ての住宅ローン商品の金利情報を素材として選択したものであり,そのような選択はありふれたものであるから,素材の選択によって創作性を認めることはできない。
また,本件図表における素材の配列は,別紙B記載のように,左から,「金融機関名(店舗情報へリンク)」,「キャンペーン商品名等(各金融機関の商品ページへリンク)」,「変動金利型年金利(%)」及び「固定金利型固定期間別年金利(%)」(1年,2年,3年,5年,7年,10年,15年,20年,25年,30年,35年の固定期間別)の順に配列したものであり,この種の住宅ローン金利の対比表に多くみられたありふれた配列であり,また,本件図表を構成する図表の中には,各地域ごとの各金融機関の住宅ローン商品を金利の低い順に昇降順に配列したものがあるが,このように金利の低い順に住宅ローン商品を配列することもありふれたものであるから,素材の配列によっても創作性を認めることはできない。
したがって,本件図表が編集著作物に当たるとの原告の主張は,理由がない。
平成22年12月21日東京地方裁判所[平成22(ワ)12322]

著作権判例エッセンス トップ 


     Kaneda Copyright Agency
     カネダ著作権事務所


      Home  メール相談  契約マネジメント  文化庁登録マネジメント  侵害対応マネジメントその他 
      アメリカ著作権局登録マネジメント