[e144]侵害とみなす行為(6項関係

著作権法113条5項【注:現6項。以下同じ。】の規定が,著作者の名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為を著作者人格権の侵害とみなすと定めているのは,著作者の民法上の名誉権の保護とは別に,その著作物の利用行為という側面から,著作者の名誉又は声望を保つ権利を実質的に保護する趣旨に出たものであることに照らせば,同項所定の著作者人格権侵害の成否は,他人の著作物の利用態様に着目して,当該著作物利用行為が,社会的に見て,著作者の名誉又は声望を害するおそれがあると認められるような行為であるか否かによって決せられるべきである。したがって,他人の言語の著作物の一部を引用して利用した場合において,殊更に前後の文脈を無視して断片的な引用のつぎはぎを行うことにより,引用された著作物の趣旨をゆがめ,その内容を誤解させるような態様でこれを利用したときは,同一性保持権の侵害の成否の点はさておき,これに接した一般読者の普通の注意と読み方を基準として,そのような利用態様のゆえに,引用された著作物の著作者の名誉又は声望が害されるおそれがあると認められる限り,同項所定の著作者人格権の侵害となることはあり得るが,その引用自体,全体として正確性を欠くものでなく,前後の文脈等に照らして,当該著作物の趣旨を損なうとはいえないときは,他人の著作物の利用態様により著作者の名誉又は声望を害するおそれがあるとはいえないのであるから,当該引用された著作物の内容を批判,非難する内容を含むものであったとしても,同項所定の著作者人格権の侵害には当たらないと解すべきである。
(略)
その場合において,当該引用に係る著作物の内容を批判,非難する表現が,別途名誉毀損の不法行為を構成するかどうかは別論である。なぜならば,著作権法
113条5項は,上記のとおり,著作物の利用行為に着目した規定であって,名誉毀損の不法行為の成否とは場面を異にするからである。
平成14年11月27日東京高等裁判所[平成14(ネ)2205]≫

著作権法113条6項所定の行為に該当するか否かは,著作物の利用態様に着目して,社会的に見て,著作者の名誉又は声望を害するおそれがあると認められるか否かによって,決せられるべきである(。)
平成27年4月28日知的財産高等裁判所[平成27(ネ)10005]

著作権法113条6項は,著作者の名誉声望を害する態様での著作物利用行為に対して,著作者人格権侵害行為とみなすものであるところ,前記のとおり,被告記述部分は,控訴人の著作物と表現上の類似性を欠き,元の著作物の創作的表現は感得できないのであるから,控訴人の著作物を利用したとはいえない。したがって,被告記述部分について著作者人格権の侵害は成り立たず,同条項適用の前提を欠いている。また,著作者の名誉声望とは,著作者がその品性,徳行,名声,信用等の人格的価値について社会から受ける客観的な評価をいい,人が自己の人格的価値について有する主観的な評価は含まれないと解されるところ,被告記述部分に,控訴人の社会的評価を低下させるものが含まれているということはできない。
平成25年09月10日 知的財産高等裁判所[平成25(ネ)10039]

著作権法113条6項の「名誉又は声望を害する方法」とは,単なる主観的な名誉感情の低下ではなく,客観的な社会的,外部的評価の低下をもたらすような行為をいい,対象となる著作物に対する意見ないし論評などは,それが誹謗中傷にわたるものでない限り,「名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為」に該当するとはいえないというべきところ,原告が指摘する被告記事の上記表現部分は,被告記事の著者の原告記事に対する意見ないし論評又は原告記事から受けた印象を記載したものにすぎず,原告又は原告記事を誹謗中傷するものとは認められないから,たとえ,被告記事の表現によって,原告の意図と著しく異なる意図を持つものとして受け取られる可能性があるとしても,そのことをもって,原告の「名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為」と認めることは相当でないというべきである。
したがって,被告記事によって,原告記事に係る原告の名誉・声望権が侵害されたということはできない。
平成28年8月19日東京地方裁判所[平成28(ワ)3218]≫
【コメント】
本件の控訴審平成29年1月24日知的財産高等裁判所 [平成28(ネ)10091]≫も同旨:『著作物に対する意見ないし論評などは,それが誹謗中傷にわたるものでない限り,著作権法113条6項の「名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為」に該当するとはいえないところ,被控訴人記事が控訴人又は控訴人記事を誹謗中傷するものとは認められないことは,前記引用の原判決が認定説示するとおりである。』

被控訴人は,甲1部分において平成4年当時の最新情報として記載したことが,控訴人らによって,平成11年4月に出版された甲2書籍の甲2部分においても,そのまま掲載されており,このことは,被控訴人の社会的評価を低下させるものであり,甲1部分の一部の著作者である被控訴人の名誉又は声望を害する方法によりその著作物が利用されたものである,と主張し,原判決は,これを著作権法113条5項【注:現6項。以下同じ。】の「著作者の名誉又は声望を害する著作物の利用行為」に当たると認定した。しかし,当裁判所は,本件については,次に述べる理由により,控訴人らの上記行為は,同項の「著作者の名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為」には当たらない,と判断する。
(略)
著作権法
113条5項に規定されている「著作者の名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為」とは,著作者の創作意図を外れた利用をされることによって,その著作物の価値を大きく損ねるような形で利用されることをいう,と解するのが相当である(本件に即していえば,教科書的書籍である甲1書籍を,全く別な目的で利用し,その著作物の価値を大きく損なうような場合が考えられる)。これに対し,上記のような著作物の利用行為は,甲2書籍を甲1書籍と同様に教科書的な書籍として利用しようとするものであり,しかも,甲1書籍の出版後6年近く経過したため,大学関係者による改訂作業により古くなった内容を改めたものが甲2書籍であるから,その改訂された甲2書籍の表現の一部に原著作者である被控訴人の意に添わない部分があったとしても,これは,上記規定が想定している場合には該当しないというべきである。これは,むしろ,被控訴人が,その著作部分について,無断で改訂版を出版され,その氏名表示権及び同一性保持権を害されたことによる損害の中の一事情として考慮されれば足りる範囲の事柄であって,これをもって,著作者の名誉又は声望を害する著作物の利用行為とすることまではできないというべきである。
平成14年07月16日東京高等裁判所[平成14(ネ)1254]

原告は,被告寿屋が本件各イラストの複製物である被告イラスト6を本件ポリ袋に使用する行為は,本件各イラストを劣化させた上,イラスト単体ではなく模様の一部として使用し,ポリ袋という,安っぽく,およそ芸術性を感じさせることのない素材に使用するものであって,本件各イラストの芸術的価値を著しく損ねるものであり,原告の名誉又は声望を害する方法による本件各イラストの利用に当たるといえるから,著作者人格権のみなし侵害行為(著作権法113条6項)に該当する旨主張する。
しかしながら,前記の認定事実によれば,本件各イラストは,原告が,被告寿屋が販売する餃子・焼売の商品を詰めて包装する紙の箱のパッケージ(カートン)に使用する目的で制作した商業的デザインであって,原告は,本件各イラストの複製物である被告イラストを被告寿屋の餃子・焼売の商品のパッケージ(カートン)に印刷して使用することを承諾していたものであるところ,本件ポリ袋は,被告寿屋の商品を入れる包装袋として使用されており,カートンとは包装の形態は異なるが,被告寿屋の商品を包装するという点ではカートンと共通していること,本件ポリ袋に付された被告イラスト6の構成態様等に照らすならば,被告寿屋が本件各イラストの複製物である被告イラスト6を本件ポリ袋に使用することによって,絵本作家である原告が社会から受ける客観的な評価の低下を来たし,その社会的名誉又は声望が毀損されたものとまで認めることはできない。
平成24年09月27日 東京地方裁判所[平成22(ワ)36664]

前記前提事実によれば,被告は,自作自演の投稿であったにもかかわらず,被告が本件似顔絵を入手した経緯については触れることなく,あたかも,被告が本件サイト上に「天皇陛下にみんなでありがとうを伝えたい。」「陛下プロジェクト」なる企画を立ち上げ,プロのクリエーターに天皇の似顔絵を描いて投稿するよう募ったところ,原告がその趣旨に賛同して本件似顔絵を2回にわたり投稿してきたかのような外形を整えて,本件似顔絵の写真を画像投稿サイトにアップロードしたものである(本件行為1)。本件似顔絵には,「C様へ」及び「A」という原告の自筆のサインがされていたところ,「C様」は,被告が本件サイトにおいて使用していたハンドルネームであった。
上記の企画は,一般人からみた場合,被告の意図にかかわりなく,一定の政治的傾向ないし思想的立場に基づくものとの評価を受ける可能性が大きいものであり,このような企画に,プロの漫画家が,自己の筆名を明らかにして2回にわたり天皇の似顔絵を投稿することは,一般人からみて,当該漫画家が上記の政治的傾向ないし思想的立場に強く共鳴,賛同しているとの評価を受け得る行為である。しかも,被告は,本件サイトに,原告の筆名のみならず,第二次世界大戦時の日本を舞台とする『特攻の島』という作品名も摘示して,上記画像投稿サイト上の上記写真へのリンク先を掲示したものである。
そうすると,本件行為1は,原告やその作品がこのような政治的傾向ないし思想的立場からの一面的な評価を受けるおそれを生じさせるものであって,原告の名誉又は声望を害する方法により本件似顔絵を利用したものとして,原告の著作者人格権を侵害するものとみなされるということができる。
平成25年12月11日知的財産高等裁判所[平成25(ネ)10064]

ところで,同条項【注:法113条6項】の「著作者の名誉又は声望」とは,著作者がその品性,徳行,名声,信用等の人格的価値について社会から受ける客観的な評価,すなわち社会的名誉声望を指すものであって,人が自己自身の人格的価値について有する主観的な評価,すなわち名誉感情は含まれないものと解すべきである(最高裁判所昭和61年5月30日第二小法廷判決参照)。
本件についてみると,被告の上記行為は,原告著作物を原告らの許可を得ることなく複製し,DVD-Rに記録して複製物1枚を作成し,本件オークションサイトにおいて,原告著作物を複製したもの(データ)を第三者の発行したDVDのおまけとして頒布する旨記述し,原告著作物の複製物を落札者に送付したというものである。原告Aが,原告著作物を「オマケとして」「お付けします」などと記述されたことによって名誉感情を害されたことは理解できるとしても,上記記述を付して原告著作物の複製の頒布が一度申し出されたことによって,それを見た通常人が,原告著作物の内容が,上記第三者の発行したDVDに付加価値を与えるものであると考えることはあっても,原告著作物には価値がないと認識することが通常であるとまではいえないから,被告が,上記記述をしたことや,無断で原告著作物を複製,頒布をした行為が,原告Aの社会的評価を低下させる行為であるということはできない。そうすると,被告が,原告Aの名誉又は声望を害する方法により原告著作物を利用したと認めることはできない。
平成28年1月22日 東京地方裁判所[平成27(ワ)9469]

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