[e153]文学作品(教科書掲載)の改変性

以上は,著作権法20条が規定する「改変」に当たるものと認められる。
(略)
なお,原告
Gは,上記著作物にはない語句を加筆させる問題を設定したことも,「改変」に当たると主張するが,上記著作物の原文自体が変更されているわけではないから,「改変」に当たるとは認められない。
平成14年12月13日東京地方裁判所[平成12(ワ)17019≫
【コメント】
本件で「著作権法20条が規定する「改変」に当たるものと認められる」とされたものは次のとおりです:
「?」を「。」に変更したこと
「。」を「!」に変更したこと
「!?」を「。」に変更したこと
丸括弧を鍵括弧に変更したこと
読点を句点に変更したこと
””を削除したこと
上記著作物にある読点を削除したこと
上記著作物にはない句読点を加えたこと
上記著作物にはない句点を加えたこと
平仮名を片仮名に変更したこと
平仮名を漢字に変更したこと
漢字を平仮名に変更したこと
「こんにちわ」を「こんにちは」に変更したこと
「はんにんのしもんをとる」という文書を削除したこと
「でんわとる」を「じゅわきとる」に変更したこと
「わーい」を「わあい。」と変更したこと
「うわーい」を「うわあい」と変更したこと

著作権法20条1項は,著作者が著作物の同一性を保持する権利を有し,その意に反して改変を受けないことを規定するところ,著作物は,思想又は感情を創作的に表現したものであるから(著作権法2条1項1号参照),著作者の意に反して思想又は感情の創作的表現に同一性を損なわせる改変が加えられた場合に同一性保持権が侵害されたというべきである。原告らの本件各著作物は,いずれも児童文学作品等であり,文字によって思想又は感情が表現された言語の著作物であるから,本件国語テストによる別紙(変更内容一覧表)の「変更箇所」欄記載の本件各著作物の変更が,同法20条1項所定の同一性保持権の侵害に当たるか否かは,原告らの意に反して本件各著作物の思想又は感情の創作的表現に同一性を損なわせる改変が加えられたか否か,すなわち,文字によって表された思想又は感情の創作的表現の同一性を損なわせたか否かによって判断すべきである。
(略)
これらの変更は,本件各著作物にある単語,文節ないし文章を削除し,本件各著作物にない単語,文節ないし文章を加筆し,本件各著作物の単語を全く別の単語に置き換え,又は本件各著作物にある単語を空欄にするなどしたものである。このような変更は,いずれも,文字による表現自体を変更するものであるから,本件各著作物における文字によって表された思想又は感情の創作的表現の同一性を損ない,原告らの人格的利益を害しない程度のものとはいえないから,著作権法
20条1項所定の同一性保持権の侵害に当たるというべきである。
(略)
これらの変更は,本件各著作物にはない挿絵や写真が付加されているものである。そもそも,言語の著作物である本件各著作物と挿絵や写真は,それぞれ別個の著作物であるから,挿絵や写真がなければ著作者の文字による思想又は感情の表現が不完全になるとか,著作者が文字による表現を視覚的表現によって補う意図で自ら挿絵や写真を挿入するなど,文字による表現と挿絵や写真とが不可分一体で分離できない場合に,挿絵や写真を変更することにより,文字によって表された思想又は感情の創作的表現の同一性を損なわせるなどの特段の事情のない限り,同一性保持権の侵害には当たらないというべきである。
(略)
これらの変更は,本件各著作物に傍線や波線を付加したものである。このような変更は,いずれも,本件各著作物の文字による表現自体の変更ではなく,傍線や波線等を付加したからといって,文字によって表された思想又は感情の創作的表現の同一性を損なわせるとはいえない。したがって,これらの変更は,そもそも改変には当たらない。
≪平成18年03月31日東京地方裁判所[平成15(ワ)29709]≫
【コメント】
本件では、次のような判断も示されました:
「このような変更【注:字体を太字に変更したもの,分かち書きにしたもの,段落の上部に番号を付加したもの】は,いずれも,本件各著作物の文字による表現自体の変更ではなく,文字によって表された思想又は感情の創作的表現の同一性を損なわせるとはいえない。したがって,これらの変更は,そもそも改変には当たらない。」
「ここにおける文章等の加筆【注:教師用の注意書を加筆したもの】は,注意書として本件著作物の欄外に表示されたものであることが表現形式上明らかであり,本件著作物自体を変更したものとはいえない。よって,このような変更は,文字によって表された思想又は感情の創作的表現の同一性を損なわせるとはいえない。したがって,この変更は,そもそも改変には当たらない。」
「別紙変更は,
1年1学期の本件各教科書中の一節「あおいうみがみえた。しろいふねもみえた。」の一部を取り出して,ひらがなを四角いマスの中に書いて練習させるものである。そして,これらの本件国語テストにおけるわずか「あおいうみがみえた。しろいふねもみえた。」の記載から,本件著作物の表現上の本質的特徴を感得することは困難であるから,そもそもこれが本件著作物を改変したものということはできない。また,これらの本件国語テストにおいては,左脇又は空欄としたマスの中に,練習すべき文字が別途記載されているから,このような変更は,いずれも,同著作物の文字による表現自体の変更ではなく,文字によって表された思想又は感情の創作的表現の同一性を損なわせるとはいえない。したがって,これらの変更は,同一性保持権の侵害には当たらない。


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