[e154]イラスト・図柄の改変性

本件利用の具体的内容は、翼竜を切除し、ティラノサウルスについて、全体の色調を黄、赤系統の色調に変更し、首から背にかけて連続した突起物を加えるなどして輪郭を変え、写実的かつ緻密に描かれていた目、鼻孔、口腔、舌、歯、足、爪等をぼかし、肌の襞の模様や陰影をはっきりと判別できず、かえって別個の模様を浮き上がらせるようなものにしている。しかし、本件著作物における、首を捻り右正面を向いて大きく口を開け歯をむき出したティラノサウルスという基本的な構図、その輪郭、目、鼻孔、口腔、舌、歯、足、爪等の細部の描写自体は残存したままである。
右認定の事実によれば、アド・エヌは、本件利用によって、本件著作物の表現を変更しあるいは一部切除してこれを改変したものと認めるのが相当である。したがって、本件利用は、著作者である被控訴人の承諾又は著作権法の定める適用除外規定に該当する事由がない限り、本件著作物について被控訴人が有する同一性保持権を侵害するものというべきである。
平成11年09月21日東京高等裁判所[平成10(ネ)5108等]

原告イラストは,①「特徴に乏しい建物」,羽が小さく脚部が二本の風車が,それぞれ描かれ,②境界線を曖昧にして,にじみだすような筆致で,各名所旧跡をデフォルメして描かれているのに対して,被告イラストは,①パゴダ風の建物,イスラム風の建物,万里の長城,雲,羽が大きく脚部が台形状の風車が,それぞれ描かれ,②シャープな描線が用いられ,個々の名所旧跡も写実的に表現されている点において,相違する。
(略)
原告は,原告イラストの作成に当たり,個々のイラストについて,すべての境界線が曖昧な,にじみだすような筆致で描き,メルヘン的な雰囲気を醸し出すことにより,主題を強調しようとしていることがうかがわれる。これに対し,被告らは,被告イラストを作成するに当たり,原告イラストの筆致を変更したり,個々のイラストの内容を一部変更するなどした。
したがって,被告イラストを作成し,これを使用して被告新聞広告を掲載した行為は,原告イラストの表現に変更,切除その他の改変を加えているので,原告イラストについての原告が有する同一性保持権を侵害したものということができる。
平成15年11月12日東京地方裁判所[平成14(ワ)23479]

一般に,イラストは,線描のみならず,その色調の違いのみによっても見る者に異なる印象を与えるから,色の選択は,基本的には,イラストレーターが自己の作風を表現するものとして,イラストレーターの人格的な利益に関わるというべきであり,本件各イラストの色を変更した被告スタジオダンクの行為は,著作者である原告の意に反する改変に当たり,本件各イラストについての原告の同一性保持権を侵害したというべきである。
(略)
イラストの大きさ,特に,他のイラストとの関係で認識される相対的な大きさについても,色調と同様,その違いによって見る者に異なる印象を与えるから,その選択は,イラストレーターが自己の作風を表現するものとして,イラストレーターの人格的な利益に関わるものであるということができる。
平成19年11月16日東京地方裁判所[平成19(ワ)4822]

本件ビデオは、本件ゲームソフト【注:架空の高校「きらめき高校」における恋愛シミュレーションゲーム。登場人物である藤崎詩織は、優等生的で清純なさわやかな印象を与える性格付けがされている。本件ゲームソフトにおいて藤崎詩織が性的行為を行うような場面は存在しない】において、男子生徒が藤崎詩織から愛の告白を受けた最終場面の続編として設定され、清純な女子高校生と性格付けられていた登場人物の藤崎詩織が、伝説の樹の下で、男子生徒との性行為を繰り返し行うという、露骨な性描写を内容とする、10分程度の成人向けのアニメーションビデオとして制作されている。
確かに、本件ビデオにおいては、藤崎詩織の名前が用いられていないが、①本件ビデオのパッケージにおける女子高校生の図柄と、本件ゲームソフトのパッケージにおける藤崎詩織の図柄とを対比すると、前記認定した共通の類似点がある他、さらに、後髪を向かって左側になびかせている点、首をやや左側に傾けている点、頭頂部に極く短い髪を描いている点、髪の毛に白色のハイライトを付けている点など細部に至るまで酷似していること、②本件ビデオのパッケージにおける「どぎまぎイマジネーション」というタイトルの選択、各文字のデザイン及び色彩、青い波形の背景デザインなど、本件ゲームソフトのパッケージにおける各部分と類似していること、③本件ビデオにおいて、「本当の気持ち、告白します。」と表記され、本件ゲームソフトとの関連性を連想させる説明がされていること等の事実から、本件ビデオの購入者は、右ビデオにおける女子高校生を藤崎詩織であると認識するものと解するのが相当である。
以上によると、被告は、本件ビデオにおいて、本件藤崎の図柄を、性行為を行う姿に改変しているというべきであり、原告の有する、本件藤崎の図柄に係る同一性保持権を侵害している。
平成11年08月30日東京地方裁判所[平成10(ワ)15575]

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