[e158]公表権の侵害性

設計図面自体は一般的に公衆に提供されることを予定している著作物ではなく、設計者が設計委託者に対し部数を限つて設計図書を提供するのが通例で、設計図書自体を公表することは通常の場合考えられないが、このことを理由に設計図書に関し著作権の一態様である公表権が否定されるものではないというべきである。
ところで、設計者が設計委託者に対し設計図書を提供する場合、部数を限つて設計図書を提供するのが通例であることは前記のとおりであるが、委託者がその設計図書を利用してなす建築も一回かつ一棟に限られていること、設計委託契約上の権利義務は相手方の書面による同意がなければ第三者に譲渡できないとされていることからすると委託者に設計図書を提供することは公衆に提供することに当らず、また、建築確認申請に際し設計図書を添付、提出したことも、建築確認という行政手続のために当該行政庁に提出したものであり、公衆に提供したことに当らない。
平成1年05月23日横浜地方裁判所[昭和60(行ウ)5]
【コメント】
次は、本件における控訴審平成3年05月31日東京高等裁判所[平成1(行コ)69]≫で示された判断です:設計図書自体は一般的に公衆に提供されることを予定されている著作物ではなく、設計者が設計委託者に対し、部数を限って設計図書を提供するのが通例であろうし、本件においても、(証拠等)によれば、太陽企画が委託を受けて設計した場合、設計図書の著作物は太陽企画に属すること、太陽企画が委託者に提出する設計図書は5部以内とし、5部を超える場合は有償とすること、委託者がこの設計図書により建物を建てることができるのは一回かつ一棟限りであること、設計委託契約上の権利義務は相手方の書面による同意がなければ第三者に譲渡できないことが認められるのであるから、本件各図面が、公開を予定して作成され、一般に広く公開されているということはできないし、また、建築確認申請書に添付することは、建築確認という行政手続のために当該行政庁に提出したにすぎず、そのことだけで公表に付したと理解することはできない。

本件小論文は未だ公表されていないものであるから、各応募者は、本件小論文について著作者人格権としての公表権を有するが、著作者が未公表の著作物を地方公共団体に提供した場合には、情報公開条例の規定により開示されることについて、同意したものとみなされることになる(著作権法第18条第3項第2号【注:現3号】)。
しかしながら、その場合においても、開示の決定がなされるまでに著作者が別段の意思表示をしたときは、同意に関する上記規定の適用が排除されると定められている(同号)ところ、上記のとおり、
2名については、自己の論文が開示されることに反対の意思表示をしているものである。
そうすると、上記2名の論文を開示することは、作成者が識別されない形態を取ったとしても、作成者本人の同意がない以上、その公表権を害することになるから、本件条例により開示が認められるための「公にしても、個人の権利利益が害されるおそれがない」(本件条例第10条第2項)との要件を欠くものといわざるを得ない。
平成15年05月28日東京高等裁判所[平成14(行コ)265]

【非侵害事例】

本件講演は原告らそれぞれの思想を言語により表現したものであり,各原告の発言部分ごとに言語の著作物に該当するところ,前記前提となる事実によれば,本件講演会は,定員86名の会場で行われ,対象者が限定されておらず,事前に申込みをすれば誰でも参加することができるものであったというのである。そうすると,本件講演は,不特定又は多数の者に対して行われたものであって,原告らの口述により公衆に提示され,公表されたと認められる。
この点につき,原告らは,本件配信はライブ配信であり,本件講演が原告らによる口述と同時に配信されるため,本件配信の時点では本件講演は未公表であった旨主張する。しかし,本件配信は原告らが公に口述するのに先立って本件講演を配信するものではなく,原告らによる口述を前提として,これをそのまま配信するものであるから,本件配信は原告らが公表した著作物についてされたものというほかない。
したがって,本件配信による公表権侵害は成立しない。
平成28年12月15日東京地方裁判所[平成28(ワ)11697]

本件詩は言語著作物(同法10条1項1号)であるから、これが発行された場合に公表されたといえる(同法4条1項)ところ、右の「発行」とは、その性質に応じて公衆の要求を満たす程度の部数の複製物が作成され、頒布されたことをいい(同法3条1項)、さらに、「公衆」には、特定かつ多数の者が含まれるとされている(同法2条5項)。
これを本件についてみるに、証拠によれば、本件詩は、平成3年度の甲府市立北中学校の「学年文集」に掲載されたこと、この文集は右中学校の教諭及び同年度の卒業生に合計300部以上配布されたことが認められる。
右認定の事実によれば、本件詩は、300名以上という多数の者の要求を満たすに足りる部数の複製物が作成されて頒布されたものといえるから、公表されたものと認められる。また、本件詩の著作者である原告は、本件詩が学年文集に掲載されることを承諾していたものであるから、これが右のような形で公表されることに同意していたということができる。
平成12年02月29日東京地方裁判所[平成10(ワ)5887]≫

本件写真は,本件各走行会において,被控訴人の販売用テント前でインデックス写真等として展示されていることが認められる。そして,著作物は展示の方法で公衆に提示された場合において公表されたものとなるところ(著作権法4条1項),控訴人は本件写真を本件各走行会において即時販売用に展示することは承諾していたと認められるから,本件写真がライコランド社のホームページやポスターに掲載された時点では既に著作者の同意を得た公表がされていることになり,著作権法18条1項の「まだ公表されていないもの(著作者の同意を得ないで公表された著作物を含む。)」に該当しない。
平成21年12月24日知的財産高等裁判所[平成21(ネ)10051]

原告は、原告は被告に対し、「加賀、能登」を金沢鉄道局が内部的に映写することだけを許諾したに過ぎないのに、被告は、これを放送局から放映し、原告が「加賀、能登」について有する公表権を侵害した旨主張する。ところで、旧著作権法には公表権についての直接の規定はないが、旧著作権法の解釈として、著作者はその著作物でまだ公表されていないものを公衆に提供し、又は提示する権利を有するものと解され、そして右公衆の中には特定且つ多数の者を含むものというべきところ、「加賀、能登」が金沢鉄道局で内部的に映写することを許諾されたものであるならば、これが、金沢鉄道局の内部であれ、少なくとも特定且つ多数の者に提示されたであろうことが容易に推察されるところであるから、被告が放送局から「加賀、能登」を放映した行為は、まだ公表されていない著作物を公衆に提示したものとはいえないから、原告の「加賀、能登」について有する公表権を侵害するものでもない。
昭和52年02月28日東京地方裁判所[昭和44(ワ)1528]

原告が自ら本件入れ墨を公表した以上,その後に被告らがこれを原告の承諾していない媒体に掲載したからといって,これが公表権を侵害するということはでき(ない。)
平成23年07月29日東京地方裁判所[平成21(ワ)31755]

著作物3については,著作者であるYが複製頒布したものであるから,複製権者が著作者の同意を得て複製頒布したものであり,その複製頒布がその性質に応じ公衆の要求を満たすことができる相当程度の部数に達している限り,公表されたものといえることになる
前提となる事実のとおり,著作物
3は,同原告が,被告による頒布行為の前に,ライブハウスの関係者にのみ記念として配布する趣旨で,同関係者らに複製頒布したものであり,その数量は少数であることが窺われるが,本件の著作物3のようなDVDに収録された「映画の著作物」については,作成頒布された複製物の数量が少数であったとしても,著作物の性質上,かかる場合においても,公衆の要求を満たすことができる相当程度の部数の複製物が複製頒布されたものと認められるから,同原告は,被告による頒布行為以前に,当該著作物を公表したと解するのが相当である。
したがって,著作物
3について,被告が,同原告の許諾を得ることなく,著作物3を複製し不特定人に頒布したとしても,同原告の著作者人格権(公表権,同法18条)の侵害は成立しない
平成23年10月31日東京地方裁判所[平成21(ワ)31190]

原告は,被告による本件動画へのリンクに先立ち,本件生放送をライブストリーミング配信しており,しかも原告の配信動画の視聴者数については,「常時400人以上であり,特に企画番組は人気で,この日は数千人の視聴者を超え」(訴状)ていたとされる。そうすると,著作者である原告自身が,本件生放送を公衆送信(法2条1項7号の2)の方法で公衆に提示し,公表(法4条1項)したのであるから,本件生放送の一部にあたる本件動画について,公表権侵害は成立しない
平成25年06月20日大阪地方裁判所[平成23(ワ)15245]

本件写真は,未公表の著作物であった。そして,前記認定のとおり,補助参加人は,第1審原告から本件写真の利用について包括的許諾を受けているのであるから,第1審原告は,補助参加人(ないしは補助参加人から本件写真の著作権の利用の許諾を受けた者)において本件写真が利用ないし二次利用され公衆に提供されることについて包括的に同意したものと認められる(著作権法18条2項1号参照)。そうすると,第1審原告の公表権侵害の主張は理由がない。
平成25年12月25日知的財産高等裁判所[平成25(ネ)10076]

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