[e161]編集著作権の射程範囲

編集著作物における創作性は,素材の選択又は配列に,何らかの形で人間の創作活動の成果が表れ,編集者の個性が表れていることをもって足りるものと解される。もっとも,編集著作物においても,具体的な編集物に創作的な表現として表れた素材の選択や配列が保護されるのであって,具体的な編集物と離れた編集方針それ自体が保護されるわけではない。
平成25年04月18日知的財産高等裁判所[平成24(ネ)10076]

編集著作物は,編集物でその素材の選択又は配列によって創作性を有するものをいい(著作権法12条1項),編集著作物の著作者の権利は,当該編集物の部分を構成する著作物の著作者の権利に影響を及ぼさない(同条2項)。同条は,既存の著作物を編集して完成させたにすぎない場合でも,素材の選択方法や配列方法に創作性が見られる場合には,かかる編集を行った者に編集物を構成する個々の著作物の著作権者の権利とは独立して著作権法上の保護を与えようとする趣旨に出たものである。
そうすると,編集著作物の著作者の権利が及ぶのは,あくまで編集著作物として利用された場合に限るのであって,編集物の部分を構成する著作物が個別に利用されたにすぎない場合には,編集著作物の著作者の権利はこれに及ばないと解すべきである。
(中略)編集著作物はその素材の選択又は配列の創作性ゆえに著作物と認められるものであり,その著作権は著作物を一定のまとまりとして利用する場合に機能する権利にすぎず,個々の著作物の利用について問題が生じた場合には,個々の著作物の権利者が権利行使をすれば足りる。また,編集物の一部分を構成する個々の著作物の利用に際しても編集著作物の著作者の権利行使を許したのでは,個々の著作物の著作者の権利を制限することにもなりかねず,著作権法
12条2項の趣旨に反することになるといわざるを得ない。
平成17年07月01日東京地方裁判所[平成16(ワ)12242]≫

編集著作物は,素材の選択又は配列に創作性を有することを理由に,著作物として著作権法上の保護の対象とされるものであるから,編集者の思想・目的も素材の選択・配列に表れた限りにおいて保護されるものというべきである。したがって,編集著作物を構成する素材たる個別の著作物が利用されたにとどまる場合には,いまだ素材の選択・配列に表れた編集者の思想・目的が害されたとはいえないから,編集著作物の著作者が著作者人格権に基づいて当該利用行為を差し止めることはできない。
平成17年11月21日知的財産高等裁判所[平成7(ネ)10102]≫

編集著作物に該当する具体的な編集物に記載,表現されているもののすべてが編集著作権の対象となるものではなく,編集著作権の対象として,その選択,配列の創作性が問題とされる素材が何であるかは,具体的な事案に即して当該編集物の性質,内容によって定まるものである。そして,定期刊行物である雑誌についていえば,編集著作権は,個別の記事を構成する文章や写真の著作権と区別して観念することができるものであるところ,この場合に編集著作権の対象となるのは,当該号全体を通じての主題(特集号など)を決定し,掲載する記事やグラビア等の写真の主題を定め,掲載する個別の記事,写真,イラスト等を取捨選択して,その配列等を決定するという編集者の知的創作活動の結果としての,雑誌における全体的構成,記事,写真等の選択,配列であるというべきである。
(略)
そうすると,本件において原告会社が編集著作物についての著作者人格権及び編集著作権の侵害として主張する改変部分については,いずれも,個々の文章表現や個別の写真に付された説明文の表現内容,配置に関するものであって,編集著作物の対象としての素材の選択・配列を改変するものではないから,そもそも編集著作物についての著作者人格権の侵害や編集著作権の侵害を問題とする余地はないというべきである。
平成14年03月28日東京地方裁判所[平成10(ワ)13294]

控訴人が編集権及び編集構成権の具体的内容として主張するもののうち、特殊小型変形版の大きさ及びソフトカバーの表紙仕上げを採用し、右頁に物語を配し、これに相応する絵を左頁に配し、右頁の右下方に小さなカットを挿入し、活字配列を左右9行を基本とし、表紙に各物語のシンボルとなる絵を描き、最上段に「名作アニメ絵本シリーズ」又は「アニメ昔ばなしシリーズ」を配し、右側にタイトル番号を付し、裏表紙に出版するシリーズ本の内訳一覧広告を掲載するなどの構成を採用したという点については、これらの構成自体、いずれも思想等の表現ではなく創作に係る要素もないから、著作物とは認められず、素材の選択又は配列によって創作性を有する場合に編集著作物(同法12条1項)として著作物性が認められるかどうかが問題となるにすぎない。また、控訴人が編集権及び編集構成権の具体的内容として主張するもののうち、物語内容、絵等に独自の翻案をした点は、新たに付加された部分に創作性がある場合に二次的著作物(同法2条1項11号)として保護される範囲が問題とされる。このように、著作権法は、翻案に創作性がある場合は二次的著作権により、素材の選択又は配列によって創作性を有する場合は編集著作権により、それぞれ著作物として保護を図ることを予定しており、同法上明記されたこれらの権利とは別個に、控訴人の主張する編集権及び編集構成権という法令上の規定を欠く権利を解釈上認めるべき法的根拠はない。
平成13年08月29日東京高等裁判所[平成13(ネ)147]

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