[e162]編集著作権(新聞)の侵害性

新聞は、社会において日々生起するさまざまな出来事を迅速に、かつ幅広く伝達するための刊行物であるから、素材の選択によって編集著作物としての創作性を有するものと評価し得ることの最も重要な要素は、まず、収集された素材である多数の記事に具現された情報の中から、一定の編集方針なり、ニュース性等に基づき、伝達すべき価値のあるものとして、どのような出来事に関する情報を選択して表現しているかという点に存するものと解される。また、配列についていえば、選択された情報(記事)がその重要度や性格・内容等に応じてどのように配列されているかという点にあるものと解される。
被控訴人新聞が編集著作物性を有するものと認められるのも右の趣旨によるものであるから、控訴人文書の作成・頒布が被控訴人新聞の編集著作権を侵害するものであるか否か、すなわち、控訴人文書が被控訴人新聞の翻案であるか否かは、控訴人文書が被控訴人新聞に依拠して作成されたものであるか否か、その内容において、当該記事の核心的事項である被控訴人新聞が伝達すべき価値のあるものとして選択し、当該記事に具現化された客観的な出来事に関する表現と共通しているか否か、また、配列において、被控訴人新聞における記事等の配列と同一又は類似しているか否かなどを考慮して決すべきものと解するのが相当である。
(略)
控訴人は、編集著作物は与えられた素材を選択・配列するという、それ自体では創作性の発揮しにくい行為を根拠とするから、その保護も弱くならざるを得ないし、新聞においては、素材の特性から、事実自体の独占につながらないように格別の配慮が必要である旨主張する。
しかしながら、素材を選択・配列することが創作性を発揮しにくい行為であり、その保護も弱くならざるを得ない旨の一般論自体採用することができない。そして、新聞の場合、素材である多数の記事の中から、伝達すべき情報として何を取り上げ、これをどのような形で取り扱うかは、当該新聞の個性を形成するものであり、新聞としての創作性を発揮し得るものであるところ、被控訴人新聞は、一定の編集方針に基づいた伝達すべき情報の選択、及びその配列に創作性を認め得るものであるから、これに対して所定の保護が与えられるのは当然であり、このことが事実自体の独占につながるということにはならないのであって、この点に関する控訴人の主張も理由がない。
(略)
新聞記事は、客観的な出来事を素材とするものであっても、一定の観点ないし価値基準の下に、収集した客観的事実のみならず、その背景事実や第三者の発言等の情報を評価、確認して当該記事に盛り込む事項を選択し、これを構成して表現するものであるところ、新聞が、素材の選択によって創作性を有するものと評価し得ることの最も重要な要素は、収集された素材である多数の記事に具現された情報の中から、一定の編集方針なり、ニュース性等に基づき、伝達すべき価値のあるものとして、どのような客観的な出来事に関する情報を選択して表現しているかという点に存するものというべく、したがって、新聞の編集著作権に対する翻案権の侵害が成立するためには、対象となる文書が、当該新聞に依拠して、そこで取り上げられ、記事に具現化されている情報の核心的事項である客観的な出来事の表現と共通するものを同様に要素としていれば足り、両者の個々の素材(要素)自体の具体的な表現や詳細な内容が相当程度において一致していることまでは必要ないものと解するのが相当である。また、選択された情報(記事)がその重要度や性格・内容等に応じてどのように配列されているかという点に当該新聞の配列上の特徴が存するのであるから、対象となる文書が、当該新聞における特徴的な配列と一致又は類似していれば翻案関係にあるものというべきである。
平成6年10月27日東京高等裁判所[平成5(ネ)3528]≫


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