[e164]写真集の編集著作物性

本件著作物は,各頁における画像,解説文等の配列,掲載場所等が表された原告作成のペーパーレイアウト【注:本件著作物(出版物)の完成時における紙面構成をレイアウトしたもの】と解説文等の文章部分より成るものであるが,画像部分は,原告が,春画浮世絵の分野における自らの学識・造詣に基づいて原告の有する膨大な春画浮世絵コレクションのフィルムの中から,美術的価値のあるものなどを選別して配列したものであり,解説文等の文章部分は,これらの画像につき原告が解説を加えたものである。
本件著作物のうち,解説文等の文章部分は春画浮世絵の分野における原告の学識・造詣を発揮して作成したもので,創作性を有する著作物であることはいうまでもない。
また,文章以外の部分,すなわち春画浮世絵の画像を選別し,これを配列したものに題字等を付した部分も,前記のとおり,春画浮世絵の分野における原告の学識・造詣を発揮して選別し,歴史的順序やデザイン上の観点からの考慮に従って配列したものであるから,原告の精神活動の成果としての創作性を有するものであって,「編集物でその素材の選択又はその配列に創作性を有するもの」(著作権法
12条1項),すなわち編集著作物に該当するものということができる。
平成13年09月20日東京地方裁判所[平成11(ワ)24998]
【コメント】
次の、控訴審平成14年12月10日東京高等裁判所[平成13(ネ)5284]≫の判断も参照:本件ペーパーレイアウトは,被控訴人がその編集方針に従い,同人が世界各地で撮影した膨大な写真の中から,主要なものを選択し,選択した写真とこれについて被控訴人が執筆した解説文を,同人の長年に及ぶ学識,知見に基づいて,時代別に体系的に構成し配列したものであるから,素材である写真及び解説文の選択と配列により被控訴人の思想又は感情を創作的に表現したものであって,学術,美術の範囲に属するものということができ,著作物性を優に認めることができる。

そして,これらの写真をまとめた写真集としての本件写真集は,写真の選択,配置,レイアウト等に種々の工夫が加えられており,例えば,「ホ~ムラン」という人形と「あこがれのボギー」という人形をともに背後から,背景を白として撮影した写真を見開きで掲載した次の頁には,背景を黒として同じ人形の正面からの写真を見開きで掲載したり,「偉大なる一歩」という人形の写真を裏焼きを交え,向きを変えて見開き2頁に8枚掲載したり,また,「猛牛のり」という人形の写真と「よみがえる開拓者魂」という人形の写真の間にこれらの人形が活躍する背景を思わせる荒野の風景写真が挿入されていたり,「子供たちのもとへ」等の3体のサンタクロースの人形の写真と「グランパパ」という贈り物を抱えた人形の写真との間に雪景色の風景写真が挿入され,季節感が醸成されている等,たんに上記の写真を順番に並べたといったものではなく,これらの写真に一定の動きを与えたり,物語性を付与するものとなっており,そこに編集物としての創作性があるものと認められる。
平成19年01月31日横浜地方裁判所[平成16(ワ)3460]≫

本件写真集は、1年366日に1日ごとに計366種類の花を1つずつ「誕生花」として対応させ、写真家である原告が撮影したそれぞれの花の写真と花言葉を組み合わせて製作した写真集であり、それぞれの日に対応する「誕生花」としての花及びこれに対応する花言葉の選択は最終的に原告が行ったものであり、花言葉の一部は原告自らが創作したものである。この事実と証拠によれば、本件写真集に用いられた366枚の花の写真は、原告の構想する「誕生花」に合致する花を、主として自然の中で咲いている花の中から取材旅行で探し出し、毎年定点観測を行うことなどを繰り返して、約5年をかけて撮影したものの中から選択したものであることが認められ、これらの写真は、その撮影対象・時期の選定、撮影の構図等において創作性があり、原告の思想又は感情を創作的に表現したものとして、著作物性を有するものであると認められる。そして、これらの写真のみならず、1年の各日ごとの「誕生花」の選択とこれに対応した写真及び花言葉の組み合わせとして表現されたものの全体は、1年366日の「誕生花」とその花言葉という統一的なまとまりのある意味を有しており、単なる花の写真の集合を超えて、原告の思想又は感情が創作的に表現されたものとして、著作権法上の著作物に該当するものと認めるのが相当である(以下、本件写真集における「誕生花」としての花の選択並びにこれに対応する写真及び花言葉の組合せ全体を「本件誕生花」という。)。
この点について、被告らは、「誕生花」の選択についても、花言葉の表現そのもの及び花との組合せについても、表現方法の創作性はないと主張する。
確かに、
1年の各日に一定の花を対応させることや、一定の花に「花言葉」を対応させるという手法が古来から存在することは原告が自認するところであるし、(証拠等)によれば、原告が本件写真集ないし本件ポスターにおける「誕生花」の花言葉として選択した言葉の多くは、一般に流布され、又は他の出版物中にも見られるものであることが認められる。また、本件写真集における各日に対応する「誕生花」の具体的な選択及びそれぞれの花言葉も、C著「花を贈る事典366日」(平成5年発行)と共通するところが多く見られる。原告は、「誕生花は人生の応援花」とのコンセプトから、一般に流布されている花言葉でもこのコンセプトにふさわしくないものについては、自ら創作したと主張するが、花言葉の一部に原告が創作したものがあるとしても、花言葉自体は、一般的な言葉を選択したごく短い表現である(例えば、1月1日の「梅」は「忠実、気品」、1月2日の「シンビジューム」は「飾らない心、素朴」といったものであり、原告が自ら創作した花言葉がどれであるかは特定されていないが、本件ポスターによれば、どの花言葉も同程度の長さと表現態様である。)。
しかしながら、1年の各日に対応した花を「誕生花」として選定するというアイデアや個々の花言葉の表現自体は著作権法による保護の対象にならないということと、1年366日のそれぞれの日に対応した「誕生花」を具体的に選定し、その花言葉を選択ないし創作し、これと各花の写真とを組み合わせて表現することが全体として著作物に当たるかどうかということとは別個に考える必要がある。そして、本件写真集におけるこれらの組み合わせからなる表現(本件誕生花)は、前述のとおり、全体として統一的に原告の思想又は感情を創作的に表現したものと認めるに足りるものというべきである。したがって、本件誕生花について著作物性を肯定することができる。
平成16年02月12日大阪地方裁判所[平成14(ワ)13194]

一審原告たる控訴人は,本件写真集は同人が過去に撮影しストックしていた写真に加えて,本件写真集のためだけに撮影された写真を追加し,1年365日の日ごとにそれぞれの季節・行事等にふさわしいと考えられる花を対応させて「日めくりカレンダー」として編集されたものであるから,1枚1枚の写真自体が著作物であると同時に,全体として素材の選択又は配列によって創作性を有する編集著作物であると主張し,これに対し一審被告たる被控訴人は,本件写真集について知的創作活動の結果としての表現は何ら読み取ることができず,単なる花の写真の画像データの集合でしかないから編集著作物には当たらないと反論する。
よって検討するに,著作権法12条は,編集著作物につき「編集物…でその素材の選択又は配列によって創作性を有するものは,著作物として保護する」と規定しているところ,前記認定のとおり,控訴人が撮影した花の写真を365枚集めた画像データである本件写真集は,1枚1枚の写真がそれぞれに著作物であると同時に,その全体も1から365の番号が付されていて,自然写真家としての豊富な経験を有する控訴人が季節・年中行事・花言葉等に照らして選択・配列したものであることが認められるから,素材の選択及び配列において著作権法12条にいう創作性を有すると認めるのが相当であり,編集著作物性を肯定すべきである。
平成20年06月23日知的財産高等裁判所[平成20(ネ)10008]

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