[e174]差止の射程範囲(その他)

【将来発生する著作権に基づく差止の可否】

著作権法112条は、著作権を侵害するおそれがある者に対し、その侵害の予防を請求することができる旨規定しているから、既に著作権が発生している場合には、たとえ侵害行為自体はいまだなされていない段階においても、予測される侵害に対する予防を請求することができることはいうまでもない。
問題は、請求の根拠となる著作物が口頭弁論終結時に存在しておらず、将来発生することとなる場合にも将来の給付の訴えとして差止請求を求めることができるかという点にある。
民事訴訟法
226【注:現135条。以下同じ】条は、将来の給付の訴えについて、予めその請求をする必要がある場合にはこれを認めているが、この訴えが認められるためには、その前提として、権利発生の基礎をなす事実上及び法律上の関係(請求の基礎たる関係)が存在していることが必要であり、したがって、将来発生する著作権に基づく差止請求を無条件に認めることはできない。
しかし、新聞の場合について考えてみると、当該新聞が将来も継続して、これまでと同様の一定の編集方針に基づく素材の選択・配列を行い、これにより創作性を有する編集著作物として発行される蓋然性が高く、他方、これまで当該新聞の発行毎に編集著作権侵害行為が継続的に行われてきており、将来発行される新聞についてもこれまでと同様の編集著作権侵害行為が行われることが予測されるといった事情が存する場合には、著作権法
112条、民事訴訟法226条の各規定の趣旨、並びに新聞は短い間隔で定期的に継続反復して発行されるものであり、発行による著作権の発生をまってその侵害責任を問うのでは、実質的に権利者の救済が図れないこと、新聞においては、取り上げられる具体的な素材自体が異なっても、一定の編集方針が将来的に変更されないことが確実であれば、編集著作物性を有するものと扱うことによって法律関係の錯雑を招いたり、当事者間の衡平が害されたりするおそれがあるとは認め難いことに鑑み、将来の給付請求として、当該新聞が発行されることを条件として、予測される侵害行為に対する予防を請求することができるものと解するのが相当である。
平成6年10月27日東京高等裁判所[平成5(ネ)3528]≫

被告は,本件番組のうち,別紙放送番組目録記載の各番組以外のものは,現存する著作物ではなく,未だ制作されていない各番組について,公衆送信の差止めが認められるべきではない旨主張する。確かに,上記の番組については,未だ制作,放送されていないものをも含むと解されるが,従前から継続的に,原則として毎週,一定の曜日及び時間帯に,同一番組名で,著作物性を有する番組が放送されており,特段,放送を中止しなければならない事情は認められないから,今後も同様の形態,構成で企画・制作され,少なくともある程度の期間は放送が続けられる蓋然性が高く,また,将来,それらの番組が制作された場合に,いずれも著作物性を有するものと推認される。そして,それらの番組が制作,放送された後に差止請求をするのでは,違法状態を排除することができないというべきである。したがって,同目録記載の各番組以外の番組については,将来,制作,放送されるものについても,具体的に著作権侵害のおそれがあると認められる。
平成24年01月31日知的財産高等裁判所[平成23(ネ)10009]

【差止請求権の代位行使の可否】

上記の契約書の条項によれば,原告との間の契約については,①「著作権管理契約書」と題されたものであり,②Aが原告に対してオリジナル人形の著作権の利用許諾をライセンシーに与える権限を授与する旨の条項(1条,3条)のほか,ライセンシーへの許諾についての細目を定める条項が置かれているが,原告自身がオリジナル人形の複製物を製造又は販売することを前提とした条項は全く置かれておらず,③原告は,ライセンシーから受領した使用料の中から,一定割合の金銭を自己の報酬として控除した残額をAに送金することとされており(9条,10条),日本におけるオリジナル人形の著作権の利用による売上げの多寡について,原告自身は全く危険を負わないこととなっている。
これらの点に照らせば,オリジナル人形の著作権につき,原告が上記契約によりAから授与された権限は,日本におけるライセンシーを開拓し,ライセンシーに対してAに代わって著作権の利用を許諾し,ライセンシーからロイヤリティを受領してAに送金するということに尽きるものであって,原告自身がオリジナル人形の複製物の製造ないし販売をすることにつき許諾を受けることは全く内容とされていない。
(3) 著作権に基づく侵害差止請求権の代位行使の可否
ところで,著作権者から著作物の独占的使用許諾を得ている使用権者については,著作権者に代位して当該著作物の著作権に基づく侵害差止請求権を行使することができるという見解が存在する。これは,特許権における独占的通常実施権者が特許権者に代位して特許権に基づく侵害差止請求権を行使することができるとの見解にならって提唱されているものと解されるが,著作物の独占的使用許諾を得ている使用権者であれば,特許権における独占的通常実施権者と同様に,当該著作物の模倣品の販売等の侵害行為により直接自己の営業上の利益を害されることから,独占的使用権に基づく自らの利益を守るために,著作権者に代位して侵害者に対して著作権に基づく差止請求権を行使することを認める余地がないとはいえない。
しかしながら,本件においては,原告は,上記認定のとおり,オリジナル人形につき,著作権者から著作権の独占的な利用許諾を得ている者ではなく,単にライセンシーに対する許諾付与業務及びライセンシーからのロイヤリティの徴収業務を委任されているというだけであり,オリジナル人形の著作権を侵害する模倣品等が販売されたとしても,それにより直接自己の営業上の利益を害される関係にあるものではない。したがって,原告が,Aに代位してオリジナル人形の著作権に基づく差止請求権を行使することは,認められないというべきである。
(4) なお,仮に,原告とAの間の上記契約
12条【注:「(原告)はAの著作権を侵害する可能性のある者には,利用許諾を与えてはならない。(原告)が日本においてAの著作権の侵害又は侵害のおそれを発見した場合には,(原告)はAに通知し,当該侵害から著作権を防御するようすべての可能な手続を進めるものとする。侵害の場合には,本契約の当事者は,著作権を防御するために合理的な手段を講じるよう協力しなければならない。」と規定されている】を,Aの著作権に基づく侵害差止請求権を原告が行使することを認めた条項と解することができるとしても,そのように著作権に基づく差止請求権について著作権者が契約により他者に行使させることを認めることは,弁護士法72条において弁護士以外の者の法律事務の取扱いが禁じられ,信託法においても訴訟信託が禁止されていること(信託法11条),及び,著作権等管理事業法上,著作権等の管理事業を営もうとする団体が登録制とされて種々の義務を負うなど事業上一定の制約を受けるものとされていること等の法制度の趣旨に反するものといわざるを得ない。したがって,上記契約の条項を根拠に,Aから契約上その権限が付与されているとして,原告がAの著作権に基づく差止請求権を行使することも,認められない。
したがって,いずれにしても,原告がAの著作権に基づく差止請求権を行使することは認められないというべきである。
平成14年01月31日東京地方裁判所[平成13(ワ)12516]

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