[e175]法114条の意義と解釈1項関係

著作権法114条1項は,著作権者等が故意又は過失により自己の著作権等を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において,その者がその侵害行為によって作成された物を譲渡するなどしたときは,その譲渡した物の数量等に,著作権者等がその侵害行為がなければ販売することのできた物の単位数量当たりの利益を乗じた額を,著作権者等の当該物に係る販売その他の行為を行う能力を超えない限度において,著作権者等が受けた損害の額とすることができる旨規定している。
しかしながら,上記規定は,侵害者と同様に当該物に係る販売その他の行為を行う能力を有する限度において,侵害者の譲渡数量を著作権者等の販売することができた数量と同視することができるとしたものであるところ,前記で説示したとおり,一審原告らは,本件国語テストと同種の商品を自ら制作販売することのできる能力を有するものとは認められない。
のみならず,同項にいう「侵害の行為がなければ販売することができた物」とは,侵害者の制作した物と代替性のある物でなければならないところ,弁論の全趣旨によれば,一審原告ら主張に係る単行本は本件各著作物が省略を伴うことなく全部登載され,一般の書店等で販売されるものであると認められるのに対し,前記引用に係る原判決に認定したとおり,本件国語テストは,本件各著作物の一部と設問で構成されるものであり,一審被告らは一般の書店を介さず直接又は販売代理店を通じて各小学校に直接納入しているものであって,上記単行本と本件国語テストは本件各著作物の利用の目的,態様を異にし,販売のルートにも大きな違いがあり,上記単行本は本件各著作物の掲載された本件国語テストに代替し得るものではあり得ないから,一審原告ら主張に係る単行本が同項にいう「侵害の行為がなければ販売することができた物」に該当するとはいえない。
したがって,本件においては,著作権法
114条1項を適用することはできないというべきである。
平成16年06月29日東京高等裁判所[平成15(ネ)2467等]

著作権法114条1項は、侵害品の譲渡等数量に、著作権者等が「その侵害の行為がなければ販売することができた物」の単位数量当たりの利益額を乗じて得た額を、著作権者等の当該物にかかる販売等を行う能力に応じた額を超えない限度において、損害額とすることができる旨規定する。
したがって、同項を適用する前提としては、著作権者等において、「その侵害の行為がなければ販売することができた物」を販売する能力を有していることが必要である。
ここで、「その侵害の行為がなければ販売することができた物」とは、少なくとも、侵害品と代替性のある、すなわち侵害品と競合する、権利者の製品であることを要する。なぜならば、同項は、侵害行為によって権利者が市場における販売の機会を喪失することにより生じる損害を、(侵害者が特定の事情を立証しない限り)侵害者の譲渡数量と同数を権利者が販売できたと考えて把握しようとするものと解されるところ、そこでは市場における侵害品と権利者製品の競合の実態が前提となるからである。
また、権利者において、「その侵害の行為がなければ販売することができた」というためには、その侵害行為が行われた時点において、権利者がその製品を市場に供給する能力を有していることが必要であり、供給する能力を獲得する予定を有していたというだけでは足りないと解すべきである。この点につき、原告は、同項は、権利者の損害を「市場機会の喪失」と捉えるものであるから、代替製品の需要が継続してあり、いったん、侵害品に需要が食われてしまうと、その後、権利者が著作物の使用品を販売できなくなる関係にあるような市場では、侵害当時に権利者が著作物の使用品を販売可能な状態に置いている必要はなく、権利者の潜在的能力を含めて柔軟にその能力を認めるべきであるとか、パチスロ機業界においては、企画し開発を終えたパチスロ機の販売開始時期が、企画・開発から、1年ないし2年後となることは、よくあることであるから、同項の権利者の実施能力には、潜在的実施能力も含めて考えるべきであるなどと主張する。しかしながら、上記のとおり、同項が、侵害行為によって権利者が市場における販売の機会を喪失することにより生じる損害を、侵害者の譲渡数量と同数を権利者が販売できたと考えて把握しようとするものと解される以上、現に市場において侵害品と権利者製品が競合して存在するか、少なくとも権利者が市場にその製品を提供する準備ができていなければ、侵害者の譲渡数量と同数を権利者が販売できたと考えることは不可能である。すなわち、商品には需要者にとって購入が必要な時期があり、また、著作物には流行があるのであって、例えば、何らかの著作物を使用した物品(キャラクターを付したランドセルや耐久消費財、その時点の流行テレビドラマ中の著作物を使用したアクセサリーなど)について、侵害品を購入した需要者を想定してみると、仮に購入時点で侵害品も権利者製品も存在しなかった場合には、その時点で市場に供給されている侵害品と代替性のある製品を購入するということが考えられるのであって、この購入をせずに将来供給される計画のある権利者製品の発売を待ち、既に購入が必要な時期を徒過したランドセルや耐久消費財や、流行遅れとなったアクセサリーなどを購入するとは考え難いところである。したがって、権利者において、「その侵害の行為がなければ販売することができた」というためには、その侵害行為の時点において、侵害品と代替性のある製品を販売しているか、少なくともその準備ができていることを必要とすると解すべきであり、原告の上記主張は採用することができない。
平成16年12月27日大阪地方裁判所[平成14(ワ)1919等]

(著作権法)114条1項による損害額の推定は,権利者自らその著作物を販売することができたであろうということが前提となっていると解され,そして,本件著作物は,いずれも週刊誌に掲載された記事であり,原告はこれを自ら販売していないのであるから,同項の適用はないというべきである。
平成20年02月26日東京地方裁判所[平成19(ワ)15231]

(1) 原告は,①ストリーミングの再生回数が受信複製物の数量に当たること,②本件動画サイトにおけるストリーミングの再生回数はダウンロードの回数と同視できることなどからすれば,本件著作物1及び2の本件動画サイトにおけるストリーミングの再生回数が著作権法114条1項にいう受信複製物の数量となる旨主張する。
(2) そこで判断するに,受信複製物とは著作権等の侵害行為を組成する公衆送信が公衆によって受信されることにより作成された著作物又は実演等の複製物をいうところ(同項),本件においてはダウンロードを伴わないストリーミング配信が行われたにとどまり,本件著作物1又は2のデータを受信した者が当該映像を視聴した後はそのパソコン等に上記データは残らないというのであるから,受信複製物が作成されたとは認められないと解するのが相当である。
また,前記前提事実(2)のとおり,本件動画サイトは動画をストリーミング配信するウェブサイトであるところ,(証拠等)によれば,本件動画サイトにアップロードされた動画をダウンロードすることは不可能ではないが,そのためには特殊なソフトウェアを利用するなどの特別の手段を用いる必要があることが認められる。
以上によれば,本件著作物1及び2の本件動画サイトにおけるストリーミングによる動画の再生回数が受信複製物の数量に当たるということはできないし,これをダウンロードの回数と同視することもできない。したがって,著作権法114条1項に関する原告の上記主張は失当である。
平成28年4月21日東京地方裁判所[平成27(ワ)13760]

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